国立試験研究機関関係の中央省庁等改革推進本部申し入れ【国公労連「行革闘争ニュース」98年9月28日付】

○9月28日午前10時50分から11時10分まで申し入れ

○出席
 組合側
:国立試験研究機関全国交流集会実行委員会(国公労連、学研労協、全厚生、全建労、総理府労連航技研、全気象、全通産、全運輸)
 推進本部:青柳参事官(農水省・国土交通省担当)、大森参事官(財務省・経済産業省担当)、伊東参事官(労働福祉省・教育科学技術省担当)、前川参事官(法務省・外務省・環境省担当)、佐藤参事官(総務省担当)、大槻参事官(内閣府・警察庁・防衛庁担当)他

(申入書を手交)
 学研労協:研究者の声が届いていないまま、具体化が進められており、危惧している。国研協の要望も独立行政法人化にあたって解決しなければならない問題をあげている。そうしたことが省みられないまま、減量化の目玉として、21世紀の科学技術創造立国を作る立場での検討なしに、独立行政法人化の検討が進められている。独立行政法人化は、研究の論理を無視しており、反対だ。仮にいまの行革の流れで、検討しなければならないと言うなら、我々が議論しうるものを出してもらいたい。
 国公労連:国立試験研究機関の独立行政法人化については、次の4つの問題点がある。第1に、経常研究費が保障されない、第2に、主務省庁・総務省の厳しいコントロールがされる、第3に、減量化の目玉にされている、第4に、非公務員型では、身分保障がはずされることで、研究者が良心に従って行動する妨げになる、というものであり、反対である。国会審議を通じても、納得いく答弁がされなかった。
 しかも、科学技術研究政策の調整を担当する科学技術庁などは、独立行政法人化がさけられないなら自主性・自律性の拡大、試験研究機関の充実を図り、経常研究費の確保を図るため努力すると回答し、職員の「理解」を求めようとしてきた。しかし、具体的制度設計を見ると、研究機関関係についてゼロ回答だ。橋本前首相を始め、当時の閣僚はそろって、基礎研究の発展など、科学技術研究発展を損なうものではない、と答弁しているが、その約束とは全く逆の事態だ。
 こうしたあまりに問題の多い制度の導入が、当該の職員の意見も聞くことなしに行われていることは問題だ。国立試験研究機関の独立行政法人化は、国家百年の計を誤るものであり、撤回を要求する。

 学研労協:各所の意見が聞かれていないのが最大の問題だ。各省庁当局が代表して意見を言っているが、研究所のことは分かっていない。なぜ研究機関が独立行政法人化されるのか、議論されてこなかった。国立研の問題を包括的に扱う場を設けるべきだ。我々は、独立行政法人化で、、国の責任が曖昧で、情報も隠されるような動燃のようになりはしないかと危惧している。身分の継続がきちんとされるか、法律には書いていないがどうなるのか?
 企画官(独立行政法人担当):独立行政法人の問題は、参事官が出られなくなったので、改めて回答するようにしたい。申し入れは窓口で協議して欲しい。
 企画官(労働福祉省担当):皆さんと大半は同じ気持ちだ。ただ結論が違うが。科学技術創造立国を作る上で、国立研の役割は大きく、それにふさわしく、人員予算の制約をはずし、柔軟な組織にすることが必要だ。制度設計で誤解があるようだが、気持ちに違いはない。今後各省庁の理解を得ていきたい。
 学研労協:制度設計をするというなら、研究現場を分かっていない霞が関の意見でなく、研究現場サイドの意見を聞いてもらいたい。
 参事官(財務省・経済産業省担当):各省庁では現場と話をしていると思う。独立行政法人担当は各省庁と話をしている。
 学研労協:ぜひ現場を見て欲しい。経団連も提言を出した後、筑波を訪問して認識を新ににしている。
 学研労協:ぜひ現場の意見が反映するように、議論ができる形にして欲しい。

 以上

   ●別紙

1998年9月28日
中央省庁等改革推進本部
   本部長 小渕 恵三 殿

日本国家公務員労働組合連合会 
     中央執行委員長 藤田 忠弘

筑波研究学園都市研究機関労働組合協議会
議長 上杉三郎

 「国立試験研究機関の独立行政法人化」の具体化に対する申し入れ書

 広範な国民はいま、ゼネコン奉仕行政の無駄遣い、贈収賄、天下りなどをなくし、教育、福祉、文化等の充実を求めて真の行政改革を要求している。ところが、それが、いつの間にか首相権限の強化や省庁再編、「行政スリム化」のためとする独立行政法人化にすり替えられてきた。
 先に成立した「中央省庁等改革基本法」では第43条4項で国立試験研究機関(国研)の見直しを行うとし、「原則として独立行政法人化に移行すべく具体的な検討」をするとしている。この国研の独立行政法人化に関しては、「行革会議最終報告」に書かれたものであるが、そもそも試験研究機関の現場の意見を聞かずに決められたものであり、多くの場所長が反対あるいは懸念を表明している。
 国立試験研究機関は、環境、安全、農業、標準など公的機関でなければ実施できない行政課題に密着した研究を進めるという任務を持つのは当然であるが、研究機関の存立基盤である科学技術研究における自由な発想、創造性が一層発揮できる環境を充実、整備することこそが最も重要である。国は、国立試験研究機関に対し、日本の弱点である基礎的基盤的研究の奨励を図り、公的機関として責任を持つべきすべての研究分野を拡充強化するための研究費、研究環境を国が保障することが必要である。また、そのためには、研究方針の策定、所の運営、研究評価などに研究者、職員の意思を充分に反映させることによって、試験研究機関の自律的、自主的運営を保障すべきである。同時に、科学技術研究のプロセス、成果が国民に公開されることが大切である。短期的成果を追求するための研究評価や目先の成果追求を強いる任期付き研究員の任用をやめるべきであり、研究者、支援職員の定員を減らさず、国家公務員としての身分と雇用を保障し、安んじて腰を据えた研究ができるようにすべきである。さらに国立試験研究機関が長年にわたって蓄積してきた研究支援部門の技術、業務のノウハウを活用し、一層の充実をはかるべきである。
 しかるに、国立試験研究機関の独立行政法人化は、
 1.腰を据えた研究の最大の要素である経常研究費が保障されない。
 2.自律的・自主的運営を保障するという美名とは裏腹に、主務省庁による運営費の支出を通じてのコントロールや主務省庁・総務省の評価委員会による業務改廃を含む一方的評価により、厳しいコントロールがされる。
 3.「国が直接行う必要がない業務」と位置づけられ、減量化の目玉にされている。
 4.非公務員型独立行政法人とされ、身分保障がはずされることで、研究者が良心に従って行動する妨げになる。
 という問題点があるので、反対である。中央省庁等改革基本法案の国会審議を通じても、我々の指摘した上記の問題点について納得いく答弁がされなかった。しかるに、政府・中央省庁等改革推進本部は、基本法に書かれた方向で具体化を図るとしている。科学技術研究政策の調整を担当する科学技術庁など、試験研究機関を傘下に持ついくつかの省庁は、独立行政法人化がさけられないなら自主性・自律性の拡大、試験研究機関の充実を図り、経常研究費の確保を図るため努力すると回答し、職員の「理解」を求めてきた。しかるに、先に示された具体的制度設計を見ると、これらの官庁の甘言とは裏腹に、試験研究機関については「ゼロ回答」と言うべきものになっており、とうてい私たちが容認できないものである。私たちは、何よりもこの問題が「科学の論理」でなく、単なる数合わせで決められようとしていることに、国家百年の計を誤るものとして憂慮の念を深くするものである。私たちは、国立試験研究機関に働くものを代表して、かかる不当な「行政改革」に反対し、国立試験研究機関のさらなる充実をめざして、下記事項を強く要求するものである。

 1.国立試験研究機関の独立行政法人化は行わないこと。
 2.組織の再編等は、組合など現場職員の意見を踏まえて行うこと。
 3.国立試験研究機関の充実を図ること。

以上


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