2002年9月25日《No.108》
「新人事制度2次原案」の推進事務局交渉(5)
「絶対評価の相対化」の矛盾を追及

 国公労連は、9月18日に行政改革推進事務局と「行政職に関する新人事制度の2次原案」の内容にかかわる、5回目の交渉を行いました。今回の交渉は、2次原案の「評価制度」について、引き続き問題点を追及し、推進事務局の考えを質したものです。交渉には、国公労連から山瀬副委員長、小田川書記長ほか4名が参加、推進事務局は山際企画官、吉牟田企画官ほかが対応しました。交渉の内容は以下のとおりです。(○:国公側、●:推進事務局側)

【絶対評価か相対評価か】
○ 評価の活用にかかわり、2次原案の35頁の「(8)評価段階の決定等」では「絶対評価を基本として行う」とある。任用の場合は相対評価を基本としているが、相互の関連はどのようになるのか。

● 能力評価そのものは絶対評価で行う。能力等級は、能力評価の結果が格付けの重要な要素になるが、昇格についての制約がある。また、能力等級の格付けの判断要素は能力評価の結果のみというわけではない。

○ 能力評価で最高ランクに評価された者が相当数いるが人員枠の空きは1つしかない場合、選抜するのにどういう要素を加味して行うのか。

● 個別具体的なケースになるが、いずれも特定の昇格ポストというのは、特定の性格のあるポストだから、その下のレベルの能力評価の際に、その5人が同じ最高ランクの評価を受けているとしても、5人が全く同じ適性があるとは考えられない。それは個別具体的に検討することにならざるを得ない。

○ 最終的に昇格という任用が起きる場合、個別の職務の適性が重要な判断要素になると、能力等級制とはいったい何かということに戻る。これまでとどう違うのか。

● 適性だけが重要な判断要素というわけではない。

○ 能力等級制は、昇格と職務への任用が同時に発生するが、職務の適性以前の問題として、二重の評価をすることになるのではないか。従来は個別職務への適性ということで説明がつく。結果的には、評価は評価ということだけで止まるのならわかるが。

● それでは意味がない。

【昇格候補者の選抜方法】
○ 別の評価なり総合的な評価で決まるとすれば、それは能力評価をしたにすぎないのではないか。あるいは候補者の選抜ということか。

● そうだ。標準以下の評価では、昇格の候補者にならない。最高ランクの能力評価を受けた者は候補者になる。それがすべてで昇格が決まるわけではない。

○ そこから先はどういう仕組みか。絶対評価と相対評価の仕組みは。

● そこは評価そのものから脇に出てしまうので、的確に答えきれないかもしれない。能力評価の重要度に比べて、それ以外がもっと重要といっているわけではないが、上位のポストへの昇格は、場合によっては、業務評価なども使って総合的に判断することになる。

○ 昇格すると、最終的には処遇が問題なのであって、その基準や手続きが曖昧になればなるほど不満が出る。一方、多面で幅広で、しかもこれまでとは違う業務評価、能力評価を多大なるコストをかけてしながら、曖昧に決定されるということでは、評価制度を信頼できないということだ。

○ 次に、総合的な要素とは何か。もっとキチンとしないといけない。評価を基に賃金も任用も決めるといっている以上曖昧さは許されない。評価は、能力育成などに用い、処遇にはストレートに結びつけてはいけないのではないか。

● 能力評価の一つの柱が、職務の能力開発とか、能力発揮であるのも事実、それは十分に考えているつもりだ。

● これから深めていくもので、そのときに任用との関係も精緻化されていく。

○ 評価を自己目的にするのではだめだ。一つの手段として任用に使っていくのであれば、そこを曖昧にすることはできない。

● 試行などを実施する中でだんだんと精度をあげていくことになる。

○ 評価が目的ではない。任用のための評価であって、試行の中でと曖昧にするのは矛盾を感じる。

● 整合性が必要と思うが、今回別に深めている。

○ 民間もほとんど失敗している。先例があるのに、そこを曖昧にすることはできない。

● 個別の企業の失敗まではわからないが、組合として指摘いただければ、検討して参考にする。

○ 能力評価と任用の関連は整理がついていないが、密接不可分のものとしてリンクさせることは決まっているというのは、試行もしていないのに無理ではないか。

● 大枠では任用の材料にするということでクリアだ。

○ 職務遂行能力基準とどう結びついているのか、クリアというなら説明してほしい。その基準に基づいて評価して任用するとしかいっていない。唯一のしばりは予算などの外的要因だけだ。公務員制度において、このやり方には無理があると思うが、最終的に財政上の制約で相対化せざるをえない。人員枠しかり、加算部分しかり、一時金どれをとっても相対化せざるをえない。しかし、評価は絶対評価といわざるをえない。根本的に矛盾があると思う。これをベースに能力等級制度を運用することは無理と考えるがどうか。

○ 新人事制度は評価を任用に使うと提案しているのだから、提案する側がキチンと提示しないといけない。

● 完全に固まる前のものを示して意見を聞いている。今の段階で、完全に説明はできない。

○ そういうことでは済まない。評価制度そのものがコストがかかる。妥当かどうかの検証も議論としてはあり得る。どういう目的で評価制度を導入するのか。それがこの間の議論になっている。つなぎ合わせようとすると説明できないところがある。そこが一番のポイントだ。そこを曖昧にして次の作業を進めるのか。また、試行してからというが、来年提出予定の国公法「改正案」の中で評価をどう処理するのか。現行のように「能率」に入れ、「給与」につなげるというのでは、結論ありきだ。

● 法律で細部まですべてを示すわけではない。具体的な細目は、平成18年までに仕上げるものであり、細部まで決まっているわけではない。能力評価の結果だけで埋まらない部分はいわれるとおりだ。

○ 「絶対評価の相対化」の矛盾をどう考えるか。

● 能力評価だけで埋まらないものがある。足りない部分はジョイントする。

○ 民間はある程度能力評価によって上位に格付けできるかもしれないが、公務の場合はそうはいかない。いくら優秀で、かつ職務遂行能力が高くとも、一方で、人員枠や財政などの制約がある。そういう使い方は無理であり、昇格の候補者選びならもっとやり方があるのではないか。これは勤務条件の問題であり、手順と仕組みを明らかにすべきだ。管理運営事項で逃げるということでは問題だ。

● 任用の根本基準はルール化にあり、基本的な考え方を示している。管理運営事項で逃げるということではない。

○ 能力評価基準は労働条件決定システムの基本だ。交渉事項としてどこまで基準の議論ができるのか。できないということでは困る。評価をベースに人事管理を行うのであれば、クリアでないといけない。不明朗さがあるほど、信頼性が失われて疑心暗鬼になる。それが勤務評定がうまくいかなかった中心問題ではないか。なにも組合が反対してきたからではない。制度としてキチンと明らかにすべきだ。

【経験の蓄積と評価をめぐって】
○ 次に、経験の蓄積と能力の伸長の関連についてはどう捉えているか。地方では課長や係長試験などを行っているところもある。シートでやっていると思うが、一発試験のみというのは理解できないし、そういう方向が修正されてきた歴史的事実がある。

● 経験の蓄積や能力の伸長は当然だと思う。ただし、経験があれば職務遂行能力がアップするということはない。経験と能力の伸長は、経験を重ねることで、職務遂行能力があがることは事実だが、重ねていけば必ずあがるというものではない。したがって、具体的に認定しなければならない。

○ 能力をみていけば反映されるということか。

● 反映されないことはない。職務の遂行にあたって発揮された能力を認定するのだから、職務遂行能力基準の各項目に従い認定するときに、経験によってアップされた能力も含めて発揮されていれば反映される。経験が蓄積したから認定されるのではなく、アップした能力が発揮したことで認定される。

○ 評価の要素はどうなるのか。係長という基本職位があれば、3〜4等級のどこにつけてもいいのか。1年目の係長が発揮するのと、2年目、3年目の人は経験の蓄積があり、発揮される能力が高い。しかし、全く新しい仕事に就いた人は高い能力を発揮できない場合もある。

● タイムスパンもいるし、人にもよる。基本的考え方は、実証された能力でやる。さらに、その裏付けに経験年数があると思う。経験年数があれば能力もあり、評価に結びつくでしょうと。

○ 例えば、職業安定所の業務で職業紹介と雇用保険では全く違う。別々の仕事をしていくのではなく途中で入れ替わる。1年間で評価する際、ポストが一つしか空いてない中で、職務が違うのにどう総合的に評価するのか疑問だ。

○ 組織区分も同一で、今の話になったときにどうするのか。実際、人事の流れからすると、1年目と3年目ではポストが異なる。発揮された能力にこだわるとそういう矛盾が出てくる。我々は、卒業方式もあるだろうといっている。卒業方式は経験をどうするかだ。3等級なら1年目も10年目も同じ土俵で評価するということか。

● そうだ。何が問題なのか。

○ 10年目のほうがたまたま初めてのポストに配置されて、うまく能力が発揮されなかった。9年目までは慣れた仕事で能力を発揮していた。毎年度やりかえの評価では蓄積しないのではないか。

● 基本的に蓄積していくものではない。

○ 降格の場合もそうか。

● そうだ。マイナスが蓄積することもない。

○ ポイント制は別にして、総合勘案をどう組み込むかという議論はしていないのか。毎年毎年一発勝負しかないのか。

● 能力の発揮できるところに異動してもらうのが現実的だ。過去の実績、経験も勘案しろということか。

○ 単純な経験年数だけでなく、経験の蓄積だ。加算額のときも総合勘案だった。一発勝負でいいのか。

● 人事管理権者は職員の職務能力をみてやっている。例えばマラソンに向いているとか、短距離に向いているとか。

○ それはポストにつけるからやっている。しかし、能力等級による昇任にはタイムラグがある。大括りにして係長などの等級を決め、その後に個別のポストに就ける。係長という集団の中に入れるかどうかが提案されているものだ。また、その有資格者であるかどうかだ。霞が関の企画立案部門はそれでできるかもしれない。実施部門はその日暮らしではない。ニーズにどう応えるかであって1年勝負はしない。人を育てるために3ヶ月ごとに回すこともする。

○ 今の職場の実態からして、集団指導体制の中で経験の蓄積をして上がっていく。経験がすべてとはいわないが、係員から係長になるには経験の蓄積が評価されている。提案は恵まれない仕事にあたると前の経験は勘案されない。今の経験年数や在級年数をすべてよしとはしないが。

● 恵まれない仕事にあたったとは、能力、経験のどちらか。業務だったら、目標の設定もあるのではないか。

【基準の曖昧性をめぐって】
○ 一般の公務員は、定年まで公務員でいくし、定型業務をやっている人は、ポストの高いところも望めないし、経験をどうみるのか。全くみないとなると、職場の志気に大きく影響する。

● 一番大切なのは能力なので、能力を物差しにするということだ。

○ みるべき要素として、すべての等級とはいわないが、ある程度基準たるものがあってしかるべきである。省庁毎にアンバラが出るかもしれないが。

○ 評価の目的にもかかわる。能力育成を考えると、一定期間何日かの評価をみてどういう研修をしたかなどをみて育成していく。恵まれない仕事、職場はある。上司に恵まれない場合もある。

● 評価のデータは残っているので、参考には使うだろう。この職場では上司とか仕事と合わない、ということもあると思う。

○ どこまで運用の幅で使うのかになる。1年リセットが基本で、それから先は各府省の運用でやるというのではダメだ。やるのならキチンとルール化すべきだ。評価と任用の組み合わせとするならば、複数年の評価で判断するというやり方だってあるはずだ。

○ 職務遂行能力基準が示されているが、どう判断するかは上司で全く違う。基準も観念的で、その判断は上司がする。経験年数はある意味で客観的なもので、長い歴史の中で職場でやってきた。提案は極めて曖昧だ。上司といっても十人十色で、人間は感情があるのだから、気が合う人と合わない人もある。短期の評価を処遇などの労働条件に入れることは無理だ。民間でも失敗した例がたくさんあり、見直しの動きもある。失敗したのはそこだ。科学的といっても恣意的だ。

○ 評価はブレがあるものとして扱わないといけない。職務遂行能力評価はそうだ。能力等級のように横断的にならざるを得ず、曖昧になり、ブレは大きくなる。ブレを修正する仕組みをどうするか。

● 複数の意味は違うが、一次、二次評定者がいる。

○ それは、一般的にやることでブレを修正するものではない。面談が終わったあとにやるとか。

● まず各省庁の苦情処理がある。

○ 苦情処理は一次評定の後にできるのか。

● 面談の際のフィードバックの内容も検討中だ。

○ 面談で異議を申し立てることとそれを記録することは。

● 考えないとはいわないが、今の段階では入っていない。

○ それもブレを修正する手続きであるはずだ。

● 39頁にも「苦情に対応する職員を置く、委員会で対応を図る」とは述べているが、十分ではないということで、もっと早く具体化しろということか。

○基本設計が出たころは、一次評定、二次評定ともフルオープンにするといった人もいた。フィードバックといっても、それより後退している。

○ フィードバックについてだが、管理者と職員の十分なコミュニケーションが必要だ。労働現場では、管理者と職員は対等ではない。法律で労使対等な立場とすることが求められる。管理者と面と向かって一対一のときに、対等な立場でやれないのが、労働分野の常識だ。そうである以上、透明性のある公正な案を提案するのが、評価制度を議論する基本だ。われわれの疑問に答えていない。

○ 今日、これ以上の回答がなければ、改めて検討すべきだ。要は運用をどうするかだが、運用場面で客観性、納得性それぞれがないといけない。当局の暴走、恣意性をどうするか、不透明性をどうなくすかの発想がなけれがだめだ。それが民間の失敗例ではないか。出されているものは極めて乱暴だ。

(以 上)


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