国公FAX速報 2006年2月24日《No.1708》
「(行政改革推進)法律案の概要」に関わって
問題点を指摘し、策定作業の中止を要求行政改革
推進事務局と交渉

 国公労連は2月23日、「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律案の概要(以下「法律案の概要」)」に関わって、行政改革推進事務局に申し入れ書(別紙参照)を提出、交渉を実施しました。
 この交渉は、昨年12月24日の「行政改革の重要方針」の閣議決定を受けて、検討が進められている「行政改革推進法案(仮称)」が3月にも閣議決定・国会提出の状況にあることから、「法律案の概要」の問題点を指摘し、策定作業の中止を求めたもの。
 なお、交渉は、公務員制度等改革推進室の川淵参事官をはじめ9名が対応し、国公労連は小田川書記長以下、各単組の書記長ら18名が参加しました。

 冒頭、国公労連小田川書記長から申し入れ書を提出し、趣旨を説明したのに対し、川淵参事官は「申し入れ書は公務員制度等改革推進室の対応でない部分もあるが承る」とした上で、「『行政改革の重要方針』で総人件費削減が決定され、法案化することも政府方針であり、今国会に提出することで作業をすすめている」「作業段階で了承されたものは公開しているが、今日は現場のみなさんの率直な意見を聞かせてもらいたい」と、基本姿勢を示しました。
 これを受けて、各単組の代表から職場実態や業務の重要性をふまえた主張が行われました。

 全運輸は、「自動車登録業務が検討対象とされたが、公権力行使の業務も行っている。『民間にゆだねる適否』とはどのような基準か。独法は、評価が行われることになっており、その前に削減ありきは発足時の目的からも逸脱するもので問題だ」
 全医労は、「高度専門医療センターは、国立病院の独法化の際の検討で直営となった経緯があり、説明責任がある。国の責任、医療の公共性をどう考えているのか。現在でも人員不足の実態にあり、5%削減などとても受け入れられない」
 全厚生は、「社保はこの法律案とは別枠で民間に委ねる方向が打ち出されているが、『市場化テスト』も含めて民間ありきの議論。国民に対するサービス提供の立場から、業務分断して進めることが相応しいのか疑問だ。『小さな政府』は国民が願っている方向とは異なる」
 全法務は、「登記は国民の重要財産を守る業務であり、中立性をもって公正・公平な対応が求められる。全国一律のサービス水準を維持するため、人材の育成も重要だが民間でできるのか。地方支分部局の縮小に対しては地方自治体・住民から廃止反対が言われている」
 全気象は、「気象庁は定型業務と見られているが実態はそうではない。観測業務でも確認が必要であり、機器の保守管理を含めて一人がさまざまな業務を行っている。異常気象や災害時となれば24時間体制もある。法案に盛り込むべきではない」
 全建労は、「官庁営繕は独法議論の中で縮小化し、安全な庁舎は阪神淡路大震災等で証明済みだ。耐震偽装やアスベスト問題など、結局国民の税金で後始末となる。地理院は唯一の測量事業官庁で、測量法の所管。地震・火山観測、領土管理も重要な業務だ」
 全経済は、「特許は今までも検討に上がってきたなかで現状があり、この間の議論を踏まえた対応を求める」
 全労働は、「職業紹介の特区の実情として、足立区は100人働かせるのに4000万円も民間事業に補助金を使っており、区は今後は公共で実施することを明確にしている。アスベスト対策にしても政府方針によって懸命にとりくんでおり、これ以上の定削は受け入れられない」
 また、総理府労連から「小さな政府に対する世論の支持は下がっている、統計の職場は委託できるものは既に実施しており、枠を決めた上で各省に押し付けるのでは、職場は対応できない」、全税関から「その他の必要な措置とは何か」などと主張・追及しました。

 以上をとりまとめる形で小田川書記長は、(1)民間開放や5%純減など、どのような基準・考え方をもっているのか、(2)それぞれの省庁が担っている行政責任をどう考えているのか、(3)独法などの他の法と今回の関係はどうなるのか、(4)90年代以降の「行革」による一定の到達点があるが、今回の法案との関係如何、(5)労働条件についてはどう考えているのか、(6)この間の「民」の失敗をどう見ているのか、(7)いくつかの個別業務を列挙することで法案全体との関係をどう判断するのかなど、推進事務局の姿勢を質しました。

 従来の定削とは一線画し、構造問題に手をつける

 川淵参事官は、「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進は、総選挙で国民の支持を受けた政府の方針。これまで担ってきた思いはあるが、どの業務を維持していくか、国が直接やるのか、他のセクターがやるのか検討するのが与えられた課題。要請をすべて受け入れると資源が足りない」などとし、「検討にあたっては必要性があるか、必要性があっても民間に委ね、効力化を図るものなど見直し、自衛隊や地方公共団体にもお願いし、全体でコストを縮小していく」、「個別の検討対象ははじめから決めたわけではなく、これまでの議論と情勢をふまえて出てきたと認識している」などと述べました。
 また、「個別事項には、市場化テストで風穴が開いた職域があり、定員より事業に着目したもの。規制改革民間開放推進会議で三桁の項目が上がっていたものを地方公共団体や定員外の部分を除いて整理した。過去に検討の俎上に上ったものをすべてチェックし、すでに状況が変わったものをセレクトしたうえで、時代背景や情勢の変化を踏まえ改めて整理している。みなさんの意見、有識者会議、国民の声をふまえ知恵を絞っていきたい」と回答。
 そして、「行政責任はそれぞれの省庁が負っており、民に移しても国が責任を負う。やり方の問題であり、限られた資源をどこに投入するのか、これまでの定削とは一線を画して構造問題に手を付けようとするもの」と述べるにとどまりました。

 最後に、小田川書記長から「給与制度の見直しは労働基本権に関わる問題であり、削除すべきだ。公務員制度改革は頓挫した「大綱」に戻るような内容は盛り込むべきでない」と指摘し、定員を含めた個別の問題について改めて協議の場を持つよう求め、交渉を終わりました。                

以上

【別紙】

  2006年2月23日


内閣官房行政改革推進事務局
 事務局長 松田隆利 殿                     

日本国家公務員労働組合連合会
                       中央執行委員長 堀口士郎

   

  「行政改革推進」法律案にかかわって(申し入れ)

 標記法案については、昨年12月24日の「行政改革の重要方針」の閣議決定をうけ、貴事務局において検討が進められていると承知しています。
 「行政改革の重要方針」について国公労連は、「国民生活にかかる国の責任を放棄する『小さな政府』つくりの計画であり、その決定に抗議し、撤回を強く求める」との立場を明確にし、「行政改革推進法案(仮称)」策定作業の中止を主張しているところです。
 そのような主張は、政府が、「簡素で効率的な政府」という曖昧な概念をもとに、国民的な合意も不十分なままに国の行政責任の重点化をはかるとし、均等な行政サービスを全国で提供し続けることを「悪平等」と切り捨て、行政サービスの充実を求める国民要求を「自己責任」の名で切り捨てることなどを前提に、「国家公務員の5%純減」や行政サービス実施部門の民間開放、民間化を強行しようとしていることに起因しています。
 貴事務局が、過日明らかにした「法律案の概要」は、我々の主張が単なる懸念ではなく、行政サービスと公務員労働者の労働条件に深刻な打撃を与える法案検討がおこなわれていることを明らかにしました。
 そのことから、「法律案の概要」にかかわって、あらためて下記のような問題点を指摘し、作業の中止を強く求めるものです。

1 法案の基本理念について、「民間の主体性や自律性を高め、その活力が発揮されることが不可欠」だとして、「政府が実施する必要性の減少した事務事業」の分類、整理をおこなうということでは、行政に求められる「中立性、能率性、継続・安定性」を維持確保することは困難だと考える。
 とりわけ、中央政府が国民の基本的人権実現の観点から果たすべき責任や役割について、全く言及していないことは、重大な欠陥である。
 また、「行政機関の整理及び合理化等」が「国民負担の上昇を抑える」ということは、この間の行政改革の経過からしても実証できない。実証も出来ない命題を掲げれば、結果として「経費の抑制」のみが強調され、国民生活に必要不可欠な行政サービスを形骸化させる危険性を高めるだけである。

2 「国及び地方公共団体の責務」として、重点分野の行政改革によって「簡素で効率的な政府の実現」を明記することもすべきではない。これでは、政府の責任は、「簡素で効率的な政府」の実現のみとなり、先述した「中央政府の責任」などともかかわって、憲法との関係でも問題が生ずる。
 また、重点分野以外の行政分野については、今回の行政改革では「聖域化」を宣言しているに等しく、その点でも重要な問題を持っている。

3 「独立行政法人の見直し」にかかわって、「独立行政法人に対する国の歳出の縮減を図る見地から、その組織及び業務の必要性を厳しく見直す」となれば、「公共上の見地から行う事務及び事業の確実な実施を図り、もって国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資することを目的」(独立行政法人通則法第1条)を確保する国(主務官庁)の責任も明確にする必要がある。

4 「特別会計改革」にかかわって、「財政の健全化に資する」ため、「事務又は事業の合理化及び効率化」だけをもとめることでは、「負担と受益の関係」を明確にして区分経理をおこなうとする特別会計制度の目的との齟齬をきたしかねない。
 特別会計の必要性については、行政サービスとの関係を明らかにし、国民負担の軽減をはかる観点での検討が必要である。

5 「総人件費改革」にかかわって、「給与制度の見直し」を掲げることは、公務員労働者の労働基本権を侵害し、国家公務員法にも抵触するものであり、削除すべきである。かかわって、官民比較方法のあり方等の措置を、人事院の意見申し出もないままに言及することも違法であり、削除すべきである。
 また、「定員5%純減」とかかわって、いくつかの個別の事務、事業を法律上明記すること、地方支分部局等に限定して「抜本的な見直し」に言及することなどは行うべきではない。いずれも議論途上のものであるにもかかわらず、法で強制してしまうことは、民主的手続からして重大な問題である。

6 総人件費削減の観点から、国家公務員の純減を求めるとしながら、一方で「国の事務及び事業に国家公務員の身分を有しない者を従事させる仕組みについての検討」に言及することは大きな矛盾である。

7 総人件費削減とかかわって、独立行政法人等に人件費縮減の一律目標を強制し、地方公共団体に「職員数の厳格な管理」を求め、「地方公務員の国基準」の切り下げや教職員の純減などは、なお、議論途上であり、法律に明記することは手続き上も問題である。

8 「平成27年度における国家公務員の総人件費の国内総生産の額に占める割合が平成17年度における当該割合の2分の1」とする目標を明記すべきでない。このような目標の設定は、行政ニーズの変化に対応した行政サービスの適切な提供を困難にするものに外ならない。

9 公務員制度改革にかかわって、頓挫したことが明白な「公務員制度改革大綱」の復活を意図したとも思える内容を法案に盛りこむべきではない。
なお、労働基本権回復を中心に公務員制度改革に着手し、関係者との協議を開始することは強く求める。

10 検討にあたっては、行政サービスの質と量に影響し、公務員の処遇にも重大な影響を与えることから、関係者からの意見の反映をはかることとし、一方的、拙速な法案化作業は行わないこと。
 以上

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