営利企業への公共サービスの安易な開放に反対する(談話)
−−「市場化テスト法案」の閣議決定にあたって−−

  政府は、本日10日、「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律案(「市場化テスト法案」)」を閣議決定した。
(※法案についてはこちらを参照→http://www.cao.go.jp/houan/164/index.html

 80年代からの行政改革の中で、公務、公共サービスの民間委託や行政代行法人の設立などで、行政の切り売り、細分化が進んできた。今回の法案は、そのような民間委託を行政サービス全般への拡大を図るとともに、営利追求を目的とする企業に、公共サービス実施を委ねるとしており、見過ごせない内容となっている。

 第1に、「官から民へ」のスローガンのみが強調され、国民の基本的人権実現を目的とする政府の責任に照らした行政サービス実施体制の真剣な検討はおこなわれていない。
 第2に、「市場化テスト法案」が対象とする範囲は、国、地方の行政機関が提供する行政サービス全般とされ、一方で強まっている総人件費削減を目的とする行政実施部門のダウンサイジングの新たな手法とし位置づけられている。そのため、総人件費削減、公務員削減を優先する余り、行政サービスの後退が危惧されるものである。
 第3に、対象とされた業務に従事する正規、非正規の公務員労働者の雇用と労働条件への配慮がほとんど見受けられず、その点でも「公務リストラ法」となるおそれが強い。
 これらの点からして、国公労連は、「市場化テスト法案」を受け入れることは出来ず、その閣議決定に強く抗議する。

 昨年来、「官から民へ」の「小さな政府」の陰が、極めて明確になってきている。
 「耐震構造偽装事件」では、官の責任を履行する体制整備もないまま、経済効率最優先で民間開放をおこなえば、国民の財産権が侵害され、住環境の安全・安心も阻害されるなど、基本的人権の侵害が生ずることが明らかになった。
 金融などの規制緩和が進められた結果、株投機などによる「儲け至上」の経済活動がまともな企業活動を阻害し、格差拡大の要因となり、行き過ぎた競争主義がこの国に蔓延しはじめていることが明らかになった。
 輸入再開後1カ月で、危険部位の混入が露呈した米国産牛肉輸入の問題は、政府が、国民の「食の安全」よりアメリカとの経済関係を優先しているとの懸念を強めるものであった。
 国民共同の利益を確保するための「社会的規制」の緩和には、その行きすぎへの批判が、国民的に広がりはじめているのが現時点である。
 そのことからして、効率的な政府への改革課題も、安心・安全を国の責任で確保するためのナショナルミニマムの再構築を目的に政府の役割を再編することにある。しかし、「市場化テスト法案」には、その問題意識は見受けられない。法案の反国民性は、この点で明らかである。

 国公労連は、以上のような「市場化テスト法案」の問題点や「小さな政府」の実態を広く訴え、国民世論と共同した運動を追求する。「小さな政府」への「流れ」を変えるために発足した全労連闘争本部への結集を強め、成立反対のたたかいに全国で奮闘する決意である。

       2006年2月10日
                     日本国家公務員労働組合連合会
                     書記長 小田川義和

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