2003年8月1日《No.159》

「関係者との協議が不十分だった」
 反省する行革推進事務局に申し入れ

 国公労連は、本日午後、7月28日に第156回通常国会が閉会し、同国会会期中の「公務員制度改革関連法案」の提出が見送られたことを受けて、改めて行革推進事務局に対し「民主的公務員制度の確立を求める申し入れ」(別添参照)を提出し、今後の誠実対応を求めました。
 これには国公労連から堀口委員長、山瀬副委員長、小田川書記長、岸田書記次長、山谷中執が参加し、推進事務局側は堀江局長、春田室長、高原参事官ほかが対応しました。以下、申し入れの際の概要です。(注;○は国公労連、●は推進事務局)

<堀江局長「上程に至らなかったことを真摯に受け止め考える必要がある」>

 冒頭、堀口委員長は「今国会への『公務員制度改革関連法案』の提出は無かったが、幾つかの点を明らかにしていただきたい。一つには、今国会への関連法案提出に至らなかった経緯について、我々にはその説明を受ける権利があるはずだ。二つめは、法案の提出断念の原因が、労働組合を含む『関係者』との交渉・協議の不十分さにあったとの反省点に立つのであれば、今後、どのようにするつもりなのか。三つ目は、7月に各省に対して非公式に示された法案は、我々には正式に示されていない。誠実に交渉・協議を進めていくとの考えがあるならば、少なくともこれをオープンにして、広く意見を聞くべきではないか。」と、追及しました。
 これに対し堀江局長は、要旨以下のとおり回答しました。
 「法案提出に至らなかった経緯については、前回の交渉の翌週に与党から非公式でいいから法案の最終形のものが見たいとの話があり、示したところ、いろいろな意見や疑問が出された。それまで出されていなかったような意見もあり、自民党からはこのまま国会会期末が迫っている中で提出するのはいかがなものか、もう少し協議が必要なのではないか、との意見が出され、それらを踏まえて、25日に石原大臣から今国会への提出は困難であるとの発表となった。」
 「今後の進め方については、いろいろな意見があって上程に至らなかったことを真摯に受け止めて考える必要がある。関係者との協議が不十分だったということは、与党からも指摘を受けた。それを踏まえて、真摯な気持ちで改めて作業を準備しなければいけないし、労働組合とも十分に協議していきたいと考えている。国会が終わったばかりでどう進めるか具体的な検討はまだ出来ていないが、今後、公務員制度改革を進めるためには何が必要であるか、改めて考えていかなければならないと考えている。」
 「7月の法案について正式対応を受けていないとの指摘であるが、まだ非公式の扱いとなっており、内容について与党からも意見があったので、その扱いは今後考えたい。」

<今後の交渉・協議をどうするつもりなのか、早急に明らかにせよ!>

 局長の回答を受けて、交渉団はさらに次のとおり追及しました。
〇 労働基本権の問題を避けたままでは、交渉・協議は深まらない。それは、ILO勧告をどうふまえるのかという面と、改革の内容からして能力等級制の勤務条件性などの整理が必要という面の、二側面からだ。また、この間の経緯からして十分議論されず生煮えのままにされるものが多すぎる。不誠実な対応と言わざるを得ない。それらを反省したうえで、進め方を改めて考えるのであれば、先ず、何を素材にして議論をするのかはっきりさせなければ深めた議論など出来るわけがない。「大綱」なのか7月2日の法案なのか。また、それはいつ明らかにするのか。
● 非公式に法律案のかたちで示したものは、全く白紙になるとは思っていない。理解していただけなかった点、不十分の指摘を受けた点を含めて検討し、肉付けしていくことになるので、今後の協議も今の法案がベースになるだろう。ただ、各省や与党からの意見もあり、今後検討を重ね、改めて内容を充実させたもので協議したい。大綱をベースにした法案をつくっていくという基本線は変わらないと考えている。実質的な議論が進められるよう努力するし、労働組合にも議論がし易いよう、具体的な法案をお示しして議論を深めるようにしたい。具体的な成果物をいつ頃示せるかについては、今の段階では答えられない。

 これらのやりとりを受けて、交渉団は「7月の非公式法案をベースにするというのなら、明日からでも出来るはずだ。関係者との協議が不十分であったとの反省点に立つのであれば、各省からの意見を今後どう活かしていくのか明らかにすれば、労使間の協議では十分だ。我々は完成物を求めているのではない。石原大臣も『関係者との十分な協議を求めていく』と記者会見で話している。今後の進め方について、来週早々にも明らかにするよう、強く求めておく」と述べ、申し入れを終えました。                                     

 以 上


【 別紙 】
2003年8月1日

行政改革推進本部長  小 泉 純一郎 殿
行革担当大臣  石 原 伸 晃 殿

 日本国家公務員労働組合連合会
 中央執行委員長  堀 口 士 郎

民主的公務員制度の確立を求める申し入れ


 去る7月28日に第156回通常国会が閉会し、同国会会期中の公務員制度改革関連法案の提出は見送られることになりました。その最大の理由が、労働組合をはじめ関係者との協議の不十分さにあるものと考えます。
 国公労連と、行革推進事務局との交渉・協議の経過に照らしても、その点は明白です。「見切り発車はしない」「国家公務員法第108条の5に準じて誠実に交渉に応ずる」としながら、3月28日の「論点」にかかわって交渉・協議を継続していた7月2日の段階で、法案の「非公式協議」を各省との間で開始したことや、労使協議をうち切って閣議決定を行おうとしたことなど、不誠実な対応をとり続けたことは明らかな事実です。
 そのような不誠実な交渉・協議とも関連して、ILO二度の「勧告」もふまえた公務員制度改革をもとめる国公労連の要求が無視され続けたことも問題です。「公務員制度改革大綱」での「労働基本権制約の現状維持」とする決定の見直しが必要であるにもかかわらず、その点での深めた交渉を避け続けたことが、「関係者との協議」を不十分なものとしたことは明白です。
 しかも、内閣・各府省の人事管理権限を強化する「改革案」を検討しながら、労働基本権問題での開かれた論議を回避し続けたことが、事態をより混乱させたことも指摘せざるを得ません。
 また、公務員制度改革の目玉とされた能力等級制度について、制度の詳細が全て下位法令に委任され、かつ具体的な制度内容の「説明」も行わないまま法案決定を行おうとしたことも、見過ごすことのできない問題です。
 7月29日の記者会見で、石原行革担当大臣が述べているように、政府には「関係者の理解を得るという作業」に全力をあげることが求められています。そのことは、前述したいくつかの問題点にかかわって、推進事務局としての整理が必要であり、真の意味での「誠実な交渉・協議」の具体化が求められていると考えます。
 以上のことから、国公労連としてあらためて下記の点を申し入れ、貴職の誠意ある対応を求めます。

                   

(1)各省との非公式協議の対象とした「公務員制度改革関連法案」及び「大綱」での「労働基本権制約の現状維持」とする決定を撤回し、ILO勧告をふまえた制度改革にむけた交渉・協議を早期に開始すること。

(2)公務員制度改革については、2003年中の「法案決定」とする「大綱」決定にこだわることなく、国公労連との交渉・協議をつくすこと。
 また、従来の「密室作業」の姿勢をあらため、広範な意見を集約して改革作業を進めること。

以上


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