国公FAX速報 2005年11月8日《No.1683》

《規制改革・民間開放推進室交渉》
  「公共サービス効率化法(市場化テスト法)案の骨子」
   に関する質問に規制改革・民間開放推進室が回答

 国公労連は7日の午後、規制改革・民間開放推進会議に対し「公共サービス効率化法(市場化テスト法)案の骨子」に関する質問書を提出し回答を求めました。交渉は、規制改革・民間開放推進室の岩佐企画官、市場化テスト推進室の磯谷氏と宮崎氏の両参事官補佐が対応、国公労連は小田川書記長と飯塚独法対策部長ほか2名で対応しました。
 質問事項と回答要旨は下記のとおり。
 ※骨子については、内閣府 規制改革・民間開放推進会議HP 公表資料のページを参照してください。




1    あらたな行政管理手法と考えられる「市場化テスト」を新設する目的および必要性を明らかにされたい。
 「骨子」では、「これまで官が独占してきた公共サービス全般について、その必要性や効率性を見直すための手法」としている。政府が閣議決定している「骨太方針2005」では、「公共サービスの効率化を図るため」としている。さらに、一部には、公共サービスを「パブリック・ビジネス」と位置づけた経済効果を強調する意見もあると承知する。法案化の検討は、どの点に軸足を置いた検討をおこなっているのか。
(回答)  「行政サービスの質の維持・向上」と「コスト削減」の両にらみで考えている。民間は「パブリック・ビジネス」と言うが、政府はそういう立場でない。
 「官民競争入札」を経なければ、公共サービスの効率性が見直せないとする合理的な理由があるのか。
(回答)  必ずしも「官民競争入札」を経なければ、公共サービスの効率性が見直せないということではない。
 効率性以前に、民主性や公正性、あるいは継続性など重視される必要のある公共サービスは少なくないと考えるが、その点は「市場化テスト」の目的と整合するのか。
(回答)  公共サービスには、民主性や公正性、継続性が必要であるが、効率性を度外視していいのかと言えばそうではない。「市場化テスト法」の対象とするのか否かと、実際に市場化テストの検討の対象にするということには違いがある。


「市場化テスト」の対象となる公共サービスの範囲を明らかにされたい。
 この間示されているガイドラインでは、「国、地方公共団体のすべての事業」とされてきたが、それは引き継がれているのか。地方公共団体固有の事業を「市場化テスト」の対象とすることを国が強制できるのか。独立行政法人との関係ではどうか。
(回答)  アプリオリに競争入札にかけるということではないが、「国、地方公共団体のすべての事業」が「市場化テスト法」の対象となることは否定しない。地方公共団体固有の事業を「市場化テスト」の対象とすることを国が強制することは考えていない。独立行政法人については、法令根拠により主管大臣が作成した中期目標に基づき業務を実施し、また、見直しを行っている。そのこととのリンクを考えながら、「市場化テスト」の検討の対象に含めていくものと考える。
 「市場化テスト」法の枠組みに、自治体が実施する場合の規制の特例措置が入っており、どういう仕組みで国の措置を発動するかは総務省と研究中。
 指定法人なども「市場化テスト法」の範囲としては否定していない。民間に委託している場合でも、独占的に続くと高コストとなるので、競争関係に入れる。
 国民の基本的人権の実現を不断に追及し、国民の共同利益を実現するために、国や地方自治体などが実施責任を直接負うべき事務・事業として現状があるのではないか。その点は、どのように考えられているのか。
(回答)  「市場化テスト」の検討対象とし、テストを実施するか否かは、公共サービスの個別の検討のうえに判断するものと考える。


「市場化テストに関連する規制改革」について、「公務員でなければできないとされている規定の緩和等」と例示的に説明されている。規制改革の対象は、そのような実施主体にかかわる点に限定し、公共サービスの質ともかかわる法規制については対象にしないことを検討しているのか。
 「民間開放」ありきや、民間事業者の負担軽減を目的とした規制改革がおこなわれることでは、公共サービスを公正にかつ安定的に提供することが困難となり、あるいは国民の権利を損なうおそれが生ずるのではないか。
(回答)  公務員でなければできないというところの規制をはずしていく考え。「行政サービスの質の維持・向上」と「コスト削減」を両にらみで考えており、「コスト削減」のために要求水準を下げてはいけない。「市場化テスト」は純減のためのツールではないと関係機関には説明しているが。
 専門性が求められる公共サービスでは、公共サービスを担う労働者の質の確保が必要となると考えるが、それを担保するための規制も検討の対象にしているのか。
(回答)  スキルや資格を持っている人がやる必要などを法令で措置する方法もあれば、入札参加資格で措置する方法などが考えられる。
 どういう方法でやるかは議論が尽くされていないが、誰でも入っていいとはならないと考える。


「基本方針」にかかわって、「民間提案を最大尊重」して内閣総理大臣が案を策定し、「第三者機関」の議を経て閣議決定することを法で強制するという仕組みは、各府省大臣の行政分担管理や行政責任を制約することになると考えられるが、その点はどのように検討されているのか。
 「市場化テスト」の対象とすべき公共サービスの内容、範囲等は、行政の一体性からしても、行政責任、説明責任を負う主管大臣が検討すべきものではないのか。
(回答)  「民間提案を最大尊重」とあるが、民間提案をアプリオリに競争入札の対象にするものではない。各府省大臣の行政分担管理や行政責任を制約することがないよう「最大尊重」と記述している。民間提案を踏まえ添えるものには添う。主管大臣の行政責任などを阻害するかたち出だすことは問題と考えている。制約とならない形で最大尊重するもの。「第三者機関の議」とは、第三者機関が承諾しなければすすめられないという話ではない。あくまで法的な意味で「議を経る」ということであり、閣議決定を拘束するものではない。
 「不要な公共サービス」の廃止については、当該行政サービス実施の根拠となる法令との関係が生ずるが、この点はどのような検討をおこなっているのか。
(回答) 検討の結果、国が行う必要がない業務となった場合、根拠法令を廃止する場合もあり得る。
 「公共サービスの不断の革新」とはどういうことを想定しているのか。毎年度の予算要求などとの関係はどのような検討をおこなっているのか。
(回答)  「不断の革新」とは、契約期間が終了する毎に官民競争入札を行うことで公共サービスの向上が図られることなどを想定している。予算要求との関係は現時点では回答できない。


「官民競争入札の実施に関する事項」の策定権者が明らかにされていないが、それはなぜか。また、「第三者機関の議」と「実施方針」決定とはどのような関係として検討しているのか。
(回答)  策定権者については、どのような仕組みにするのか詰まっていない。「第三者機関の議」の位置づけは、官と民との間で中立したものを念頭に置いている。官が落札しやすい「実施方針」とするのではないかとの懸念もあるが、それでは何のために「市場化テスト」を実施するのかわからなくなる。第三者の立場で一定関与するが、法的拘束力を持つ位置づけではない。
 一般的に考えれば、もっとも行政内容を承知しているものが、「実施方針を策定」するというのが自然だという意見もある。
 実施計画との関係で「必要十分な情報開示」に触れているが、情報公開法や個人情報保護法などとの関係はどのような検討をおこなっているのか。「必要十分な情報」を得るために入札に参加するなどの事態は想定していないのか。
(回答)  個人情報が対象事業に含まれるか詰め切れていない。所管省庁と協議を行っている。情報の開示は、どのような方法にするか検討している。例えば、入札に参加する者だけに開示するのか、PFIなどのように質問に対してやりとりする形になるのか、詰まっていない。オープンにするしくみもあり得るとも考える。
 行政行為と考えられる落札者の決定に当たっても「第三者機関」の議を経ることが想定されているが、決定に対する不服を申し立てる際は「第三者機関」も当事者になるとする検討を行っているのか。
(回答) 落札者の決定を法令上どのように整理するかは検討中である。現行の入札制度では私法上の行為として整理されている。
 入札者決定にかかわる主管大臣の責任や権限はどのようなものとして検討しているのか。
(回答)  現行の会計法令の入札契約を念頭に置くと、主管大臣が落札者を決定している。
 落札者と国の関係は、請負や委託契約関係として整理することで検討しているのか。
(回答)  委託契約となるのではないか。
 落札者について、「撤退の自由」を規制することの可否はどのように検討しているのか。
(回答) 契約した以上きちんと履行するのが当然の原則であり、履行していただく。契約期間中に企業が倒産した場合も想定したリスクヘッジをどうするか、などの点も検討はしている。


「強力な機能を有する第3者機関」については、どのような組織形態等を検討しているのか。
 事務局を有する独立の行政機関を新たに設けるとなれば、それ自体が「小さな政府」に逆行するものとも考えられるが、どうか。
(回答)  「第3者機関」については、来年度の概算要求で、「8条機関」として要求している。
 「第三者機関」とかかわって、市場化テストにおける「中立性」の概念で、「民業の効率」との対比に言及しているが、その「対比方法」はどのようなものを検討しているのか。
(回答)  定量的なもので比較する仕組みができればベストだが、なお検討中。


公務員制度関連、財政法関連、国有財産法関連などとの関係整理に言及しているが、具体的にはどのような点を検討しているのか。
(回答)  公務員制度関連では、国公法103条の再就職制限との関係について検討している。また、職員が民間に行った場合の仕組みを検討している。公務員制度と関わって、市場化テストは職員の配置転換、新規採用の抑制で対応するのが基本。ただ、個人の希望があった婆愛も想定したケーススタディで人事院とも相談し検討している。
 財政法関連では、国庫負担行為5年の年限があるが、必要があれば財政法の特例を措置しなければならないものと考える。国有財産法関連では、行政財産の貸し付けについて、特例をつくる必要があるかどうか検討している。
 規制の特例措置との関係も検討対象にしているのか。
(回答)  特例措置でやるか通則でやるかなど検討している。


「市場化テスト」モデル事業にかかわって、「市場化テスト法」検討との関係で、どのような検証・評価をおこなっているのか。
 ダンピングとも考えられる「1円入札」がおこなわれたことをどのように検証しているのか。
(回答)  制度設計にあたって、もっと詰めた方がいいとか、こういうかたちに方がいいとか今まで検討してきた。「1円入札」では、最低ラインの業務を越えたときにインセンティブが入ってくる仕組みとなっている。現行では、落札予定価格1,000万円を超える契約では、必要な調査を行い、落札させない仕組みがあるが、これを活用することも念頭に検討している。


「市場化テスト法」の検討と関わって、関係者からの意見聴取や、意見交換の場を設定することは検討していないのか。
 「市場化テスト」にかかわっては、国民的にも開かれた形での議論が必要だと考える。そのためにも、「情報の均一化」が求められるが、過程のものも含め、検討内容をオープンにする考えはないのか。
(回答)  今日のようなかたちも含めて、引き続き意見交換をさせていただきたい。


 以上の回答を受け、若干のやりとりの後に、小田川書記長が今後の日程について質問したところ、推進室側は、「組織をつくる話が入っているので、予算関連法案の扱いとなるだろう。『骨子』以上の議論の素材がでる予定は今のところない」と回答。これを受け、小田川書記長は、「本日の回答を聞いても不十分な点が多い。本日の回答を受けて、改めて意見を申し入れたい。国民からも見えるようにできるだけオープンな議論をお願いしたい。」と述べ交渉を終了しました。


以上

トップページへ  前のページへ