2004年8月30日《No.179》

「天下り」「人材確保・育成」「官民人事交流」で追及
  勤務条件性に関する意識が薄い行革推進事務局

 国公労連は、8月20日(金)午前、「再就職管理(=天下り)」、「人材の確保・育成」「官民人事交流」などについて、行革推進事務局との交渉を実施しました。
 これは、国公労連が6月24日に「質問書」を提出し、能力等級や評価制度などについて交渉(闘争NEWS No.173、174参照)を行っていたところ、今月に入ってから行革推進事務局が国公労連に対して「能力等級制」「評価制度」の法案化に向けた検討資料を立て続けに示し、これに関する交渉が続いていた(闘争NEWS No.176、177、178参照)ため、改めて「国家公務員制度改革関連法案の骨子(案)」(8/5推進事務局提出)の各項目のうち、標記の課題について交渉を行ったものです。
 この交渉には、国公労連からは山瀬副委員長、小田川書記長、岸田書記次長、「天下りプロジェクト」の国公労連・飯塚独法部長など7名が参加し、行革推進事務局は笹島参事官、槌谷参事官、好岡補佐ほかが対応しました。以下はそのやりとりの概要です。

◆再就職の適正化にかかわって
→退職年齢引き上げで昇格も遅くなる。働き方を見直さなければならない。
 再就職問題での国民の批判は、国と地方を含めた公務員全体に向けられており、公務員制度全体での議論が必要ではないか。また、特殊法人等における、いわゆる「渡り鳥」についてはどのような検討がなされているか。
 早期退職慣行の是正が必要との問題設定であるが、年功賃金の見直しや業績主義賃金の導入などは見直し課題となっているが、最大の問題である定員問題に踏み込 む検討が必要ではないか。環境整備の具体的中身はどのように検討しているのか。
 「天下り」のルール設定とそのチェックが、ともに内閣に任されているが、これは別々の機関に任せるべきではないか。また、ここで言う「内閣」とは何か。
 「離職後2年間、離職前5年間」の制約について、「離職後2年」は短い。現状では、一定ポスト以上は機関に着目した規制となっているが、この考え方は維持されるのか。
 再就職後の行為規制について、依頼を受ける側に関してはどう考えているのか。刑事訴訟法や公益者通報法など、刑事罰則上、告発する義務は生じるのか。
 公益法人、独立行政法人、特殊法人等への「天下り」規制に関わって、「(職員が)在職していた国の機関等と密接な関係にあるもの」としているが、「機関等」「密接な関係」とはどのような意味か。

【行革推進事務局の回答要旨】
 私どもが担当しているのは国公法の範囲内であり、一般職の公務員への批判に真摯に対応するのが一義的役割だ。地方公務員に対する批判は、国家公務員の新しい制度での対応を踏まえながら、所管庁で議論していただけるものと思っている。
 「渡り鳥」への批判は以前からあり、国から補助金が出ている機関を転々とし、複数回の退職金を受け取る事に対しての批判と考えている。特殊法人は国の財源で賄われているため、「渡り鳥」は原則禁止となり、昨年12月の改正で退職金削減などの措置もあったので、特別高い処遇を受けることはなくなっている。
 公務を最後まで全うすることが望ましいが、俸給構造の問題がある中で、組織の活性化を図らなければならない。退職年齢を引き上げれば、当然、昇格も遅くなってくる。その中で公務の活力を落とさないようにしなければならず、結局は働き方の見直しをしなければならなくなってくる。
 ルール設定の問題で言うと、現在は国公法103条で包括的に人事院に任せているが、私どもはルール設定をもう少し法律で規定すべきではないかと考えている。法律での規定は国民監視の下でのルール設定になるので、透明性も高くなるのではないか。行政がやったから中立性が損なわれるということはない。ここで言う「内閣」については、手続的なことが絡むので詳細は検討中だが、行政全てに責任を持っている内閣がやるべきであると考えている。
 「2年」では短いという意見は記憶にない。職業選択の自由との関係もある。絶対に変えてはいけないとは言わないが、そこは議論ではないか。ポストと機関の関係など、規制の縛りの強弱についても、変えない方向で考えている。下位法令に関わることなので、今後の議論になる。
 行為規制は職員と企業も含めたものであるが、有効性を持たせるためには罰則も必要であると考えている。ただし、働きかけを受けて不正なことをすれば、それは行政の服務の関係で処罰もあるので、公正を図れるのではないか。公益者通報法との関係では、もっと研究をしなければならない。刑事訴訟法との関係では、一般原則に戻ることになる。
 具体的条文はまだ検討中であるが、規制対象となる公益法人等は、基本的には何々省の所管の法人や機関となるのではないか。現行国公法103条の考えと同様である。「密接な関連」とは許認可や契約発受注に加え、補助金が出ている場合なども含まれると思われるが、公務一般ではない。

◆人材登用等にかかわって
→研修を通じて自己研鑽するのが能力主義であり、責任は各省にある。
 ロースクールなど大学院大学が出来るなどの変化に応じた採用試験見直しは、基本的方針として検討することになるのか。採用試験を変更する際の政府と人事院との関係はどうなるのか。
 人材育成における研修制度で「職員の責務」の記載があるが、これはどういう意味か。これまでは通常の職業訓練や求められる技術的研修はOJTの形で基本的に各省が一義的に責任を負っていたが、これが曖昧にならないか。研修の勤務条件性から考えても問題だ。

【行革推進事務局の回答要旨】
 8月の人事院勧告でも触れられていたが、当面は1・2・3種試験のワクは変更しないことで対応し、政府の方針については今後詰めていくことになる。試験を変更する場合には、例えば公務の国際化やIT化に対応した人材が必要との観点で政府が要望し、人事院が具体策を検討することを考えている。
 能力・実績主義は公務員のサービスの質を高めるための制度で、公務員の能力向上について研修で自己研鑽してもらうという考え方でいきたい。責任は各省にあり、実際の研修の効果が上がるようにするのは当然だ。責任は使用者側にあるが、制度的に整理する場合もあり、本人にも責任も求めなければならない。ここにそれほど重たい意味を持たせたわけではない。

◆官民交流にかかわって
 →交流採用者については、あくまでも国公法上の世界で議論する。
 交流元企業との雇用関係が継続している者を交流採用した場合で、交流元企業に労働組合があったときの労使関係などはどのように整理しているのか。例えば、取り決め違反の事案があったらどうするのか。

【行革推進事務局の回答要旨】
 交流採用者については、基本的に交流元企業に籍は残っているが、あくまでも国公法上の世界で議論することになるのではないか。労使関係も国公法上で考えることになるので、職員団体としか交渉はしないことになるだろう。

◆その他事項にかかわって
 →内閣総理大臣の意見申出は、中央人事行政機関の連携強化である。
 内閣総理大臣の人事院への意見申出についてはペンディングとなっているが、人事院の代償性との問題で、もしこれを認めるのであれば、労働組合にも同様の権利を法的に措置すべきである。

【行革推進事務局の回答要旨】
 意見の申出という形ではこれまでなかったが、内閣が一方的に言うのではなく、人事院に図るということであり、むしろこの辺は使用者として一方的にならないための仕組みとなっている。国会へ報告することともなっているし、中央人事行政機関としての内閣総理大臣と人事院が分担で意見を言えるようにするということに過ぎない。あくまでも中央人事行政機関の連携強化の観点で言っているものである。

 最後に小田川書記長は「これまでの交渉で、『質問書』の各項目と、推進事務局が提示した資料に関する説明に対する一通りのやりとりが終えられたことになるが、評価制度の権利性や勤務条件性に関する議論は、依然として不十分なままとなっている。その辺りに焦点を当てて、改めて早期に交渉を行うことを申し入れておく」と強調し、今回の交渉を打ち切りました。

以上