中央省庁等改革推進本部へ「独立行政法人制度および民営化にかかわる質問書」を提出


1998年11月6日

中央省庁等改革推進本部 御中   

日本国家公務員労働組合連合会

独立行政法人制度および民営化にかかわる質問

 中央省庁等改革推進本部は、9月29日に「中央省庁改革にかかわる立案方針」を明らかにしました。その「立案方針」についての国公労連の「見解」は、9月25日に貴本部に申し入れたところですが、今次の「行政改革」で一つの目玉とされている独立行政法人制度にかかわって、あらためて回答いただきたく、質問事項を下記のとおり提出します。
 中央省庁等改革基本法第41条では、独立行政法人にかかわって「労働関係への配慮」がうたわれていますが、それを実効あるものにするためには最低でも制度内容等について十分な説明がおこなわれる必要があります。独立行政法人制度の検討対象として各省に提示されている機関・業務に働く国家公務員は、全体の3割程度と推察します。その大部分は、私どもの傘下に組織する非現業国家公務員です。そのことから、独立行政法人制度について、私どもは重大な関心を寄せています。
 また、行政機関の民営化は、公益事業における公共性確保や公務員労働者の雇用との関係など、極めて重大な問題を含んでいます。私たちは、現在国が直接実施している事務・事業で民営化すべき対象はないと考えています。
 以上の点にも留意され、下記の内容について誠意ある回答をいただきますよう重ねて要請します。

   【1】独立行政法人にかかわって

 1 なぜ独立行政法人制度の創設が必要なのか、改めて回答いただきたい

 (1)行政改革会議最終報告や、それにもとづく中央省庁等改革基本法では、行政執行部門の減量化・効率化の観点から、独立行政法人制度の創設が検討されていると考えるが、貴本部の認識もを明らかにされたい。
 (2)独立行政法人制度の具体的内容についても、行政執行部門の減量化・効率化の観点から、検討されていると理解してよいか。
 (3)事務執行の公正さを担保する観点での制度内容は、どのような検討点があるのか明らかにされたい。
 (4)特殊法人など現にある行政法人については、「天下り」による弊害や業務執行の不透明性、当該法人の独立性・自主性の希薄さなどの問題点が指摘されているが、貴本部では、特殊法人の問題点をどのように捉えているのか。
 また、そのこととの対比で、独立行政法人制度での改善措置はどのように検討しているのか。
 なお、その点を明らかにしないままに、実施部門の減量化方策としてのみ独立行政法人制度を検討することは問題ではないか。
 (5)独立行政法人制度によって、現在の行政執行のどのような問題点が改善されることになるのか明らかにされたい。

 2 対象機関の検討は、どのような基準のもとにおこなっているのか回答いただきたい

 (1)「立案方針」などで独立行政法人制度の検討対象とされている機関・事務は、1)施設等機関(研究機関、国立病院・療養所、検査・検定業務、国立学校)、2)現業的業務(気象観測、航空管制、海上保安水路部、国土地理院、造幣・印刷)、3)行政執行部門(登記・供託、職業紹介)に大別されると考える。
 それぞれはさらに、個別の機関・業務での特殊性があると考える。中央省庁等改革基本法第36条の規定(公共上の見地から確実に実施されることが必要で、国が自ら直接実施する必要がなく、民間の主体にゆだねるた場合には必ずしも実施されない恐れがあるか、一つの主体に独占しておこなわせる必要がある)だけでは、個別の機関・業務がなぜ独立行政法人制度の検討対象とされるのか、到底理解できない。より具体的な基準を明らかにされたい。
 (2)独立行政法人は、「一定の業務の固まり」が必要として、行政改革会議では検討された経緯があるのではないか。例えば、国立国際美術館(16名)、計量教習所(5名)などが検討対象とされていると推察するが、その理由はなぜか明らかにされたい。
 (3)気象の観測業務だけを区分することや、自動車登録と検査を区分すること、職業紹介と雇用保険を区分すること、法務局の業務の内、登記・供託のみを区分することなどは、現在の組織や業務執行の実態からして非現実的ではないかと考える。この点での、貴本部の考え方を明らかにされたい。
 (4)対象業務の選定の手続きはどのようなプロセスを想定しているか明らかにされたい。とりわけ、労働条件の重大な変更を迫られる職員の「同意」はどのように担保することになるのか明らかにされたい。 

 3 制度内容について、少なくとも以下の点について回答いただきたい。

 (1)職員の身分等にかかわって
 1) 職員について、公務員型と非公務員型とが想定されているが、その区分の基準が中央省庁等改革基本法第40条の規定では極めて曖昧ではないかと考える。貴本部における検討状況を具体的な例示をもって明らかにされたい。
 2) 対象とされる業務の大部分は、現に一般職国家公務員がおこなっているものである。また、独立行政法人の事務・事業は「国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要」とされているが、このように規定される以上、安定的な執行が求められる業務であると考える。それらのことからして、独立行政法人の職員は公務員型とすることで検討されていると考えるが、見解を明らかにされたい。
 3) 独立行政法人化にともなう職員の雇用関係の継続性について、法的な担保はどのように検討されているのか、明らかにされたい。
 4) 労働協約の対象となる給与等の労働条件について、所管大臣の予算認可等との調整はどのようになるのか明らかにされたい。
 5) 法人の長、監事の任免について所管大臣の関与が検討されているが、その際の民主的手続きはどのように検討されるのか、例えば、国会による承認あるいは公募等が検討されるのか明らかにされたい。

 (2)財務、会計等にかかわって
 1) 予・決算について、国会の関与はどのように検討されることになるのか明らかにされたい。
 2) 国の予算上の措置にかかわっって、必要な運営費等の確保はどのように担保されるのか。また、手数料収入など現在の特別会計制度との関係はどのようになるのか、あるいは運営費等について全額国庫負担も検討となりうるのか、明らかにされたい。
 3) 資本について、民間出資を検討するのはなぜか。いわゆる第3セクターの失敗の状況もふまえれば、そのような出資形態は公共性の高い分野にはなじまないのではないかと考えるが、見解を明らかにされたい。
 4) 剰余金の分配も検討されているが、事務・事業の公共性からして利潤追求につながりかねないこのような規定は盛り込むべきではないと考える。仮に剰余金が生ずれば、それは積み立てと国庫への繰り入れのみを規定しないのはなぜか、明らかにされたい。
 5) 前記とも関連して、独立行政法人について課税対象とする必要があるのはなぜか、明らかにされたい。
 6) 会計基準について、企業会計原則とするのはなぜか。そのような原則を導入することで、独立行政法人には経済的効率性のみをもとめることになるのではないかと考えるが、見解を明らかにされたい。
 7) 独立行政法人について、国からの土地、建物の現物出資も検討されているが、仮に独立行政法人が民営化されるとした場合、これらの資産の処理はどのように検討されているのか明らかにされたい。
 8) また、国有財産の無償使用も検討されているが、その場合の使用制限などはどのように検討されているのか明らかにされたい。

 (3)独立行政法人の運営等にかかわって
 1) 「法人の業務及び組織運営の基本的な枠組みについて法令に基づき長がさだめ大臣が認可」することが検討されているが、国会の統制との関係はどのようになるのか、業務運営についての「説明責任」はだれが負うことになるのか、見解を明らかにされたい。
 2) 「中期目標」、「中期計画」を所要の手続きを経て大臣が定め、認可することが検討されているが、それぞれの性格はどのようなものと考えればよいのか、大臣による一方的な提示や、規制を伴うことになるのか、あるいは独立行政法人の長が中期目標の定めや中期計画の認可内容について不服、異議の申し立てをおこなうことが検討されているのか、見解を明らかにされたい。
 なお、この点ともかかわって、これらの認可等について、行政訴訟の対象となりうるのか、あるいは、中期計画の内容について、当該事務事業の利益を受ける国民が、異議を申し立てることが保障されるのか、見解を明らかにされたい。
 3) 緊急時の所管大臣の指揮権等が検討課題となっているが、どのような場合が想定され、いわゆる代執行等も検討課題となるのか、見解を明らかにされたい。
 4) 中期目標にかかわって、効率化、財務内容の改善とサービスの質の向上という一面で相反する内容が掲げられているが、それらの調整はどのようにおこなわれるのか、個別業務毎に異なるとすれば、どのような基準が考えられているのか、いづれを基本のものと考えているのか、見解を明らかにされたい。
 5) 独立行政法人の組織についての改廃・変更を長が決定し、所管大臣への報告で足りるとする検討になっているが、国民の意見を反映する手だてを検討すべきではないのか、見解を明らかにされたい。
 6) 評価委員会の評価結果について、独立行政法人の抗弁権などは検討されているのか、明らかにされたい。

 (4)その他、以下の点について回答いただきたい。
 1) 法人登記を成立要件とするのはなぜか。個別法のみでの対処ではなぜ不十分なのか、明らかにされたい。
 2) 中央省庁等改革基本法第39条ナは、総務省におかれる「評価委員会」が、「事務・事業の改廃の勧告」をおこなうことが規定されているが、廃止勧告はどのような場合に想定されるのか、仮に国民生活に不可欠な事務・事業が多額の累積損失を抱えた場合にも廃止勧告の対象となるのか、明らかにされたい。
 3) 独立行政法人は、広義の行政機関であると考える。行政組織法に根拠規定をおく考えはないのか、見解を明らかにされたい。
 4) 「独立行政法人通則法」にはどのような事項を規定し、「令」にはどのような事項を規定する検討をおこなっているのか、また、「通則法令」と独立行政法人にかかわる「個別の法令」との棲み分けはどのような基準でおこなうことを検討しているのか、明らかにされたい。

 【2】民営化にかかわって

 (1)海技大学校や航海訓練所、航空大学校などをはじめとして、多数のが民営化の対象として検討されているが、なぜこのような機関の民営化が可能なのか全く明らかにされていない。民営化対象とする理由を個別に明示されたい。
 (2)民営化では、業務の継続性、安定性に弊害が生じかねない。対象となっている機関の業務は、国民生活とのかかわりで、縮小・廃止もやむ得ないこととして検討されているのか、見解を明らかにされたい。また、国が執行に何らの責任を負う必要のない事務でかつ営利目的で運営することがだとうなものとして検討されているのか、見解を明らかにされたい。
 (3)民営化に伴う職員の雇用関係については、どのように検討しているのか明らかにされたい。

 以上


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