憲法に守られた戦後60年、いま描く東京大空襲
長編アニメ映画「ガラスのうさぎ」/監督・四分一節子さんにインタビュー

  太平洋戦争末期、東京大空襲で両親と二人の妹を失った少女の体験をつづった児童書「ガラスのうさぎ」がアニメ映画化され、近く全国で上映される。原作本は1979年に出版され、これまで210万部が発行されてきたが、アニメ化は初めて。その監督という大役を担った。
 原作の高木敏子さんは、本の内容が十分に表現できないとして、これまでアニメ化を拒みつづけてきた。しかし、自身の二人の孫から、東京大空襲の話を聞いても想像できないと言われ、今の子どもに伝える一つの手段として、アニメ化を承認したという。
 「高木先生からアニメ化の許可をいただいて、思いがけず、うれしかった。私自身、直接戦争の記憶がないから、自分の息子に伝えようと思ってもなかなか伝えにくい。目に見える形で子どもにわかってもらえる作品にしたかった」
 過去の戦争をどう現代的な視点で問い直し、今の子どもたちに伝えるかも大きなテーマだった。戦後、主人公・敏子は悲惨な戦争の上にかち得た日本国憲法に出合い、平和を希求する心を強くする。アニメでは原作をより膨らませた。戦後の焼け野原の青空学校で、当時の文部省が作った副読本「新しい憲法のはなし」を学ぶ子どもたちの様子などを描いた。
 「こんな副読本が出ていたなんて私自身知らなかった。読んでみて、文章のすばらしさに感動し、すぐにそのシーンが広がった」
 制作に着手したのが2年前。世界では、米国がイラク戦争を始めていた。
 「家に帰ってテレビをつけると、バグダッドの街が攻撃される様子が映し出されて。爆弾の下で敏子と同じ悲劇が繰り返されているだろうな、と」
 その後も、日本政府が自衛隊派遣を決め、改憲に向けた動きが盛んになる中での映像づくり。
 「あっという間に自衛隊派兵が決まって、いきなり戦争が身近になった気がした。この60年間、私たちは憲法に守られてきたんだと、改めて実感した。改憲でも護憲でも、国民が真剣に考えて決めていくべきこと。映画を通じて、子どもに少しでも憲法に興味を持ってもらえたら」

◇四分一節子(しぶいち・せつこ)
 1944年生まれ。96年「賢治のトランク」で初の長編アニメの監督を務める。沖縄戦を描いた「白旗の少女」、広島原爆を描いた「真っ黒なお弁当箱」などの制作に参加している。

【きかんし(株)あたごくらぶ/戦後60周年シリーズ企画】


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