憲法ニュース 2005年8月9日《No7》

●9500人の熱気!
   感動広げた「九条の会」有明講演会

地域、分野別の「九条の会」3000突破!
 7月30日、「九条の会・有明講演会」が開かれ、9500人の参加者が有明コロシアムを埋めました。開会30分前からは、クラシックギターの第一人者・荘村清志さんが心にしみいるギター演奏で参加者を歓迎しました。
 午後1時30分、講演会は事務局の小森陽一(東京大学教授)、渡辺治(一橋大学教授)両氏の司会で開始されました。最初に、発足以来この1年間の「九条の会」の活動が報告されるとともに、「九条の会アピール」に応えた地域・分野別の「会」が1年余で3000を突破し、3026に達したことが発表されました。なかでも、北海道、神奈川、大阪、京都はそれぞれ200を突破しています。

熱弁に共感の拍手! 時には爆笑!
 最初に講演した三木睦子さん(三木武夫記念館館長)は、「九条が危ない、と燃えたぎるような気持ちでやってきた」と切り出し、「みんなで戦争を拒否すれば、平和をもたらせられる」とよびかけました。
 つづいて鶴見俊輔さん(哲学者)が、『もうろくの春』という本を出版したことを紹介し、「私は自分のもうろくを盾として戦争に反対しつづける」と宣言。
 小田実さん(作家)は、かつて、中国の孫文が日本に対し軍事力による覇道をめざすのか、道義による王道をめざすのかと問いかけたことを紹介し、「世界の人々、アジアの人々がわれわれを信頼するのは平和憲法があるからで、このことを深く考えるべき時期にきた」と語りました。
 奥平康弘さん(憲法研究者)は、国会の憲法調査会の論議に触れながら、9条1項を残すから平和主義は変わらないとの論議を批判し、「憲法9条1項は、戦力を保持しない2項と結びついて意味をもつので、2項を欠いた1項は抜け殻」と指摘しました。
 大江健三郎さん(作家)は、「求めるなら助けは来る、しかし決して君の知らない方法で」という友人の詩の一部を紹介し、若い人たちが、自分たち古い世代の知らなかった形でこの国に変化をもたらすことへの期待を表明しました。
 最後に井上ひさしさんが、敗戦時の男子の平均寿命が24歳だったことを紹介しつつ、「自分の運命は自分で決める、と頑張れば世界的な動きになって奇跡がおこるかもしれない。私もそうした奇跡に人生をかけたい」と結びました。
 なお、この日は帯広の講演会の先約があり欠席した澤地久枝さん(作家)がビデオをつうじ、「私たちは賢くなって勉強することを求められています。あきらめないでやっていきたい」とのメッセージを寄せました。
 それぞれの持ち味に、気迫を込め、時にはユーモアをまじえながらの話に、会場はしばしば共感の拍手がおこり、爆笑でわきかえる場面もありました。
海外のマスコミも注目
 「有明会講演会」は多くのマスコミも注目し、「朝日」「読売」「毎日」「共同通信」や、「東京」「埼玉」「神戸」などの地方紙、NHK、TBSテレビなど国内のマスコミが報道。イギリスBBC、アメリカVOA、韓国KBS、AP通信、AFP通信など海外のマスコミも取材に訪れました。
(「九条の会」第48号より転載)

「九条の会」の行動提起
  「九条の会」事務局は、講演会終了後、以下4点の行動提起を行ないました。
■「九条の会」アピールに賛同し広範な人びとが参加する「会」を、全国の市区町村、学区、職場、学校につくり、さらに広げましょう
■相互に情報や経験を交流しあうネットワークを広げ、全国的な交流集会の開催をめざしましょう
■大小無数の学習会を開き、日本国憲法9条の意義を学び、改憲キャンペーンをはね返しましょう
■私たち一人ひとりが、ポスター、ワッペン、署名、意見広告、地元選出の政治家・影響力をもつ人々や、マスコミへのハガキ運動など、9条改憲に反対する意思を、さまざまな形で表明し、大きな世論をつくりだしましょう


「平和とは日常の生活を守ること」
   −講演会後、全税関の仲間で9条を語り合う−

 【全税関発】「全税関憲法改悪阻止闘争本部」は、税関職場の仲間に「九条の会・有明講演会」での積極参加を呼びかけました。講演会終了後、会場近くで交流。「北朝鮮が攻めてきたらどうするのか」との率直な意見を皮きりに、さまざまな意見・感想を出し合いました。
○「平和」という言葉が今、特に若い人の中でしっくりとらえられていない「日常の生活を守ることが平和を守ること」と講師が話されたがまさにそうだと思う。
○アメリカには1300程の市があり、その市長の60%が「アメリカも核はいらない」とアンケートに回答していると話された。アメリカでさえ、そうなっていることを初めて知らされた。
○講師のみなさんは年老いた方が多かったが、「やらなければ!」という気迫と、「若い人に伝えなくては」との思いに感動した。
○悲惨な戦争を「美化」している人たちもいる中、9条の重要性をもっと広げる必要性がある。
○朝、9条の集会に行ってくると言ったら、次女は「9条ってなんだっけ」と言ったが、「戦争放棄でしょ」と長女が言ってくれた。
○大江さんの「求めるなら、変化する」という感動的な表現が印象的だった。
○6人の講師の話しを聞いて、私も自分の考えを話せる場がほしいと思った。  …などなど。
 「九条の会」講演会をきっかけに、憲法を語り合い、平和、日常の生活を守るために、9条を守るための努力をしよう!と意気盛んな交流会になりました。


「戦争する国」への転換は許さない
   −「国公退職者9条の会」賛同署名者321名に−
 【国公退職者9条の会発】今年4月、国公退職者85人が呼びかけ人となり、「長年にわたり、『憲法尊重擁護の義務』を持ち、『憲法を職場と行政に生かす』ことを国公産別運動の基本にすえてたたかってきた国公労働者として、改憲の動きを見過ごし、憲法9条『改悪』を中心にした日本を『戦争する国』への転換を許すわけにはいかない」との立場から、「『九条の会』に賛同する国公退職者の会(略称:国公退職者9条の会)」を発足させました。
 そして、「改憲」反対の国民世論づくりの一翼を担うため、「九条の会」のアピールへの賛同者を募るため、各級機関のOB役職員を対象にした「氏名公表賛同署名」と、国公退職者とその家族、現役の組合員・職員を含む友人・知人等を対象にした「賛同署名」の2種類の署名をとりくんでいます。
 賛同署名は、7月末日現在、氏名公表賛同者148人、賛同署名者173人、合計321人の到達状況になっています。このとりくみは、各単組・各級機関の退職者の会、各単組本部・各級機関、各ブロック・県国公に協力を要請してきましたが、退職者個人はもとより、全法務、全運輸の地方・職場組織から賛同署名が送られてくるなど、徐々に広がりを見せはじめています。この運動を支えるための「賛同カンバ」も、これまで92の個人・団体から30万円を超える額が寄せられています。
 自民党は8月1日に「改憲草案第一次案」を発表し、11月党大会にむけて議論を加速させようとしているなど、改憲にむけての動きがいっそう強まるなか、「改憲」反対の世論を大きく広げるため、各退職者の会、単組、ブロック・県国公の協力を得ながら、引き続き、「賛同署名」推進・前進をめざして奮闘します。ぜひ各地でご協力下さい。  


憲法学習会と「語り部隊」を一体で
   −沖縄県国公の9条改悪反対のとりくみ−
 【沖縄県国公発】沖縄県国公は6月29日、国公労連の提起する「憲法遵守宣言職場」である全運輸の会議室で憲法9条学習会を開催し、80名が参加しました。
 沖縄県国公は、憲法闘争を進める前段として、執行委員・組合員学習を強く呼びかけ、その上に、「憲法遵守職場宣言運動」と「憲法9条改悪反対」のたたかい強化を提起しています。
 また、沖縄県国公は、「平和・民主・革新の日本をめざす沖縄の会」の主催する「沖縄から憲法を考える連続講座」【第1回(7/16)〜第10回(10/8)】に積極的に参加しています。
 さらに、組合員の憲法学習を積み重ねるため、第2段階として、「語り部隊」の結成を進めることとしています。
 そして、この沖縄から、改憲の矛盾と「軍隊とはどういうものか」を伝えることが、私たちの重要な責務と認識し、憲法改悪阻止闘争をがんばっていきます。
 第二次世界大戦で沖縄県民「4人の1人」の尊い命が犠牲になった沖縄戦。戦争で残るのは深い悲しみと憎しみ、そして米軍基地による住民被害です。
 「命ど宝」(ぬちどたから)「平和への願い」を、この沖縄から発信し続けていきます。

◆自民党が改憲条文案公表
   9条を改悪し「自衛軍」を保持  戦争放棄も削除

 自民党の新憲法起草委員会(委員長・森喜朗前首相)は8月1日、「自衛軍」を保持を明記するなど九条を全面改悪する「新憲法第一次案」を発表しました。前文案については見送り、「国民の責務」などは、検討課題としています。一次案をもとに、11月の大会で公表する改憲草案に向け大詰めの作業が続けられることになります。
 同案は、7月7日に決定された「起草委員会要綱」に基づいて条文化されたもので、環境権など新しい権利の追加などについてはさらに議論を深めるとともに、第9条は今後起草される前文に合わせて表現を整えていく方針とされています。自民党は今後さらに同案について意見交換を行い、全国でタウンミーティングを開き、国民の幅広い声を集約した新憲法草案の作成をめざすとしています。
 「案」では、9条1項(戦争放棄)の「戦争放棄」という表現そのものをタイトルからも条文からも削除し、「戦争その他の武力の行使…を永久に行わない」と書き換え、戦争を放棄した現行憲法の平和主義を全面的に否定しています。
 9条2項の「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」を削除し、新たに「侵略から我が国を防衛し、国家の平和及び独立並びに国民の安全を確保するため、自衛軍を保持する」と明記しています。また、自衛軍が「自衛」活動のほか、「国際貢献」や「秩序維持」の活動を行うと規定し、海外での武力行使に道を開いています。
 国民の権利については、「自由及び権利には責任が伴う」「公益及び公の秩序に反しないように自由を享受し、権利を行使する責任を負う」と規定し、内閣が定める政令でも「法律の委任」があれば権利制限できる仕組みです。「公益や公の秩序」が個人の人権より優先するという考えを打ち出しています。
 信教の自由(20条)に関連し、国の宗教的活動の禁止については、「社会的儀礼の範囲内にある場合」を除外すると緩和し、「靖国参拝」も可能にしています。
 憲法改正の要件を、現行の衆参各議院の3分の2以上の賛成から、過半数の賛成に緩和し、今後の改憲を容易にすることを狙っています。 (「共同センターニュース」No.44より転送)
【自民・新憲法第1次案の9条改悪に関わるポイント】
●第2章「戦争の放棄」のタイトルを「安全保障」に書き換える。
●9条1項の「戦争放棄」の文言を削り、「行わない」に書き換える。
●9条2項(戦力不保持、交戦権の否認)を全面削除し、「自衛軍の保持」を明記。
●自衛軍の項目を新設
 (1)「我が国を防衛」する「自衛軍」を保持、
 (2)自衛軍は、国際協調の活動(海外派兵)を行なうことができる、「公共の秩序の維持」 (治安出動)を行う、
 (3)法令、国際法の遵守、
 (4)自衛軍の組織、運営は法律で定める、
 (5)「自衛軍」は内閣総理大臣の指揮監督に服する。「自衛軍の統制」は法律で定める。
●司法(第6章)に「軍事裁判所」の設置を明記。
※「自民党新憲法第一次案」の全文は、自民党のホームページで公開されています(自民党案と現行憲法条文との対比も)。国公労連の憲法ホームページにも掲載する予定です。


〜特別ルポ〜
     「戦争神社」(ニューヨークタイムズ)といわれる実態は?

「やむにやまれぬ戦い」と侵略戦争を肯定
    −全税関が「靖国神社見学会」−


 7月16日(土)、全税関は参加者を募って、靖国神社の見学会を行いました。小泉首相の靖国参拝はいま、国内外の注目を浴びています。それは戦争・戦力を放棄した憲法9条を「戦争ができる国」に変えようとする動きと関連があるためです。
 この見学会は、その靖国神社に直接足を運び、「この目」で観てみることを目的に企画したものです。
 靖国神社は丁度「御霊(みたま)祭り」でにぎわっていました。高さ7・8メートルに立ち並ぶ提灯の中で、「靖国参拝をすすめる国会議員の会」がひときわ目をひきました。賛同する議員の名前が書かれた提灯がずらりと並んでおり、小泉首相の名前もありました。
 靖国神社は明治2年、明治天皇により創建。明治・大正・昭和の天皇制のもとでの戦争で、天皇のために斃れた軍人を祀っているところです。金色の菊の紋章が大きく目に入ります。
 また、敷地内に併設された遊就館は、「明治15年、英霊の武勲、遺徳を顕彰するため作られた軍事博物館」とのことですが、玄関ホールには旧日本軍の戦闘機が飾られ、展示室には軍歌が流される中、人間魚雷「回転」や戦車、大砲なども展示されています。
 そこには、2千万人ものアジアの人々の命を奪った侵略戦争への反省や、戦争の悲惨さを訴えるものはありませんでした。
 逆に、日清・日露戦争から太平洋戦争まで日本の行った戦争は「自存自衛」の戦争であり、白人(欧米)の支配から「アジアを解放」するための「正しい戦争だった」との立場から戦争の歴史を紹介しているのです。
 小泉首相は靖国参拝への各国の非難に対して「二度と戦争をしないようにとの気持ちで参拝している」と強弁していますが、靖国神社は、天皇のため死んだ軍人を「英霊」としてたたえ、世界と相容れぬ戦争観を主張しているのであり、「不戦の気持ち」に相応しい場所とは、とても思えません。欧米各紙が「戦争神社」と批判し、中国や韓国の人々が首相の靖国参拝を「憤る気持ち」が良くわかりました。
 見学後交流会を行い、参加者一人ひとりから感想を話してもらいました。
 「2・3回来たことがある。何か変わったように感じた」「戦争の悲惨さは一つも展示されていない」「日中関係のところで中国人のカップルがじっと見ていた。首を傾げていた。何を感じていたのか知りたかった」「感想書き込みノートを覗いてみた。感動したと書いている人、戦争はしてほしくないと書いている人、それぞれがあった」「外国人がいっぱい来ているのにびっくりした」「これは小泉首相が言うような普通の戦死者の追悼施設じゃない」などの感想が話されました。

 最後に、「いま本屋さんに行くと、新しい歴史教科書をつくる会の推進学者たちの本が目立つように置いてある。靖国神社を参拝する議員の会の動き、歴史教科書をめぐる動き、教育現場での君が代・日の丸強制の動き、憲法改悪の動き…。今日の見学を一つの契機にして見る目を肥していこう」ということで、見学会を終わりました。
 広島・長崎への被爆60年の今年も8月を迎えました。一人ひとりが戦争と平和を考える月です。
(「全税関新聞1749号より転載)

★憲法改悪阻止に向けた単組・県国公の様々なとりくみ(署名行動や学習会など)のメール通信やFAXをお寄せください。次号は9月9日発行予定です!
以 上

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