〈公務の公共性を考える集会での問題提起〉
「競争より公正な社会を」めざすあらたな挑戦を

2005年6月4日
国公労連中央執行委員会

(1)  1997年12月3日に行政改革会議がおこなった最終報告をもとに、翌1998年6月9日に中央省庁等改革基本法が成立し、2001年1月6日には内閣府設置をはじめとする府省再編が具体化されました。同年4月には、あらたな行政執行機関である独立行政法人が設立され、公務の外縁化の新しい段階がスタートしました。独立行政法人制度は、その後地方自治体を対象として制度としても広がり、さらには国立大学法人という非公務員型の行政執行機関の現出にまで進んできました。
(2)  前述の行政改革会議・最終報告は、21世紀初頭の時期を、敗戦を契機とする戦後改革に「匹敵」する改革の時期と捉え、市場原理にもとづく競争社会への「この国のかたち」改革の起点として行政改革を位置づけています。
 そのことから、「『公共性の空間』は決して中央の『官』の独占物ではない」ことを(行政)改革の最も基本的な前提と位置づけています。小泉「構造改革」では、「官から民へ」、「国から地方へ」というスローガンが、全ての政策課題で貫徹すべき「命題」とされています。構造改革が行政改革会議・最終報告を下敷きにしていることを物語っています。
(3)  行政改革会議は「この国のかたち」改革を宣言しましたが、めざす「国のかたち」を示していません。特に、中央・地方の政府が、国民生活との関係で担うべき役割を明記しないまま「国の役割重点化」を宣言したにとどまっています。
 そのことが、「官製市場の聖域なき民間開放」という乱暴な動きを許す原因になっています。独立行政法人、指定管理者制度、PFI、さらには市場化テストと、「これでもか」の陣立てで、公務の民間開放を迫っています。
 また、規制改革特区制度や規制改革の名による制度改変で、国民生活を守る制度が企業の儲けを保障する制度に切り替えられ、公務の基盤を突き崩す結果になっていますが、これも「政府の役割」についての合意が形成されていないことの反映です。
(4)  2004年3月に発足した第28次地方制度調査会は、「道州制」論議を目的に設置をされ、先日、中間的な取りまとめを公表しました。その論議の先行きは不透明ですが、このような論議の背景には、国の実施事務を可能な限り地方にも移譲し、国の役割を「予算と法律の企画・立案」と外交、防衛、治安など「国でなければ出来ない実施事務」に純化する意図が働いていることは明らかです。
 そして、そのような「国の役割」再編が、国家公務員制度改革を不可避のものとする論議を引きおこしています。日本経団連や経済同友会が相次いで明らかにした「公務員制度改革への意見」は、企画立案部門に政治的任用を通じて民間企業出身者を送りこもうとしている点で一致しています。「財界による公務の乗っ取り」=公務員制度を通じた公務の民間開放がねらわれているのです。
(5)  「国から地方へ」の動きや、国家公務員制度改革論議を通じて問われているのは、「国と地方の関係」=国の役割であり、国家公務員の役割でありその範囲です。
 公務とはなにか、公共サービス提供の主体のあり方はどうあるべきか、国の役割とは、国家公務員の役割とは、など、「そもそも」が問われています。しかし、それらの「問いかけ」に、私たちは必ずしも有効な答えを準備しきれていないのが現状です。
 規制緩和・規制改革によって、「国民の共同利益」=公共性という概念が揺らぎ、財界などの主張では「国際競争力の強化」=国益=公共性と整理しています。規制改革特区では「一国複数制度」が当然とされ「全国一律の最低基準」という考え方は否定され、地域の自律が強調されることになります。
 私たちは、このような「公共性」の価値観の転換の動きや、「地域の自律」を迫る動きに対し、問題点や危険性をくり返し指摘してきました。その反映もあって、郵政民営化に対する国民世論に示されるような変化は生まれはじめています。しかし、民間開放の「流れ」を変えるまでには至っていないのも事実です。
(6)  国公労連は、中央省庁再編を前にした1999年12月に全国活動者会議を開催し、あらたな局面での行革闘争のあり方として、次のような点を確認しています。
1) 行政内部の民主化のとり組み強化として、政官財の癒着(特に官僚と政治との癒着、天下り)と腐敗の実態の「告発」と内部での民主化闘争
2) 国民生活の視点からの行政の現状のリアルな分析と問題点指摘
3) 財政破綻、経済の国際化などの「変化」に対応した労働組合の「提言」の模索
4) 行政民主化闘争と労働条件改善闘争の「一体化」
5) 憲法、平和運動の最重視
 政府や財界の公務の「解体」攻撃は、より深化してきてはいますが、とり組みの基本的な方向としては、5年余が経過した現段階でも有効だと考えます。
(7)  行政第一線の実態や問題点を事実に基づいて「告発」することは、強まる民間開放施策の国民への悪影響を実証する最も判りやすいとり組みです。行政民主化のとり組みそのものであり、行政現場で働く労働組合の責任でもある「実態告発」のとり組みは、今だからこそ強化が必要です。現在が判らなければ、改悪後の姿をイメージして貰うことは困難でしょう。
 国公労連は、2006年秋に、第二回の行政研究集会を予定しています。その集会は、「行政第一線を国民の視点から検証する」ことを目的に開催したいと考えます。今日の集会を契機に、実行委員会を立ち上げ、その準備を開始することとします。
(8)  あわせて、今日の集会もふまえ、公務とは、公共サービスとは、という「根本」問題を解明し、議論し、政府・財界の主張に反論するとり組みをより強めたいと思います。
 既に、行財政総合研究所の協力を得て、「民間開放プロジェクト」を設置し、市場化テストなど新しい行政管理手法の問題点整理などを開始しています。また、行財政総合研究所・自治体研究機構・自治労連・国公労連の四者で、道州制問題の研究と論議を開始しています。引き続き強化し、その成果を職場だけでなく、社会的にも返していきたいと思います。
(9)  「骨太方針」などで具体化される民間開放施策や、公共部門の「合理化」が、多くの労働者の雇用・労働条件を不安定なものにしています。共通の攻撃にさらされる労働組合との共同なども目的に、集会やシンポジウムなどを連鎖的に開催し、「公共サービス商品化反対」の世論を広げるとともに、「根本」問題の解明に努力したいと思います。
 当面、ハンセン病にかかわって国の責任を検証した委員会報告結果の学習会(6月28日)、JR西日本・福知山線での列車事故ともかかわって、規制緩和と安全問題をテーマにした「集会」の交運共闘などとの共催、自治労連、医労連、国公労連の共催で「骨太方針」の問題点を告発する「集会」、などの具体化を論議しています。
 単組やブロック・県国公とも協力して、「公務の公共性」を個別の課題からも問い質す企画を重層的に具体化し、運動に繋げていきたいと思います。各級機関での論議の活性化をお願いします。
(10)  今日の集会は、「競争より公正な社会を」実現するための国の役割と責任を糾し、再確立をもとめる運動の再スタートに位置づけたいと思います。
 「明日の国公労働運動」は、公務の公共性の確認、再確立をめざす行政民主化闘争をどれだけ強化するのかにかかっている、その決意で、産別全体のスケールメリットを活かし、力を結集したとり組みへの挑戦を開始しましょう。
 当面の運動の大きな節目を来年秋におき、日常的なとり組みとも結合して、国公労働運動の基礎を固める行政民主化のとりくみに力を集中することを確認しましょう。そのことを、各単組や国公労連、ブロック・県国公の運動方針に反映させることを誓い合いましょう。

以上