国公FAX速報 2006年10月3日《No.1753》
「公共サービス改革基本方針」説明会の概要

 国公労連は9月29日、公共サービス改革推進室(以下、推進室)より、9月5日に閣議決定された「公共サービス改革基本方針」(以下、「基本方針」)。についての説明を受けました。国公労連側は岡部書記長以下公共サービス商品化反対闘争本部および各単組の闘争委員16人が参加しました。推進室からは磯貝参事官補佐をはじめ5人が出席しました。
 冒頭、岡部書記長より国公労連の基本認識を述べた後、推進室から基本方針の概要の説明を受け、質疑応答を行いました。
 以下、課題ごとに概要をお知らせします(○は国公労連、●は推進室の発言)。

 ○ 「基本方針」について私たちは、国民の権利保障を担う国家公務員労働者として、行政サービスの低下につながるのではないかという強い危惧を抱くとともに、みずからの雇用や労働条件に直接影響する問題として、大きな関心を持つものである。
 「公共サービスの改革」は、「簡素で効率的な政府実現」とする目的と表裏一体で、「民間企業のビジネスチャンス」として捉えられてきたものであり、行政の趣旨・目的が歪められるのではないかと強く懸念する。同時に、民間企業が「儲からない」と撤退した際に、国や自治体から事務・事業を担うノウハウが失われているといった事態も想定される。これは、耐震構造偽装問題等でクローズアップされた国民の安全・安心確保が危うくされかねない問題に直結するものであり、十全の配慮が必要である。
 ● 「基本方針」は、先に成立した公共サービス改革法にもとづき、閣議決定されたものである。それぞれの国の行政機関の長、独立行政法人や国立大学法人などに対し文書で照会したうえでの協議をふまえ、官民競争入札等監理委員会の議を経て閣議決定されたものである。
 「基本方針」は政府全体の共通指針・実行計画として、ルールメイキングをするとともに、どういった業務を官民・民間入札の対象とするかを示したものである。
 新内閣発足前に作ったものであるが、この間、「規制改革・民間開放推進3か年計画」が再改定されており、5月30日には定員純減計画の閣議決定の中で、市場化テストが決められていた。そうした中、速やかに法律事項のプロセスを示す必要があり、9月5日に閣議決定されたものである。
 あわせて、法律では民間事業者や地方公共団体から意見を聴取することとされているが、基本方針では広く国民からの提案を募集することとしている。
 今回の内容については、年内を目途に対象となる公共サービスを見直す予定である。
 この枠組みは、国の財政事情が厳しい中で、財政支出を削減する必要があるが、やらなければならない公共サービスは実施するとの大前提のもと、支出の削減とサービス実施をどう実現するかを示したものである。とにかくコストカットのみを目指すものではない。イギリスでは、競争入札で公共サービスの質が低下したことも承知している。公共サービスの質の維持向上、確実な実施が改革の前提であり、質の低下があってはならない。
 職員の雇用・労働条件への影響については、個別具体的な業務が対象となれば危惧されるかもしれないが、国家公務員全般への影響はないと考えている。
 「民間企業のビジネスチャンス」との報道については、我々としても承知しているが、政府として、そうした考え方に与するものではなく、与したこともないと認識している。

(概要説明は略)

 各種機関の役割について

 ○ 官民競争入札等監理委員会と、既存の規制改革・民間開放推進会議の役割分担はどのように整理されているのか。同様に公共サービス改革推進室と規制改革・民間開放推進室との役割分担はどうなっているのか。規制改革・民間開放推進会議や同推進室が、構造改革特区や規制緩和を担い、官民競争入札等監理委員会や公共サービス推進室が民間開放や情報公開を担うこととなるのか。
 あわせて公共サービス改革法及び「基本方針」に規定される民間事業者等からの意見募集と、「あじさい月間」「もみじ月間」の意見募集はいかに整理され、重複はないのか、説明を求める。
 ● 官民競争入札等監理委員会と規制改革・民間開放推進会議は、内閣府に設置された審議会としての位置づけは同じである。その中で推進会議は、「民間開放」を推進する役割を担っている。単に民間委託だけでなく、従来「官製市場」と言ってきたが、規制が入っていることも射程に入れて議論している。監理委員会は、積極的・能動的に審議する役割もあるが、おもに透明性・中立性・公正性を確保するといった、手続き面に関与するものである。その点で、一概にすべて重なるものではない。
 公共サービス改革推進室は、規制改革・民間開放推進会議の事務局の中で、市場化テスト推進室とされていたものが改組された。法の成立を受け、規制改革・民間開放推進会議の事務局としての性質は消え、対象事業の選定に関する事項や、公共サービス改革法の制度に関する事項を所管する事務局ということになる。
 今回は、公共サービス改革法にかかる意見募集と「あじさい月間」「もみじ月間」の意見募集を別個に実施した。行政サービス改革法を受けて、意見聴取をどう行うかであるが、年末を目途に行う見直しの中で、対象事業選定のプロセスなどをふまえつつ、タイムスケジュールも決めていくことになる。「あじさい」「もみじ」との関係については、時期が重なれば一緒に行うことも考えられるものの、現時点では白紙の段階にある。
 ○ 二つの機関が、同趣旨の意見を重ねて聞くことは非効率ではないのか。
 ● 規制改革・民間開放推進会議を設置する趣旨は変わらない。したがって、民間開放の検討も行われるということである。推進会議の民間開放は、民間委託だけを扱っているものではなく、「官製市場」を広く捉えて議論されているものである。一方で「公共サービス改革」は、官の業務を民間委託するものであり、全部が重なるものではない。
 ○(全法務) 完全に重なるものではないというが、各府省の担当部局は別ではなく1ヵ所だ。年に3回も似たような課題を与えられ、それに回答しなければならない負担は大変なものだ。こうした実態をふまえ、意見聴取は効率的に行うべきだ。
 ● 整理の必要性についてご指摘があった点については承ったので、上に伝えたい。

 監理委員会の構成について

 ○ 監理委員会は、「公共サービスの受益者である国民の立場」に立つこととされていることから、その構成員は受益者の立場を代表する者が中心的な位置に置かれるべきと考える。その観点から、労働者の代表、消費者の代表等がその大半を占めるべきと考えるが、いかなる構成となっているのか。
 ● 国民の立場に立つのが趣旨であるが、委員の数が法律で13人以内と規定されている。その中で、法律や会計の専門家、公共サービスに明るい方など幅広い分野に知見のある方が必要であり、総合的に当時の小泉首相が判断されたものと理解している。
 ○ 公共サービスの受益者の立場から、透明性・中立性・公正性が論じられるべきである。その点で、労働者代表として連合役員が入っているのは理解するが、消費者、中小企業の立場を代表するのはどの委員なのか。
 ○ 消費者、中小企業の代表は誰かと問われれば、必ずしも明確ではない。全部で13人という限られた枠の中での判断である。国民の視点に立つことの重要性は十分認識しており、監理委員会も同様のスタンスで構成されている。
 ● 管理委員会の議事録や、この間の発言を見る限り、我々の認識と大きな乖離がある委員が含まれている。日経の吉野論説委員はJR西日本の事故に関しローカル線を廃止して新幹線と都市部だけにすべきとの論説があり、増田岩手県知事は自治体リストラを強引に進めている。国公労連としては、監理委員会の構成に強い問題意識を持つことは指摘しておく。

 公共サービスの実施内容に関する評価について

 ○ 基本方針では、実施状況の評価をふまえ、対象公共サービスのあり方を整理するとしているが、例示されているのは拡大方向ばかりとなっている。民間事業者による公共サービスの実施状況が、不適切又は非効率である場合、対象公共サービスの受託範囲の縮小又は受託廃止との「対応策」はあり得るのか。
 ● 適正かつ確実な実施とする契約に則った実施を課している。実施が不適切で非効率であるなら、契約に基づいた指導を行うことになる。それでも改善されない場合は、罰則の適用、契約解除という手続きを踏むことになる。その後の議論であるが、民間委託そのものに問題があったのか、それとも受託した企業に問題があったのかを詰めたうえで、民間委託自体に問題があったとされた際には、官が直接実施する方式に戻す選択もあり得る。
 ○ 複数の企業に委託して実施したが、おしなべて非効率な実態が明らかになった場合は、民間委託の縮小・廃止という理解でよいか。
 ● そのとおり。
 ○ 評価は、対象公共サービスの実施期間終了時から開始するのではなく、適切な時期から開始することを原則とし、速やかに次の段階に移行するとされている。複数年の契約の場合においては、契約終了から1年程度前の段階で評価を開始し、次期入札に反映させることが可能と考えられるが、公共サービスの性格上、1年契約とならざるを得ない分野もあると承知する。その場合、どの時点から評価を開始し、いかに新たな入札に評価を反映させるのか。
 ● 評価の時期については、実施期間を原則複数年としているが、単年度がないとは言い切れない。仮に単年度の実施であるなら、公共サービスを中断することにはならないため、実施期間が終わる前に評価を実施することになる。
 ○ 4月から1年契約で実施した場合、その年の秋には次年度の実施要項が固まり入札が始まる。この場合、評価はいつから実施するのか。
 ● 重要な論点であるが、単年度事業の評価時期はこれから検討することになる。事業の内容をふまえて、評価時期を定めることになるが、単年度で事業が終わるのであれば評価しないこともある。またその後に、同様の事業を実施する場合には、実施初年度の実績を評価することもある。
 ○ 単年度の事業は、次の入札スケジュールを考えれば、4月から6月といった短期間での実施状況を評価するしかなく、適正な評価が可能かは疑問である。
 ● そうした評価は、論理的に排除されるものではないが、適切な評価時期については、引き続き検討していく。

 公共サービスの適正かつ確実な実施を確保するための措置について

 ○ 「基本方針」では、民間事業者の責務として「法令遵守」を強調しているが、使用する労働者に対する労働基準法違反等の法令違反が発覚した場合、また、当該事業者が法令違反で処罰された場合は、どのような対応がはかられるのか。
 ● 公共サービスを民間委託するものであり、民間も法令を当然守るものである。悪質な法令違反があれば、悪質性の程度はあるが、きわめて悪質な場合には契約解除もあり得る。
 ○ 「国による監督等の必要な措置」とはどのような内容を想定しているのか。たとえば、日常の業務監察又は業務指導、会計検査、行政評価等を行うものであるのか。
 ● 契約にもとづいて業務を行うものであるが、会計法にもとづく検査を国が実施するとともに、報告徴収など罰則担保を付している。適正かつ確実なサービス提供が求められる。
 ○ 民間事業者が契約途中で契約解除を申し出た場合の措置はどうなるのか。当然に、債務不履行責任を問うこととなると考えるが、あらかじめ違約金等を設ける考えはあるのか。
 ● たとえ儲からなくとも、契約を締結している以上実施する義務があり、撤退することにはならない。債務不履行の場合は、賠償を求める場合もある。違約金の設定については、入札であり、契約保証金を後で回収する、あるいは契約書にあらかじめ記載しておくことが可能である。

 対象公共サービスの選定について

 ○ 対象公共サービスの選定にあたって、民間事業者等からの要望を受け付けることとの関連であるが、膨大な要望に基づきその都度、対象公共サービスとして選定すべきかの検討を行うとなると、各府省がそれに費やす事務量・コストも膨大となり、非効率ではないか。
 ● 第一義的には民間提案から選定するものであるが、民間提案のものだけを対象とするものではなく、提案がなくても対象とする場合もある。
 ○(全法務) 民間提案がなくても、「この省庁はめぼしいものがないから何か出せ」と、監理委員会から要請されることがあり得るということか。
 ● 一義的には意見募集を行い、出てきた意見にもとづいて選定し、閣議決定するのが基本である。国会審議の附帯決議をふまえ、意見募集だけではなく、積極的・能動的に入札対象を提案できるとしているものである。したがって、対象公共サービスの内容が不十分だから「出せ」ということは考えていない。
 ○ 民間が提案もしていない事項を入札対象としても、応札事業者があらわれず、入札に関する事務を行うこと自体が非効率になりかねない。
 ● 民間の創意工夫が発揮され、より良いサービスがはかられるのであれば、一義的には民間提案をふまえた形になろうと考えている。
 ○ 民間に委ねることができると判断された業務については、当該業務を官民競争入札又は民間競争入札の対象とする業務として選定するとしている。その際、「国の行政機関が入札に参加する意思を有しているか否か」をふまえることとされているが、官民競争入札と民間競争入札が並立されている体系において、国の意思をふまえる必要はあるのか。
 ● 官民競争入札と民間競争入札を並立しているからこそ、民間に委託した方がよいとの省の説明が成り立っていれば、民間競争入札を選択することは可能である。
 ○ 入札方法については、官民競争入札、民間競争入札が並記され、国の行政機関等において、民間委託により業務を実施する際には、当該業務の内容に応じて、民間競争入札の活用について検討するとされている。しかし監理委員会の議論では、民間競争入札には否定的なやりとりがある。また、そうした報道も行われている。官民競争入札か民間競争入札か否かの判断は、監理委員会が担うのか、各省の判断に委ねられるのか。
 ● 民間競争入札に対する否定的な新聞報道等があった点は承知しているが、監理委員会の委員が、官自らが効率化努力を徹底すべきとの思いを主張したものと考えている。監理委員会として、官民競争入札に無理矢理持っていくものではない。
 ○ 官民競争入札を無理矢理求めるものではないとの考え方が示されたが、報道機関に問い合わせた際、「官側が逃げた」とする内容を「事務局から聞いた」とする話があった。事務局からはそうした話はないのであろうが、制度の趣旨が誤解されないよう、事務局としてしっかり伝える努力をすべきでないか。
 ● ご指摘のように報道機関の誤解も感じている。基本的には「官側が逃げた」との記載は、我々としても気分がよくない。事実関係はまったく違う。記事に対していちいちコメントできないが、マスコミに対しては事務局として制度設計の理解を求めたい。

 官民競争入札又は民間競争入札の実施等について

 ○ 官内部での情報交換の遮断措置(官民競争入札の場合)とあるが、具体的にどのような措置を想定しているのか。官が情報交換の遮断措置を行うとすれば、現実には、総務部門と業務部門との情報交換を遮断することになり、業務全般への影響は計り知れない。また、そのための専門部門を設置することは、かえってコストが膨大となるのではないか。
 ● 本省庁で言えば、入札を担当する部局(官房)と応札側(原局)の情報交換遮断を念頭に置いているが、それぞれの組織体系を見ると、一律的な方法ではやりにくい。実際に官民競争入札を実施する場合は、それぞれ工夫が必要であると考えている。
 ○ 情報交換の遮断について例示的な説明があったが、官房には業務に精通した職員はいない、また原局に会計に精通した人がいないとなれば、それぞれに、あらためてスペシャリストを作ることになる。官民競争入札を実施するために、わざわざこうした対応をはかること自体が非効率ではないか。
 ● 官房と原局のみならず、本省と地方支分部局との関係もあると考える。発注は本省で、応札は地方支分部局等の割り振りはあり得るのではないか。ケースバイケースで見ていく必要がある。

 「基本方針」の別表について

 ○ 「基本方針」の別表には、今後実施される入札対象事業が掲げられているが、規制改革・民間開放推進会議の議論において実施対象とされた厚生年金保険等の未適用事業所に対する適用促進事業等が盛り込まれていないのは何故か。
 ● 「規制改革3か年計画」(再改訂)の中で、市場化テストの本格実施とされたものを掲げた。

 公共サービスの質の維持向上について

 ○ 「必要以上の質を確保するために不要な経費が支出される、といった事態を招くことのないよう留意する」とあるが、「必要以上の質」とはどのようなものを想定しているのか。国民サービスの向上とは反するものと考えるが、「必要以上の質」であるか否かはどこが判断するのか。
 ● 個々のサービスによって、どういうものが要求されているのかは異なるが、質を追求するあまり、コストがかかりすぎてはならないという趣旨である。国の行政機関等が10のサービスを求めていてこれまで1,000万円かかっていたものが、50のサービスを提供してコストも5倍になったということは起こってはならない。いずれにせよ具体的なものを想定しているわけではない。
 ○ コストの話があったが、ことさら人件費を落としてコストダウンしようとする民間事業者に対してはどう対応するのか。
 ● 価格だけでなく、質の評価を行うのが原則であり、コストがあまり低い場合は、事業者を評価した上で対応する。
 ○ その際、最低賃金さえ守られていれば良いのかという問題意識を持つ。ワーキングプアが社会問題になっており、国民は公務の効率化を求めてはいても、ワーキングプアの拡大など求めてはいない。そうした視点の重要性も指摘しておく。
 最後に、この課題については、不明な事項、疑問点等が今後とも生じることが想定される。冒頭指摘したように、我々の雇用や労働条件に直接影響するものでもあり、文書でのやりとりや、本日のような場の設定など、引き続き誠実に対応するよう求めたい。
     以上

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