2002年10月23日《No.114》

◇公務員制度改革で推進事務局に申し入れ◇
「能力等級制度」の撤廃を強く要求

 国公労連は本日(23日)午後、行革推進事務局に対し、さる9月24日に示された「一般の行政職員以外の職員に対する新人事制度の適用について」を受けて、「公務員制度改革にかかわる申し入れ」(別紙参照)を提出しました。国公労連側は堀口委員長を責任者に5名が参加、事務局側は春田室長らが対応しました。やりとりの概要は以下のとおりです。(注;○は国公労連、●は推進事務局)

【国公労連の主張】
 今回の申し入れにあたり、堀口委員長は、「国公労連は能力等級制度の導入は公務の人事管理の基準として適当でないと主張してきたが、9月24日の一般行政職以外についての検討案では、その問題点が浮き彫りになった。歴史的だという公務員制度改革なら、人事管理や権利問題だけでなく、行政のあり方にもかかわるだけに、スケジュールにこだわらず、時間をかけた協議と関係方面の意見聴取に努めるべきだ」と主張しました。
 それを踏まえ、小田川書記長は、申し入れの主旨について以下の点を主張しました。
○ 一部の企画立案業務を念頭におく能力等級制度を50万国公労働者全体に適用することは困難と主張してきたことは、行政職以外の検討案をみて改めて明らかになった。専門行政職の能力等級表では30数名しかいない航空事故調査官が一つの表になっている。それなら、行政職でも労働基準監督官や更生保護観察官などの専門的職種が行政職に一本化されているのは矛盾だ。結局(能力等級の格付けには)職務分類に基づく検討が必要だということを示す結果になっている。
○ 業績評価は職種による違いを考慮するとあるのは、任用や給与の決定にかかわる共通制度の必要性との関係で疑問を感じる。その違いを認めれば、給与の弾力性も生じる。だとすれば、労働条件決定における制約も再検討すべきだ。
○ 結局、能力等級は現在の無定量な働き方や超過勤務などを助長するなど、現状を追認・固定化するものにほかならない。能力等級制度がすべての職種に適用できるということになれば、国公法改正の将来課題までつみ取られかねない。

【推進事務局の回答要旨】
 これに対し、室長は要旨以下のように回答しました。
● 今回の公務員制度改革と新人事制度の中で、能力等級制度は中心概念として形作る必要があり、一番基本的な部分に対する問題指摘と受け止める。2次原案や行政職以外の人事制度の案を通じて理解が深まればと考えていたが、本日の申し入れは率直にいって残念だ。
● 一般行政職以外の人事制度案については、それぞれの職種ごとに能力等級表をより現実的に仕事の内容に応じて設定した。それぞれの職種の性格に応じて分けることが能力等級の理解にもつながるものと考え、イメージとして示したものだ。
● 一般行政職でも監督官や観察官など専門職的な部分があるという指摘だが、現在でも行(一)に多くの職種がある。その中で、どう仕事のグループとして能力等級的にみることができるか、表を分けないとだめか、という議論をして、一つの形にまとめた。どう使うかはあるが、一つで対応できると考えた。その点で、具体的な意見があるところは、工夫が必要だ(運用をにらみながら)という問題意識はある。だからといって、能力等級が成り立たないとはいえない。
● 評価制度については、定型業務の比重が高いとか、形式的な業務量や処理件数を目標設定とすることが適当でない職種には工夫しなければならないとした。しかし、それは仕事の中身に応じて目標設定をどう考えるかの問題であり、評価制度の問題ではない。給与への反映も、額の適用まで多様化につながるものではない。
● 現状の追認につながるという指摘だが、例えば、幹部の集中育成策でも、1種だけを対象にするのでなく、1種でも不適格なものは降りてもらうことになる。最初の試験だけで処遇が異なることに対しては、明確に対応を固める必要がある。超勤問題は働く環境として一番重要と考えている。今回も、管理職への意識改革(時間管理の徹底)、前提としての業務の見直し(国会業務、予算、組織の仕事を含め)が必要と述べている。広い意味で公務員制度の改革に含めて対応すべきと考えている。事務局も、内閣官房に設けられた組織として、この機会に成果が出る取り組みを考えたい。
● 公務員制度改革大綱の撤回要求だが、能力等級制度による新人事制度はリジッドなものというより、他職種も含めて弾力的に運用する努力を尽くす。また、法律にどう書くかについても組合と相談しながら進めて行きたい。

【主なやりとり】
 この回答に対し、小田川書記長は、さらに次の点を再度主張しました。(1)行政職は多くの職種を網羅したもの。その中から専門行政職などが分離した。今回の能力等級表でこうした職種間のバランス(均衡)をどう考えたのか。だれが決定するかも未定なままだ。(2)評価は多様だが、給与は一本で公平な処遇になるのか。(3)能力等級制度では職務範囲や責任が曖昧になりかねず、超過勤務縮減などと矛盾するのではないか。(4)組合と事務局の考え方が未だに距離が遠いのは、行政職で説明された新人事制度を個別職種に当てはめるとどうなるか、というイメージがつかめないためだ。
 これに対し、春田室長は、次のように再回答しました。
● 専門行政職成立の経緯は認識しているが、仕事の性格が異なる部分があり別俸給表になっているので、それを踏まえた検討が必要だ。行政職については、仕事に応じた適用がどうなるかは、まさにこれから詰める話で、その作業を並行的にやっているところだ。行政職でも専門的職種、調整的なあるいは特定分野の行政を推進するものもあり、それぞれ仕事の仕方が違う。その中で、どういう共通制度で位置づけられるか、能力等級表や能力等級基準でどう設定するかはあるが、まだ決着していない。その具体化は並行して議論中であり、まだ結論が出たものではない。
 その他の職種についても、職種ごとに能力等級を分かりやすくするため、能力等級基準の設定にあたって議論を深めるべき部分はあるが、おおよそこれでどうかという議論をへて、イメージを示した。
● 評価における職種間の不均衡については、ご指摘の点は理解するが、職種の違いで処遇が違うことにはならない。違いは目標の設定の仕方であり、官房の会計課と原局の担当課とでは目標は同じにはならない。また、定量的ではないにせよ、それなりに求められる目標をもち、それが達成できたかどうかを確認することは大事だ。それは処遇にすぐ跳ね返る議論ではない。
● 超勤問題への懸念だが、能力等級への当てはめで仕事の範囲が変わるものではない。その組織がどういうことを達成すべきかという組織目標、それに応じて役回りから組織の中の目標も決まるとすれば、どこまでできたかをきちんとフォローし業績評価にもつなげる。それによって、今は無定量でどこまでやるか曖昧だが、相当程度改善につながると思う。ただし、それにしても、今日はこれだけやればよいと言うわけにはいかず、それが超勤縮減と直結するかどうかは難しい。公務員制度改革とは別にも取り上げるべき重大課題という指摘はその通りだ。

 最後に国公労連側は、「能力に応じて仕事につけるという仕組みは、仕事の弾力性、流動性や超勤問題につながりかねない。民間でも成果の出やすいものが高く評価されるという問題も生じている」などと指摘した上で、他職種の能力等級表のイメージも検討段階であり、行政職についても職種ごと検討の余地が残されていることを確認したうえで、「新制度の現場での具体化を考えると、多くの疑問を感ぜざるをえないし、結局のところ新能力等級制度は公務になじむのかということに帰着する」と発言し、今後ともスケジュールにとらわれることなく十分な交渉、協議を求めました。

(以 上)

(別 紙)

2002年10月23日

 行革担当大臣
  石 原 伸 晃  殿

日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長  堀 口 士 郎

公務員制度改革にかかわる申し入れ

 昨年12月の「公務員制度改革大綱」やそれ以降の経過からして、現在、政府・行革推進事務局における国家公務員法などの「改正」作業が一定の段階にいたっていると承知します。9月24日に、同事務局が「一般の行政職員以外の職員に対する新人事制度の適用について」とする文書を国公労連に提示してきたことも、検討の段階が進んでいることを確認させるものでした。
 その文書の提示をうけ、改めて次の点を申し入れます。公務員制度改革に関わる国公労連との交渉・協議を尽くされるよう求めます。

 1 公務員制度「改革」の中心的な位置づけがなされている「能力等級制度」は、多様な職種が存在すると同時に、組織や人員などが厳格に管理される国家行政組織の人事管理の基準として適当であるとは考えられません。
 一般の行政職員以外の職員での能力等級制度適用の「イメージ」をみる限り、公務員制度では、職務と職責に着目した「分類」の仕組みの検討が必要です。

 (1)国公労連は、この間、今回の公務員制度改革の中心に位置づけられる能力等級制度の導入は、国家公務員が従事する一部の業務、もしくは、その一部の業務に「優先的」に従事する一部職員に焦点をおいた人事管理システムの構築にほかならず、非現業国家公務員50万人に共通する人事管理の「基準」としては不適当とする立場から、推進事務局に対して、疑問点の解明をもとめ問題指摘をおこなってきました。
 (2)先般明らかにされた「一般の行政職以外の職員に対する新人事制度の適用について」では、例えば、現行では行政職(二)表に区分される職種について、電話交換手、自動車運転手など四つの職種に分類してそれぞれに能力等級表を設定することや、現行では公安職(二)表に区分される職種について、検察事務官、公安調査官、海上保安官など五つの職種に分類し、それぞれについて組織区分をもうけた能力等級表を設定することが「イメージ」として提起されています。さらに、現行では専門行政職表に区分される職種について、10の職種に細分化した能力等級表のイメージを示していますが、その結果、数十人単位の能力等級表が生じることになります。職務の違いに着目した結果だと受けとめざるをえません。
 (3)行政職の能力等級制度では、「職務中心の人事管理の発想を転換」することや、「各府省共通の能力等級表の策定」が強調され、「個別の職務と等級との関係を詳細に定めるのではなく、職務を簡明な基準により大括りに区分」するとされています。このことと、一般の行政職以外の職種での能力等級表設計の基本的な考え方には違いがあると受けとめざるをえません。
 約20万人の「一般の行政職員」の中には、各府省共通の事務にたずさわる職員だけではなく、明確に区分された行政分野での「専門家」として働く職員も少なくありません。現状でも、行政実施の第1線に、専門職(専門官)が相当数配置されていることが、そのことを実証しています。これらの専門職(専門官)について、一般の行政職員と同様の「能力等級表」や「職務遂行能力基準」を適用できるのか、国公労連はその点をくり返し糾しましたが、事務局からの明確な答弁はありません。
 「一般の行政職員以外の職員」についての能力等級表のありかたをみる限り、それらの専門職についても、それぞれの職務毎に能力等級表などを設定することが現実的だと考えられなくもありません。
 (4)以上の点から明らかになってきていることは、多様な職務が存在する行政第1線の職員に着目すれば、その専門性をたかめることを中心の目的とする人事管理の検討が必要だと点だと考えます。職務との関係を曖昧にし、抽象的な「能力」の向上に目的をおいた人事管理は、長期的、安定的、民主的な行政サービス提供の目的とも一致をしないものと考えます。


 2 評価制度の違いを認めながら、同一の給与制度を適用することは、公正な人事管理とは言えません。職務の違いから、異なる評価制度を構想する以上、給与制度の「多様化」もしくは「弾力化」は避けがたくなります。
 仮に、給与制度の「多様化」などが確認されるとすれば、「労働基本権制約は現状維持」とする結論にも影響するのではないでしょうか。

 (1)能力等級制度は、「任用、給与、評価の基準」とされています。そのことを前提に、例えば給与制度での基本給は、能力等級毎の「定額部分」と業績を反映する「加算部分」で構成することや、業績を反映する業績給も提案されているところです。これらの給与制度の内容は、国家公務員全体に共通するものだと考えます。
 しかし、一般の行政職以外の職種では、「定型的な業務の比重が高いなど目標設定が容易でない職種」等について目標管理によらない業績評価制度の検討の余地に言及しています。職務遂行能能力基準もふまえ、組織目標にそった業務目標を設定し、その達成度を給与に反映させる能力等級制度や業績評価制度が、行政実施部門には適さないと国公労連は考えますが、今回の提案は、そのことの一端を推進事務局が認めたものと受けとめます。
 職種による能力等級制度の基本的な考え方が異なることや、評価制度の違いが考えられる以上、能力等級制度や評価制度と給与制度との「直結」ができるのか、はなはだ疑問です。
 (2)かりに、評価基準や評価方法が異なるのにもかかわらず、同一の給与制度で運用しようとすれば、それは職種間の労働条件の公平性を損なうことになりかねません。一方、評価制度の違いを反映した「多様性」を給与制度に組み込むとすれば、それは最終的な人事管理をおこなう各府省段階での労働条件決定の余地を拡大することになり、労働基本権にかかわるあらたな課題を提起することになると考えます。

 3 各府省や職種あるいは採用試験別の現状の人事管理を追認し「制度化」するための「改革」であるならば、国家公務員法「改正」の必要性が疑われることになります。現状の人事管理の問題点をふまえた改善方向での検討をおこなうべきです。

 この間、新人事制度原案(2次)をめぐって、国公労連は推進事務局との交渉・協議をくり返してきました。しかし、国公労連が提起する諸問題についての明確な回答もないまま今日に至っています。むしろ、議論をおこなえばおこなうほど、「新人事制度原案2次」の内容は、現状の公務の人事管理の運用実態を「追認」し、固定化する方向で検討されているとしか思えません。
 1種採用者のみを優遇する人事管理のもとで生じている省庁間、機関間、職種間、男女間などの格差は、公務における人事管理の負の部分として改革が求められる現実の課題です。職務の範囲や責任が不明確なままで、「無定量」ともいえる超過勤務の縮減は、働くものの「いのち」にかかわる喫緊の改善課題としての抜本的検討が求められています。
 しかし、この間の交渉・協議で明らかになっていることは、公務の格差の解消が今回の公務員制度「改革」では対象となっていないことであり、むしろ「無定量」な超過勤務などは能力等級制のもとで一層深刻となる危惧があるという否定的な側面が鮮明になるばかりです。このような「改革」には、到底賛成できるものではありません。

 4 以上、この間の交渉・協議の経過もふまえれば、あらたに提起された一般の行政職以外の職員への新人事制度の適用内容は「能力等級制度は国家公務員の人事管理制度の基本となり得ない」とすることを指し示していると考えます。そのことから、あらためて「公務員制度改革大綱」の撤回・修正を申し入れるものです。

以 上


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