防衛庁の背任疑惑と不正隠しを断固糾弾する!
 政府は事件の再発防止措置を講じよ

 防衛庁調達実施本部の背任疑惑は行き着くところをしらない様相を呈している。9月3日、東京地検特捜部は、元調達実施本部副本部長と製造業者ら4名を背任容疑で逮捕、防衛庁などの捜索を行った。この事件はその後、調達本部の元本部長の逮捕に発展し、さらに組織ぐるみの証拠隠滅が行われたことが明らかになり、問題の背景の底深さを示している。これほど問題を大きくした原因はいくつか考えられる。

 第一に、日米安保体制維持を至上のものとして、十分な議論もせずに予算が決定され、防衛装備品の調達が行われる傾向にあり、さらに、防衛機密を口実にした情報隠しが日常化しており、国会や国民のチェックが十分に及ばないこと。
 さらに、防衛装備品は巨額なうえ、特注品がほとんどであり、独占的な価格形成と企業との癒着が生じやすい構造が従来から指摘され、水増し請求などの不正を生む要因があること。

 第二に、労働組合など、内部からのチェック機能を発揮する条件が存在しないこと。この間の経過からしても、少なくない調達実施本部職員が、水増し請求分の過小査定や組織を挙げての証拠隠滅作業に、疑問を感じながらも異論の声さえ上げられない実態が明らかになっている。
 加えて、国民の税金である防衛予算を防衛庁の官僚組織が私物化し、それを背景にした過剰な「天下り」が恒常化する温床が存在すること。一般職国家公務員は、営利企業への再就職に当たり、一定の制約を課し、第三者機関である人事院の承認を得る必要があることとしており、その内容は国会への報告が義務づけられている。しかし、特別職である防衛庁職員の場合は、自衛隊法の規定により、防衛庁長官の承認事項とされ、国会への報告義務も課されていない。そのこともあり、防衛産業への「天下り」の実態は問題が多い。
 朝日新聞によれば、1994年に作成されたOB名簿には、防衛産業の主要135社、1420名の防衛庁OBが天下っている事実があると伝えている。これらの背景として、退職する職員の再就職先を確保するために、過剰請求分の払い戻し要求に手心を加えたり、主要な受注企業にOB職員の受け入れを要求することが行われていたとも報じられている。

 我々は、今回の防衛庁調達実施本部における腐敗問題を断固糾弾するとともに、政府及び防衛庁当局に対し、事件の徹底糾明と、再びこのような事件を起こさないための抜本策を求めるものである。そのために当面以下の措置を要求する。

 1 情報公開法を早期に制定すること。法律の制定前にも、可能な情報の公開に努めること。
 2 行政事務の執行に当たる職員が、疑問、意見がある場合には、それを表明するための手段を保障すること。(いわゆる内部告発権の制度化)
 3 防衛庁職員の再就職についても、第三者機関によるチェックを行うよう、自衛隊法を改正し、国会への報告を義務づけること。
 4 日米安保条約を聖域化することなく事件の全容を明らかにし、徹底した解明を国会の場で行うこと。

 なお、今回防衛庁が際だって問題となっているが、防衛庁特有の部分を除けば各省庁にとって他山の石とすべき問題が多い。とくに、「天下り」や官僚組織の秘密主義、閉鎖性、非民主性などの問題については、我々も従前から問題・改善点を指摘しているところであり、今後とも行財政・司法の民主化のために奮闘する決意である。

1998年9月22日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 福田昭生


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