国公労連第43回定期大会での藤田中央執行委員長あいさつ

 大会ご参加の皆さん、大変ご苦労様です。この機会に、日頃のご奮闘に心からの敬意を表します。また、大変ご多忙の中をおいで下さったご来賓の皆様方に、日頃のご指導・ご協力に対する感謝とあわせ、心からお礼申し上げます。

 さて皆さん、本大会は、文字どおり激動する政治情勢のもとで開かれています。そして、その激動の内容をもっともわかりやすいかたちで示しているのが、先般の参議院選挙の結果だと思います。
 参議院選挙の結果の特徴は、ひとことで言えば、自民党の惨敗、共産党および民主党の躍進という点にありました。この点で、私は、国公労連とは協力・共同の関係でご尽力いただいている日本共産党の躍進に、あらためてお祝い申し上げる次第です。
 ところで、今回の参議院選挙にかかわって、私は、その結果の持つ意味をどう認識するかが大変重要であると考えます。私どもは、端的にいって、自民党政治そのものが国民によって拒否されたのだと認識いたします。
 自民党政治の拒否という場合、戦後最悪の不況をもたらした経済政策に対する批判がその中心にあることはいうまでもありません。しかし、今回の場合は、決してそれにとどまらず、自民党政治の根本が問われたのだと思います。
 つまり、銀行支援のためには30兆円の税金を投入するけれども、一般庶民に対しては、消費税・社会保障などの負担増を強要するという政治のあり方、言いかえれば、財界・大企業の利益確保のためには国民生活などは顧みることさえしないという政治の基本姿勢が拒否されたのだと思います。
 もしも、このような国民の意思に誠実に応えようとするならば、それは、国会解散・総選挙以外にはないはずです。しかし、自民党・小渕内閣は、選挙結果に対するまじめな総括・反省もないままに、引き続き、国民によって拒否されたはずの、橋本内閣以来の悪政推進の立場に立っています。
 私どもは、小渕内閣が総選挙によって国民の信を問うべきであることを重ねて強調するものです。同時に、自民党・小渕内閣が強行しつつある数々の悪政を阻止するために、すべての民主勢力と共同して、全力をあげて奮闘する決意を新たにしたいと思います。

 つぎに、「行政改革」に関して述べたいと思います。
 いまも、参議院選挙の結果は、自民党政治の根本に対する国民の拒否を意味していると申し上げました。だとすれば、「行政改革」をはじめとする「六つの改革」こそは、まさに自民党政治の根本に座るものです。その意味では、これら「六つの改革」とのたたかいは、国民的基盤を勝ち得たわけであり、いよいよこれからが重要段階といわなければなりません。
 ふりかえってみますと、「橋本行革」が大きく浮上してきたのは、一昨年秋の総選挙を通じてでした。この時以来、私どもは、「六つの改革」全体を総称して「橋本行革」と呼んできました。そのなかでも、「行政改革」は要(かなめ)の位置を占めるものとされ、「財政構造改革」とあわせて、国政上の一大争点にすえられてきたのです。
 当時、世の中はまさに「行政改革」一色で、「行政改革」に異を唱えるものは、あたかも「非国民」であるかのごとき風潮が作られていきました。それは、あの小選挙区制導入の際の、「政治改革」をうたい文句にした世論誘導を彷彿させるものでした。
 しかし、全国の仲間は、それこそ「足もすくむ思い」をのりこえて「国公大運動」に結集され、大量宣伝、署名運動、各界要請行動などに全力をあげました。そうした運動の集積が、先の通常国会で、衆院4会派45名、参院8会派44名にものぼる国会議員各位から紹介議員の応諾をいただく結果につながりましたし、国会審議にも一定の影響を与えることができました。加えて、当初は「行政改革」を一面的に美化してきたマスコミ報道にも、一定の影響を与えることができたのです。
 こうした運動面における貴重な前進はありましたが、いわゆる「行革基本法」は成立を強行されました。21世紀の「この国のかたち」を決めるといわれる法律が、きわめて不十分な議論状況のままに成立させられたことについて、私どもは断じて容認することはできません。
 そこで、今後のたたかいですが、重要なことは、「行政改革」をめぐるたたかいがこれによって終わるのではなく、むしろ、すべては今後の攻防にかかっているという点です。
 たしかに、「行革基本法」が成立し、政府の「推進本部」が発足したということは、政府・財界の側が彼らなりの「橋頭堡」を築いたという意味で、我々のたたかいにとって厳しい条件であることは間違いありません。しかし、もう一方で、政府の予定によっても、来春の通常国会を皮切りに、内閣法、国家行政組織法、各省設置法、各種個別法、独立行政法人法など、実に1,600件にものぼる関係法案が審議されることになります。ということは、その段階こそが、政府・財界の考える「行政改革」の内容について、「行革基本法」の審議段階以上に、より具体的な暴露が可能になる機会だと思います。その意味で、今後のたたかいこそが、「行政改革」の行方を左右するカギを握っていることを重ねて強調したいと思います。
 「行政改革」に対する国公労連の立場は、国民にとって真に必要な行財政改革の実現、という点で一貫しています。したがって、この秋季年末闘争の段階から来春の通常国会の段階を主舞台に、運動の再高揚を図らなければなりません。
 その際重要なことは、三位一体の運動の強化、つまり、国公産別、各単組、各県国公の三者が、それぞれの機能を目一杯発揮することだと思います。このことは、この間の運動からくみとるべき教訓の柱の一つです。
 本年度も臨戦態勢を継続するという提起は、こうした運動にとって不可欠なものです。重ねてご理解を要請する次第です。
 なお、「行政改革」にかかわって、この際あえて強調したいことは、いっさいの不正・腐敗を根絶するうえで、私ども国公労働組合が果たすべき役割がきわめて大きいという問題です。国の機関の第一線で、日常国民の皆さんと接する者の集団である国公労働組合こそが、不正・腐敗根絶の原動力になりうるのです。その意味で、提起している職場規律確立をはじめとする不正・腐敗根絶のとりくみについて、あらためて注意を喚起し、万全の対応を要請する次第です。

 つぎに、人事院勧告をめぐるたたかいについて述べたいと思います。
 一つは、昇給制度改悪反対のたたかいです。
 全国の仲間は、この改悪攻撃が、何よりも公務の職場実態を無視した、公務員労働者の働きがいと誇りに対する理不尽な攻撃であったが故に、怒りをもって反撃したのだと思います。そして各省当局も、こぞって異を唱えました。これには、現行の人事管理システムが破綻するという、彼らなりの事情もあったわけですが、各単組・職場からのたたかいが基本の力であったことを銘記しておかなければならないと思います。
 しかし、人事院は改悪を強行いたしました。最終的には、53歳昇給延伸を断念せしめるなど、貴重なたたかいの反映面はあるものの、彼らの基本意思は貫徹されたと言わざるをえません。私どもは、この結果を断じて容認できないし、これら改悪の実現を許さないためにたたかう決意を表明しておきたいと思います。
 もう一つは、勧告の取り扱いをめぐる問題です。
 率直に申し上げて、今年の勧告の取り扱いをめぐる情勢は、昨年以上に厳しいものがあると私どもは考えています。たしかに、昨年のように、3月段階から官房長官が「凍結・値切り」を口にするなどという露骨な動きにはなっていませんが、昨年指定職層の値切りが行われたことをはじめ、客観状況はむしろ厳しさを増していると見なければなりません。
 したがって、本大会においては、政府が「労働基本権の代償機能」さえ否定する暴挙に出る場合には毅然たる対応を図る、旨の意思固めをいただくよう方針提起をしているところです。
 ところで、いま職場には、勧告の取り扱いをめぐる情勢の見方に差異はないが、「こんな勧告が値切られても凍結されても怒りがわかない」という意見があるといわれています。とするならば、しっかりと議論をつくすことが大切だと思います。
 くりかえしになりますが、私どもは、単に被害の多寡を問題にしているわけではありません。公務員制度の根本にかかわる問題として重視しているわけです。そして、労働組合というものは、怒るべき時に怒らなければその存在価値を失う、と考えるからです。
 いずれにしても、若い仲間の増えているこんにち、こうした問題についても議論をつくすことが、あらためて大切になっています。各級機関の特段のご尽力を心からお願いする次第です。

 最後になりますが、国公労働組合運動は、いま重大な試練に直面しています。そして、「橋本行革」など様々な攻撃のもとで、国公労連と各単組がどのような労働組合として存在するのか、が問われていると思います。その点で、私は、歴史に学ぶことの重要性を、いまあらためて痛感しているところです。
 国公労働組合運動の発祥は、1946年の全官労の結成にさかのぼります。当時、全官労が掲げた綱領には、「生活擁護」「官庁民主化」「戦線統一」「世界平和」などが明記されていました。これが、私どもにとっての「原点」なのです。
 こんにち、国公労連は、この「原点」を、「憲法をくらしと職場、行政の中にいかそう」「二つの責任一つの任務」というスローガンとして継承・定式化しているところです。この間の行革闘争をたたかってきて、私は、この「原点」の立場をつらぬき発展させることがいかに重要であるかを実感いたします。そして、この道にこそ国公労働組合運動の活路があると確信しているところです。
 本大会の議論を通じて、このような認識を共有できれば、このうえない喜びでございます。大会の成功を念願してご挨拶といたします。

(国公労連第43回定期大会 98年8月26日)

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