社会保険庁への申し入れを実施
 5月26日、「社会保険庁改革」にかかわって、同庁に対し要請を行いました(申し入れ書は下記)。国公労連側は、小田川書記長を責任者に、飯塚全厚生副委員長他が参加し、社保庁側は、三枝職員課長が対応しました。要請では、小田川書記長から、(1)「社会保険庁改革」にあたっては、あらたな組織への選別採用などの雇用問題や労働条件の不利益変更などの問題を生じさせないよう万全の対策をとること、(2)国家公務員法や人事院規則などを基本に、職員の利益確保に万全を尽くすべき使用者としての責任を果たすこと、(3)公務員制度の運用にあたっては、法令の遵守とともに、勤務条件に関わる課題については労働組合との交渉・協議を尽くすこと、の3点を申し入れました。職員課長は、「社会保険庁を取り巻く状況は非常に厳しく、国民の信頼を得る組織に生まれかわるべく、職員とともに懸命に努力している。平成20年秋には社保庁は廃止される見込みであり、将来のある省庁とは違う危機感を持って対応している。要請事項については、長官にしっかり伝えたい」などと回答しました。小田川書記長は、「危機感があるのはわかるが、ルールをきちんと守ってもらうことが大事」と社保庁の対応を強く求めました。
2006年5月26日
社会保険庁
 長官 村瀬清司 殿
日本国家公務員労働組合連合会
                       中央執行委員長 堀口士郎
「社会保険庁改革」にかかわる申し入れ
(1)現在、開会中の国会には、いわゆる「社会保険庁改革」関連法案が提出され、審議が進められています。その内容は、年金事務と政府管掌健康保険の事務を分離し、前者については新たな行政機関である「ねんきん事業機構(仮称)」で、後者については法に基づく公法人である「全国健康保険協会(仮称)」で取り扱うこととされ、そのために社会保険庁の廃止も含めた組織再編が行われることとされています。そのような組織再編とかかわって、現に社会保険庁に働く労働者の雇用の不安定化や労働条件の悪化が懸念されています。
 すなわち、この間の「社会保険庁改革」論議や、国会で審議中の法案では、約16600人の社会保険庁職員の雇用や労働条件を、あらたな行政組織や公法人に承継する制度的担保が措置されておらず、かつ、貴庁において国家公務員法第78条にもとづく「分限免職」等の検討が行われていると思える動きがあるからです。また、一部政治家が職員の雇用等に介入していることにも、強い懸念を抱いています。

(2)行政改革にともなう公務員労働者の雇用問題は、「国家公務員の5%純減」などを内容とする「行政改革推進法案」や「市場化テスト法案」でも俎上にのぼっています。
そこでは、政府全体での「雇用調整本部」の設置が確認されるなど、「分限免職」を発動させないための努力が示されているところです。そのことは、総定員法の下で「定員の適正配置」が行われてきた定員管理の経過からしても、中央省庁再編での組織再編や独立行政法人等のあらたな法人設立にあたって採られた雇用承継措置との均衡などを考えても当然の努力表明だと考えます。
 なお、補足すれば、「社会保険庁改革」でも、民間企業における人事管理との均衡が論議されていますが、そうであるのならば、「解雇4要件」を確認したもとで進められる民間企業での「リストラ」との比較・均衡が、行政組織の再編にあたって考慮されるべきであることも当然だと考えます。

(3)行政改革推進とかかわる雇用問題での政府全体の動向と、「社会保険庁改革」でのそれが異なる合理的な理由があるとは考えられません。政府管掌健康保険の事務を取り扱う法人の設立にあたって、独立行政法人設立の経緯などとの関係からして、現に政府管掌健康保険にかかわる事務に従事している社会保険庁職員を優先的に採用し、雇用と労働条件を実質的に承継させることは当然だと考えます。
 行政組織の改廃とは言え、年金事務を取り扱うあらたな行政組織に、職員の雇用・労働条件が無条件で承継されるべきであることは言うまでもありません。
 その点での制度的な措置が講じられていないとしても、労働者の生活保障に責任を負う使用者の役割発揮が求められることは言うまでもありません。それは、官民を問わない雇用主の普遍的な責任です。

(4)この数日、貴庁の下部組織である複数の社会保険事務局で、国民年金保険料の免除・猶予申請にかかわる不明朗な処理が行われたとする報道が行われています。ことの真偽は承知しませんが、行政処分や行政事務の処理にかかわって、法令の範囲を逸脱することがあってはならないことは言うまでもありません。法を逸脱する事務処理が行われたとするならば、それは一人・社会保険庁だけの問題ではなく、公務全体に対する国民の信頼に影響する重大な問題です。
 ところで、法令の遵守は、単に業務処理だけではなく、勤務条件が法定されている職員の勤務条件にかかわり貴庁の人事管理・運用の全般についても妥当するところです。
 貴庁では、あらたな人事評価制度を国家公務員法第72条にもとづき実施されていると承知しています。その中では、国民年金保険の納付率アップを「目標」とした実績評価も含まれていると聞き及んでいます。
 このような「目標管理」の人事評価システムが「ノルマ主義」に転化し、時として違法行為の要因になることは、例えば一部都市銀行での不祥事にも見られるところです。したがって、「目標管理」などの成果主義を公務で実施、導入する場合には、慎重な検討や十分な試行が求められることは言うまでもありません。
 しかし、貴庁における導入は、わずか半年の「試行」にしか過ぎず、かつ、評価結果の活用方法も、公務員制度の逸脱が懸念される「ノルマ主義」型の検討であったと聞き及んでいます。
 このような経過も含めて考えれば、貴庁における人事管理が、上意下達、命令と服従、アメと鞭のそれとなり、公務員制度と基本的に整合しない運用になっているものと推測せざるを得ません。公務員制度が、公務の効率的な運営に資する事だけを目的にしていないことは明白ですが、その点をもとに、貴庁での運用の実際を検証することも必要だと考えます。

(5)貴庁で検討が進められている組織改編に伴う職員の雇用、労働条件にかかわる課題や、勤務評価活用の課題は、国家公務員労働者全体の処遇、労働条件に直接的な影響を及ぼす可能性をもっているものと考えます。
 そのことから、先に述べた状況認識や問題意識を前提に、国家公務員労働者の産別組織として、また、貴庁に働く労働者を組織する全厚生労働組合が加盟する連合職員団体として、下記事項を申し入れ、貴職の誠意ある対応を求めます。             

  記

1 「社会保険庁改革」にあたっては、あらたな組織への選別採用などの雇用問題や労働条件の不利益変更などの問題を生じさせないよう、万全の対策をとること。

2 国家公務員法や人事院規則などを基本に、職員の利益確保に万全を尽くすべき使用者としての責任を果たすこと。

3 公務員制度の運用にあたっては、法令の遵守とともに、勤務条件に関わる課題については労働組合との交渉・協議を尽くすこと。

                               
  以上

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