国立病院・療養所「再編」での雇用不安は許さない(声明)

--厚生省・大田市は32名の不採用者に雇用継続責任を果たせ--


 1 医療・社会保障制度の改悪と一体で進められる国立病院・療養所の「再編計画」は、行政サービスの切り捨てを最優先課題に具体化の検討が進められる「行政改革」のもとで、リストラ「合理化」の色彩を一層あからさまにしています。99年2月1日を目途に、島根県大田市への全面移譲が強行されようとしている国立大田病院では、働く者の権利を蹂躙し、断じて許すこと出来ない「職員32名の不採用」問題が発生しています。国公労連は、このような問題を引き起こしている厚生省と大田市の不当な行為に断固抗議して、一人の雇用不安も許さないため、当該の仲間・全医労と連帯してたたかい抜く決意です。

 2 国立病院の統廃合は、臨調「行革」路線による地域医療からの国の撤退であり、国民の権利を損なう不当な計画です。そのような不当な計画に対して、国の果たすべき責任を問い、寄せられる患者・住民の要望に添う医療体制の充実をもとめてたたかうことは、働く労働者として当然の役割です。しかし、厚生省は、そのような立場で運動をすすめる全医労にたいし、これまでも交渉拒否をはじめ数々の不当労働行為を繰り返してきました。今回の移譲にあたっても、職員のプライバシーをも記載している人事記録の写しを採用以前に大田市に手交するという人権侵害をおこなっています。そればかりか、10月3日、4日に実施された大田市民病院(仮称)への採用選考に、当該の病院の管理者が大田市幹部と協議をおこないうなど、採用差別に積極的に加担しています。
 その結果、大田市民病院(仮称)への勤務を希望する職員182名の内、採用予定数を下回っていた看護婦13名を含む32名(18%)もが不採用決定されるという言語同断の事態を生じさせています。厚生省の責任は極めて重大です。

 3 このような事態を生じさせたもう一方の当事者である大田市も極めて不当な対応を行っています。採用選考にあたっての基準を設けることもせず、面接官の恣意的判断に採否を委ねたことや、採用面接において人権侵害やセクハラまがいの質問が乱発されたことが明らかになっています。また、不採用となった職員は、比較的高齢の者が多いと同時に、労働組合活動で指導的な役割を発揮していた者が多く含まれています。副支部長をはじめ、役付の執行委員での希望者6名の内4名(7割)が不採用通知を受けています。厚生省が、事前に労働組合活動歴などを通報し、その情報をもとに大田市が選考をおこなうという採用差別がおこなわれた疑いのある事実です。
 このような事実が明らかになり、大田市長が「責任を感じている。職を失わせないようにしたい」と発言しているにもかかわらず、不採用決定を未だに撤回せず、当該職員を精神的にも追いつめていることは二重の問題です。

 4 今、全医労大田支部を先頭に、不当な不採用決定の撤回を求めるたたかいが積極的に展開されています。繰り返しの宣伝行動や現地及び中央での抗議行動が展開される中で、徐々に厚生省、大田市を追いつめています。政府による人権侵害は、あってはならないことであり、「国は不善をなさず」として国家公務員法でも不当労働行為の規定すら整備されていないことを逆手にとった厚生省・大田市の行為を放置すれば、急ピッチですすむ「行政改革」の動きの中で、公務員労働者の生活・労働条件に計り知れない悪影響を及ぼす危険性を見過ごすことになりかねません。そのことからも国公労連は、国公労働者すべてにかけられた許し難い権利侵害として、32名の仲間の不採用撤回をはじめとする雇用保障実現のために全力でたたかう決意を表明します。

1998年11月19日
日本国家公務員労働組合連合会中央執行委員会


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