2001年3月27日
 国務大臣(行革担当)
  橋 本 龍 太 郎  殿

日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長  堀 口 士 郎

「公務員制度改革の大枠」にかかわる申し入れ
 本日、行革推進事務局・公務員制度改革推進室は、標記「大枠」を公表しました。そして、「政策調整システム」にもとづき、引き続き、同推進室において「基本設計」のとりまとめをすすめるとしています。
 私どもは、さる2月23日に、「公務員制度改革にかかわる国公労連の申し入れ」をおこなっているところですが、その後、本日の「大枠」決定まで、私どもとの間で、何らの論議もないままに「大枠」が決定されたことは、極めて不満です。公務員制度の変更は、公務員労働者の労働条件の変更をともなうことは言うまでもありません。それだけに、当該労働者を代表する労働組合との協議は、検討にあたっての必要条件だと考えます。
 明らかにされた「大枠」の内容等にかかわっても、下記に述べるように、私どもとして受けいれがたい点や明らかに検討が不十分と思われる点を含んでいます。全体として、憲法第15条と国家公務員法の目的(公務員の福利及び利益を保護する措置を含む勤務条件を確立することが、公務の民主的、能率的な運営を保障する)をふまえた「改革」であるのかという疑念を抱くものです。
 そのような点から、「大枠」にもとづく基本設計をすすめることは、国公労働者にいたずらな不安と混乱を与えることになりかねず、私たちは反対です。「大枠」を撤回して、民主的公務員制度を確立する立場での検討をすすめられるよう強く求めます。
 以上、私たちの基本の姿勢を表明し、下記の事項について、貴職の誠意ある対応と回答をいただくよう申し入れます。

1 公務員制度の検討にあたっては、行政執行に日夜奮闘している公務員に目をむけてすすめる必要があります。特に、あらたな「給与体系の構築」の内容は、「公正、効率」の行政執行の阻害要因にもなりかねず反対です。

 ○「大枠」は、全体として、政策の企画立案に働くキャリア層を公務員像の中心においたものとして受けとめています。50万国公労連労働者全体を視野にいれた検討をおこなうべきです。
 ○法に基づく行政を、経験を積み重ねることで専門性を高めながら、最善を尽くして執行することが求められる公務員に、どのような意味での「競争原理」が求められるのか、なぜ、職務給原則の給与制度が不適当なのかを明確にすることが求められます。
 ○給与を「能力」、「職責」、「業績」に3分割するとしていますが、いずれも数値化に困難性をともなうと考えます。それぞれについての水準を決定する合理的な基準としてはどのようなものが検討されているのでしょうかなど、詳細は説明が必要です。
 ○業績評価における評価基準について、例えば、手続きの簡素化とか予算の節約があげられています。「より安く、より簡便に」だけの評価基準で、公正、安定的な行政執行は困難になりかねません。
 ○民間企業での賃金制度を参考にしたとされていますが、例えば評価手法が確立し得ないことや、競争を煽るあまりにモラルハザードがおきることなどの弊害もあって、一部では見直しの動きも出ていますが、そのような「失敗」は、どのように検討されたのでしょうか。

2 公務員労働者に労働基本権を回復することは、憲法の理念に照らしても、当然だと考えます。いわんや、人事院による級別定数制度を廃止して各府省の判断と責任で給与決定できる仕組みを基本にし、「責任ある人事管理体制の確立と自由度の拡大」の観点から、大臣を「人事管理権者」とする改革であるとならば、全公務員労働者の労働基本権を全面的に回復すべきです。

 ○代償措置にかかわる判例等からしても、労働基本権回復と各省大臣による人事管理体制確立は裏表の関係です。にもかかわらず、「十分検討」とすることでは検討が不十分であるだけではなく、公務員労働者を無権利状態に押し込むことになりかねません。
 ○また、内閣が国家公務員制度の企画立案機能などの権限を持つのであれば、そのこととかかわる労働基本権問題も検討すべきです。

3 「多様な人材の確保」、「適正な再就職ルールの確立」などにかかわって、「人事院の事前承認、協議制度」を廃止し、各府省(人事管理権者とされる大臣)の判断と責任で運用あるいは承認することとされています。公務員の採用をはじめ、任用全体にかかわって情実人事を排除することは、公務員制度の基本です。例えば、事後の採用取り消しなどが極めて困難であることなどを考えれば、第三者機関による事前チェックは必要です。   

4 T種、U種など、「採用段階の区分にとらわれない適材適所の任用」は、現在の公務員制度の基本原則で、問題とされる実態は運用上の問題です。信賞必罰の人事管理の確立をまつまでもなく、即時具体化すべきです。

5 再就職規制にかかわっては、「関連性の強い営利企業」への再就職は、原則禁止とすべきです。

6 民間企業等との人材交流の促進にかかわって、「民間情報を収集」を円滑におこなうためとして公務員倫理法の形骸化を検討し、民間企業からの採用に際しての各省判断による処遇での任用、民間企業から登用された人材の民間再就職の際の規制見直しなどは、行うべきではありません。

 ○「関連性の強い企業」からの採用や、その人が元の企業に「再就職」することをフリーにすることこそ、官民癒着の温床です。

7 「国家戦略スタッフ群(仮称)」の創設など政策立案を主任務とする公務員を一般職国家公務員の中で区分することには反対です。政治と行政の関係にかかわる基本的な問題であり、特別職国家公務員の範囲の見直しなど、他の方策を検討すべきです。

(以 上)


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