2002年8月21日《No.105》
「新人事制度2次原案」の推進事務局交渉(2)
 「新任用制度」「免職・降格の基準・手続き」で問題点を追及

 国公労連は、7月12日、行革推進事務局と「行政職に関する新人事制度の2次原案」の内容に関わって2回目の個別交渉を行いました。今回の交渉は、7月5日に続くもので、「2次原案」の「新任用制度」と「免職・降格の基準・手続」について交渉を行ったものです。今後は、「新給与制度」「評価制度、組織目標・行動規準、救済制度」「人材育成、本省幹部候補職員集中育成制度、上級幹部職員の新人事制度」の区分で個別交渉を重ねていきます。
 交渉の内容は以下のとおりです。(注:○は国公労連、●は推進事務局)

1 人員枠設定

<(前回未回答の)人員枠について>
○ 前回の交渉(7/5)で積み残した人員枠設定の手順を改めて説明(図示)されたい(各省の要求、予算と一体での財務省の査定、人事院の意見申出の時期など)。また、人員枠設定に関わる国会の機能と労働基本権との関係を説明されたい。
● 人員枠設定の手順として、昨年末に示した「人件費予算の決定(人員枠の決定)の枠組み」のフローチャートは現在も変わっていない。人事院から「意見の申出」があれば、内閣はこれを最大限尊重し、人員枠を含む予算案をつくって国会に提出する。国会はこれを最終的に確定するが、これらのスキームで労働基本権の代償性は確保されるものと理解している。最終的な決定は、国会が行うことになる。
○ 予算編成の過程で人事院が「意見の申出」を行うということだが、その時期は概算要求期の前なのか後なのか?
● 法律上、この時期に「意見の申出」をしてはダメだというようことは何もない。人事院の裁量(判断)によることになる。概算要求の前でも後でも可能だが、基本的には内閣の予算編成前になると理解している。フローチャートでは各省が予算要求を出した後に「意見の申し出」を行うようになっているが、しばることはできない。
○ 内閣が「意見の申出」と違った判断をした場合はどうなるのか?
● 昭和57年(1982年)に(人勧が)凍結されたことがあったが、特別な事情がない限り、基本的には最大限尊重するということになる。
○ 財政民主主義と労働基本権との関係整理が必要であり、特別な事情は限定的にすべきだ。個別の省庁の人員枠を何人にするかについて、内閣が人事院の「意見の申出」と違う決定をすることができるのか。
● 今の段階から「特別の事情」について話せないが、基本的には最大限尊重すということだ。ただ、特別な事情がある場合には意見のとおりにならないことも可能性としてあり得る。
○ そこのところは人員枠の勤務条件性と関わる問題であり、内閣が違った決定をした場合、代償性との関係はどうなるのか?
● 例示の組織区分の8級は、課長・企画官クラスをイメージしているが、例えば予算編成の過程で、組織として課の数が削減されることになれば、8級のポストも減らすということはあり得る。
○ それは現状でもあり得ることだ。今までと違う仕組みにして、より内閣の裁量権が広がるのにその歯止めがない。人員枠を設定に当たってポストの積み上げはしないとしている以上、ポストは重要な決定要素ではないことになる。示されている人員枠の決定の手順は、言われていることからすると、内閣の裁量性が極めて高く危惧すべきことだ。
● 裁量的に自由になるものでない。人事院の「意見の申出」は最大限尊重してやっていく。
○ 現状でも予算との調整をやっているのにどこがどう違うのか。予算編成とも一体で手順が書かれているが、その後整理されていないのか?
● 現在とどう違うのか今の段階では示せない。プロセスについては現在検討中である。
○ 人員枠に限っては、その設定主体(主語)が決まっているのに、詳細は検討中というのは何が原因か?
● 細部が決まっていないので示せないということであり、特定の理由があるからではない。
○ それでは、この先どうなるか不安でしょうがない。我々の意見は、人事院の役割との関係で、労働基本権の制約を維持する以上、少なくとも現状の代償機能を維持すべき、内閣での決定はやめるべきということだ。
● 組合の意見は承知したが、我々の検討を制約するものではない。
○ 人事院の意見の申出と違うということは、労働基本権制約の代償機能性と財政民主主義とのバッティングは前提で調整しているのではないのか。国会や内閣が、個別の省庁の人員枠まで立ち入って決定できるのか?
● 当然、国会にも提出された人事院の意見の申出は、最大限尊重されるべきものだ。予算は個別の経費の積み上げであり、これまでも一部の経費について修正した例もあった。個別省庁の人件費の一部について立ち入ることはあり得る。
○ 民間での労使関係や国労法での「人件費予算の総枠の範囲内であれば、国会承認は不要」といった規程とのバランスからみても、非現業国家公務員の労働基本権の取り扱い方が軽すぎるのがそもそも問題だ。
● 人事院の「意見の申出」を最大限尊重することになるが、100%そうなるかと言われると違うこともあり得る。人事院は、国会にも「意見の申出」ができるので、内閣の決定と違う場合には、その違いを前提に国会で審議されることになる。

2 新任用制度

<職務分類の勤務条件性>
○ 各府省において、組織区分、基本職位ごとに職務分類を行わないといけないが、先ず、職務分類は勤務条件性があるのかないのか伺いたい。
● 勤務条件性があるとしても、個別的の事項について現時点では答えられない。勤務条性には、自ずと軽いもの重いものがある。
○ 勤務条件性があるかないかは、まだ検討が済んでいないが、各府省はあらかじめ定められた基準に従って分類しろということか。
● 誰が分類し決定するかは、勤務条件性をどれだけ持っているのかと密接不可分の関係にあり、どれが人事院の担当か内閣の担当かを切り分けていく下敷きになるので、ここで勤務条件性が「ある」というと自ずと主語が決まってしまう。今の段階ではパッケージで検討中としかお話しできない。
● 一つずつ勤務条件性に○×を付けたなら、その先の議論になってしまい、主語入れの検討を拘束してしまうので、ここでは個別の事項についてお話しできない。
○ 論理が逆転している。我々の勤務条件性はそんなに曖昧なものか。
● 組織目標のように管理運営事項のようなものもある。管理運営事項だから話せないとは言わないが、2次原案全体が勤務条件性というわけではない。
● 勤務条件性の有無と密接に関係するので、どこが基準を定めるのかということと、その基準をどうするかを現在検討している。
○ だからここで、そのことについて交渉しているのではないのか。2次原案の11ページ4行目に「あらかじめ定められた分類に関する明確な基準」とあるが、2次原案はこれで最終案ということか?
● 2次原案は、最終案ではない。大綱でも職務分類について、「人事管理権者は、あらかじめ定められた分類に関する明確なの基準、能力基準及び代表職務に応じて、分類整理する」と書いてある。大綱でも既に主語は入っている。
○ 制度の固まり具合がハッキリしない中で、弾力的な運用や裁量が制度の中に組み込まれている一方で、明確な基準とあるがその中味がハッキリしない。さらに、人事管理権者が最終的に分類整理することになるが、第三者機関はどう関与するのか?
● 制度的に納得性がないといけないのは確かだ。基準決定の中立性・公正性をどう担保するかだ。事後チェックをどうするかはこれからであり、基準の明確性にかかってくる。 勤務条件性の有無以前に、基準とは何か、各府省に裁量を与えるならチェックはどうするのかなどシステムとして旨く動くのか、合理性、納得性がえられるのかなど現在検討している。

<重複分類の洗い出し作業>
○ 職務分類について、複数の基本職務にまたがる重複分類もあり得るということだが、三つの基本職位にまたがるようなものはあるのか。その際、職務は現状追認か?
● 現在、各府省で調査しているが、今のところ三つ以上というものはなさそうだ。現状における各職名の職責の幅がどれだけかを洗い出ししている。
〇 この際だから、現状追認ではなく評価替えを行わないのか?
● 推進事務局で、50万の官職全てを評価替えするとは不可能だ。

● 観念的には、重複分類とはある職名が基本職位の2、3に分類されるときに、同じポストが2または3に分類されるのでない。例えば基準監督官でも、2に分類されるポストと3に分類されるポストは、はじめから決めておく。
〇 同じ基本職位ならば等級の色分けはしない。例えば、係長では3、4級の区別はしないという考え方で良いのか?
● 基本職位2の中では、3、4級の区分けはない。
○ 個々のホストを、どこかの基本職位に分類しないといけないということか?
● 観念的にそうだ。例えば、基準監督官のうち、こういう職務だったら基本職位2で、こういう職務は基本職位3というように分類しないといけない。能力等級制を基本にするのだから職務を組織区分、基本職位に職務分類しないといけない。しかし、ある監督署のこの基準監督官は2で、この監督官は3でということまで、ギリギリ分類するものではない。
○ 重複分類を認めるのに、どうして個々の官職を基本職位に分類するのか?
● 基本職位を任用の基準として使うので、基本職位2に相当する人は、2の能力が求められる。例えば、個別の配置を行う場合、先ず、配置しようとする職務が属する基本職位に対応する能力等級に格付けられた職員の中から選考することになる。
○ それは、発揮した職務能力だからか。ポストを変わらないといけない理由は何もないのだな。
● 例えば基準監督官で言えば、基準職位2の係長級と基準職位3の補佐級の職名が一緒でも、観念的には、基本職位を分けることになる。求められる能力に応じて、各ポストを分類整理することになる。こういうポストは2、こういうポストは3ということになる。
○ 同一職名であったとしてもこのポストは2、これは3と分けないといけない。そうなると、監督官などの重複分類が認められる専門職は、どちらの基本職位にするかで人員枠が規制されることになる。人員枠はどの固まりで規制されるのか?
● 同じポストであっても、年によって要求される仕事の中身が変わることはある。基本職位2だったものが基本職位3に変わることもあり得る。これは職務分類により評価が変わる場合と同じことであり、3が2に戻ることもあり得る。
○ 基本職位をまたいで変わる場合は、何らかのチェックが必要ではないか。
● 途中で変えるのも新たに職務分類するときと同じことで、基本職位全般にかかわるチェックをどうするかは検討中だ。
○ 基本職位2から3に昇格するときは、異動しないといけないのか。重複分類が認められている同じ職なら、基本職位をまたがって昇格することもあり得るのか?
● ポストを変わらないのに職務分類が変わって昇格することは、一般論としてはあり得る。同じポストであっても、求められる能力が上がれば分類替えしないといけないわけで、係長、補佐、課長などの代表的なライン職は別にして、異動しなくと基本職位が上がる職名はあり得る。
○ 現行の級別定数の査定のようなものか。ライン職は別にして、職名の固まりの見方ということか?
● 少なくとも、職ごとにガチガチの箱ではない。例えば、現在のある専門職で、1級から11級の通した職名があったとしても、なりたての人とベテランとでは求められる能力は違う。
○ 各府省で同じ職名(例えば企画官)でも、各省毎に、基本職位毎の職務分類を行うのか?
● 各府省とも同じ基本職位に分類されているが、職務分類上必要ならば分類整理をやりましょうということだ。
○ 例えば本省の企画官で、基本職位3と4にまたがる場合はどうなるのか?
● 企画官には、政令上位置づけられている企画官と各府省が勝手に作った企画官とがある。
● 府省によって、補佐クラスから課長クラスにかけて企画官を作っているところは、基本職位の重複分類はあり得る。
○ 繰り返しになるが、重複分類の職名では、異動しないで上位の基本職位への昇格はあり得るということか?
● 上位の基本職位に対応する等級への昇格は、他のポストに異動するか、重複分類が許されているポストでは、職務分類でその職務の評価が上がるかだ。
○ 職務分類で評価が上がるということは、各ポストを明確に職務分類するということか。
● ポストを替わって上位の基本職位に上がっていくことが一番多いのだろうが、ポストの職務分類が変わって上位の基本職位に評価され昇格することもあり得る。実質的な職責や求められる能力は時々で変わる。特に、専門職は幅があるものだと思っている。

<任用制度>
○ 任用の根本基準は現行と変わるのか。職務に人をつける行為を任用とすることも変わらのか?
● 国公法の各条文が全く同じかは留保するが、成績主義などの合理的なことは変える気はない。職に人を就けることが任用のであることは変わらない。
○ 適材適所の任用というが、能力等級との関連で、能力評価によって昇格候補者を決め、層分けし、適材適所の実証で昇格者を決めることになるのではないか?
● 能力等級からみればそうだ。実務の世界ではどうやって人事をするかだが、昇格できる枠があって、候補者の中から適任者を適材適所にあてる。
○ 能力評価など三つの段階があるが、それぞれの勤務条件性を教えてほしい。
● 現在検討中であり、個別に言えるような話ではない。全体的にそこは決まっていない。
○ 重複分類で、任用と昇格が同時に起きないこともあり得るのか?
● 昇任と配置の区別はしていないが、基本職位をまたがる任用は、原則として昇格と同時に起きる。原則と書いたのは、特例的任用のケースも設けたからだ。
○ 特例的な任用以外に任用が起きないまま昇格するケースはあるのか?
● 「原則として」と書いているとおり特例的な場合だけだ。
○ 同一の基本職位の中で、上席○○官、主任○○官、○○官と位置づけられたような場合の任用(配置換え)はどうなるのか?
● 配置でしかないが、その府省が、上席の方が上なので昇任として運用したいということならば、発令用語として認めようと整理した。基本職位上同じ企画官と課長でも、明らかに違うということで運用したいというのならそれもかまわない。
○ 企画官についても、基本職位をまたぐ場合があるということか?
● 政令上の企画官と各府省が勝手に作った企画官とがあって、各府省で実態が違う。補佐級から作っているところなどは基本職位を重複することもあり得る。
○ これも、任用なしの昇格はあり得るか?
● それは、重複分類で答えたように、違うポストに異動するか、評価により分類替えするかは変わらない。普通はポストが替わって上にいくのが多いが、ポストの分類が変わって昇格はあり得る。

<特例的な任用>
○ 上位の基本職位への特例的な任用にかかわって、本省幹部候補職員の集中育成を特例的な任用の「基準」に入れたのはなぜか。職員育成上の必要でもよいではないか。
● 各省ともいろいろ議論したが、多くの省からキャリアを育成する際に、本省係長にして、次ぎに地方の課長で出して、また本省に戻ってくるような人事があるので、特例を認めないとそのような人事ができないということで入れた。
○ かつて「バカ殿教育」と批判されたではないか。
● それは、年数を遅らせただけで今でもある。(組織区分Aの)基本職位2(係長クラス)の人が地方で基本職位4(組織区分B、Cで課長クラス)になり、また本省に戻ったときに元のところにもどれないことになる。そのような人事を否定するものではないので要件に加えた。各府省から、人材育成として必要だと要望された。
○ それは特定の省庁からの要望か?
● 国土交通省や財務省、警察庁、郵政事業庁などだ。キャリアの育成は引き続きやりたいので、ここのところを特例任用で認めてくれとなった。
○ 本省幹部候補職員の集中育成以外の人材育成を入れないのはなぜか?
● 個々の省庁で、幹部候補職員集中育成コースに入っていない人をあてたいというのも入っている。
○ これには、チェックのあり方が隠れているのか?
● チェックは必要ないとは言わないが、個別の人事なので、苦情処理とかの不服を除けば検討していない。
○ 同一の基本職位に「○○専門官」と「上席○○専門官」が存在する場合、上席専門官と専門官との異動は、昇任・降任ではないということだが、普遍的に考えると、同一の基本職位であれば、職名による上下関係はないわけで、平の専門官が上位の級にいることもあり得るのか?
● 制度的にはあり得る。対応するする二つの級に入り乱れていることはあり得る。省内の秩序が必要なのでキッチリ運用するのか、適材適所で弾力的に運用するので幅はあって良いとするのかは、各府省の判断だ。
○ 何をもって降任とするのかの定義がなくなっているが、上席専門官から平専門官への異動は降任ではないということか?
● 降任については何ら規程されていない。上席から平の専門官になっても、同じ能力なら、何ら規制されるものではない。
● たまたまいろいろな職名があるが、上席と平の専門官が同じ基本職位ならば、上席とついたほうが偉そうに思えるが、上だ下だと規制することはない。

<身分保障>
○ 降格を伴わない降任が想定される以上、任用の根本原則である「身分保障」との関係で、不利益処分となりうる濫用が生じないか?
● 上席と平の専門官で仕事の評価が変わらないなら何の問題もない。給与も変わらないし同じ範囲に入っている。等級と基本職位は一致しているので、その固まりの中で動く。
● 今でも転任といってもいろいろあり、上下関係が必ずしも保障されているわけではない。
○ だからこそ、身分をキチンと保障すべきだ。今でもグレーな幅があり、乱用している省庁もある。
● 幅でみた場合、基本職位があって、その下に等級がある。その中で、基本職位をまたがる降格は簡単にはできないようにしている。同じ基本職位の幅に入っているなら、どう異動させるかは適材適所の範疇だ。
○ 降任の乱用を防ぐように規制をかけるような形で検討できないのか。
● 現在でも、関連団体に出向したり、省庁を変わったりするときの異動は、ある団体へは本省補佐から課長で出たり、ある省へは係長でしかダメだったり、身分保障が尻抜けになっている。今回、何が昇任か降任を定義していない。公務員制度を改革する時代の要請の中で、適材適所の人事を行うために、1つ1つこれは昇任・これは降任とはしないで、一定の幅(基本職位)を持たせている。一方、職員の処遇はきちんと支えないといけない。それらを検討した結果が2次案だ。
○ 現実に起きている実態からすると、この2次原案で良いと考えているのか。
● 今よりは国公法の理念を実現できるし、職員が仕事をすることを一番に考慮して、ある程度の幅の中で調和を取ろうとしたのがこの2次原案だ。

<公募制>
○ 公募制の積極的活用とあるが、ポストで公募するのか、能力で公募するのか?
● 公募制を活用するのは、一定のプロジェクトや特定のポストだと思うが、まだ決まっていない。

<転籍・本籍>
○ 公募制の積極的活用の中に、「転籍」という言葉が出てくるが転籍とは何か?
● 現在、「籍」という概念があるわけではないが、実質的に本籍の省庁に戻ってくるということをはっきりさせたいのでそう表記した。
● 現在でも、他団体への出向や他省庁への異動については、実質的な本籍の省庁に戻ってくるが、今回の公募制に絡めて、本籍という概念を規定しようとするものではない。

<休職>
○ 2次原案に、休職の基準・手続が記述されていないのはなぜか?
● 現行制度を基本的に維持することで考えている。ただ、条文の整理をするので、表現が変わることはあり得る。

<身分保障>
○ 免職、降格ともかかわって、身分保障の根本は何か。能力がないから公務員としての資格を失うのか、職がないから公務員としての資格を失うのか。
● 公務員として適性を欠き、職もない、仕事もないのでやめてくれということだ。
○ 能力だとすれば、免職の基準・手続の5(廃官)との関係はどのように考えればよいか。ポストが廃止されたといっても、他のポストで働く能力がないわけではない。能力等級制の下で、ポストがなくなることで免職する廃官規程がなぜ残るのか?
● 廃官の規程は、50年間一度も使われていない。実質は免職だが、公務員は身分保障があるから、成績主義であれば、その事由が限られているということになる。仕事があっての公務員というのは変わらない。
○ 民間でいう解雇・リストラではないのか?
● この仕事はいらないとなると、公務員でなくなることは当たり前だ。使用者側から辞めてくれというのは解雇だが、公務員は、原則解雇自由ではなく身分保障があるので、免職できる場合をこの5つに定めた。公務員の地位は職と一致している。公務員でなくなると職員でなくなる。
○ 身分保障は、職についているということか。公務員としての能力はあるが、仕事(ポスト)がなくなって公務員でなくなるということもあり得るのか?
● 何ら仕事(ポスト)を与えていない人を公務員として置いておくわけにいかない。仕事がないのに税金で給与を払うこはない。(出血整理については)国会の附帯決議でも、慎重に行うこととなっているが、仕事がなくなったら、早く民間で仕事をみつけてよということだ。
○ 公務員としての能力があるのに、廃官で免職するのはおかしいのではないか?
● 今でも廃職規程はそうだ。ポストあっての公務員という考えは変わらない。
○ 任用上はそうかもしれないが、能力等級制では、公務員として能力があれば良いのではないのか?
● 法律上の整理をするとどうなるかはあるが、そういう考えはとってない。
○ 公務員としての入り口(採用)と出口(免職)は職務で、(在職)中は能力ということか?
● 仕事があっての公務員、その上に能力に応じて配置するというのは変わってない。ポストにつけるのが任用であり、任用の面から適材適所に配置して、職務遂行能力や実績を適切に反映した処遇とするものだ。能力等級制度は、あくまでも適材適所の配置や適正な処遇のツールとして設けたもであり、制度の要ではあるが、最終目的は適材適所でだ。能力等級制度は、あくまでも手段だ。
● 現在でもそうだが、2次原案の免職基準(1)一〜三は、能力がない人はお引き取りくださいということだ。一方、(能力等級制度を入れて能力評価をするのだから)能力がある人が不当に解雇されることは防ごうとしている。現に、能力以前に仕事がないのに公務員はやれないということだ。
○ 仕事はないので給与は支給されないかもしれないが、能力はあるので公務員の身分は保障するということはできないのか?
● そもそも、採用のときからポストがなければ採用もしない。
○ 適格性欠如の基準が抽象的な規定で、公務員としての資質、適性があるといえるのか、ないといえるのか判断しづらい。適格性欠如の基準に「日常の言動等から」とあるが、公務員としての資質はどう判断するのか?
● 現在の国公法の基準は抽象的で判断しづらいので、明確な基準を作ってはということで、例えば、「失踪」を取り出して検討してみたが、どう規定するかなかなか難しい。今のところここまでしか検討が進んでいないので、労働組合の意見も虚心坦懐で耳を傾けたい。ただ、能力がない人はお引き取り願うし、能力があるのに一方的に首を着るというようなことはできないことは何も変わらない。
● 例えば、上司に反抗的で命令されてもプイと横を向いていうことを聞かないというよう場合だ。
○ 上司に反抗的な人というが、無茶苦茶なことを命令するアホな上司もいる。違法・脱法行為を命令されてプイと横を向くことだってある。
● 観念的には、そのようなアホな上司も、その上の上司がキチンと評価するはずだ。
○ 日常の言動等など明確性に欠ける基準を設定して、明確性を求めるのはおかしい。
● 今でも、周りの人からもあの人はおかしいと言われても、なかなか免職できないのは、明確な基準がないからだ。50万国家公務員労働者の内、毎年10数名の分限免職が出るが、特に郵政などがそうだが、上司が何枚も何枚もそれこそ何十枚も現認書を書いてやっと認めているのが現状だ。
○ 後々の苦情処理からしても、日常の言動では曖昧ではないか。
● 公務員としての適性は日常を観るしかない。公務員としての能力を観るのだから業務以外でみられても困る。頭の中で、あいつは嫌いだではできない。2次原案で規定したのは、抽象的なものではなく、事実関係をふまえて判断するように、外部に現れた事実から判断するようにとした。適格性審査、苦情処理、上司も人事当局もキチッと事実を押さえて間違いなくやってくれということで、上司が一方的にやないように書いている。基準自体をどこまで具体的に記述するのかご意見を伺いたい。
● 何も、直接の上司だけが判断するものではない。上に上げて何人もが点検してくださいと書いている。今よりも、変な上司に一方的にやられるようなことのないようなるはずだ。
○ 心因性疾患の職員に対しての乱用が心配だ。
● むしろ、病気の人は早く直してもらうことが先決ではないか。どんな手順にしても、現場で何とかしようと人事課に相談しても「そんなことは前例がないので止めておけ」となってしまう現状を何とかしないといけない。

<勤務実績不良と苦情処理>
○ 評価にかかわって、勤務実績不良の基準に「3年連続して(能力・業績評価の結果が著しく)不良な場合」とあるが趣旨は?
● 成績不良者を適正に処理をしようということだ。評価結果に不服ならば、先ず苦情処理をしてもらうが、苦情申し立てをしなければ、評価結果は固定される。その結果を元に正しい処理を行うということだ。
○ 勤務実績不良の場合もそうだが、抗弁、弁明のシステムが整っていないとダメだ。また、結果に対して、最終抗弁はできないのか?
● 苦情処理を含めて適正な評価制度にしようと思っている。正しく評価された結果ならば、3回連続の評価結果の著しい不良は勤務実績不良とみなそうということだ。職員へは予め矯正措置を講ずることを説明し、弁明を聴取した上で矯正措置を講じ、その上で相当期間を経過した後、適正な評価をしようということだ。
○ それでもイヤだと言ったらどうするのか?
● もともと首にすることが目的ではなく、働いてもらうことが目的であり、チャンと働いてくださいと再三言っても、ちっとも働いてくれないなら仕方ないということだ。
○ そういうやり方もあるかもしれないが、そこはキチンと苦情相談の中で本人を説得すべきことではないのか?弁明のやり方だって、ただ聞くだけでは意味がない。
● 苦情処理システムで旨く入るならば、苦情処理として入れることはある。ただ、キチンと言い訳を聞いてそれでも働いてくれない人は処分をするということは変わらない。職員側の言い分を当局に話す機会を設けるということで苦情処理とは別に書いただけだ。 言い分は聞き、お前の言うことはもっともだが、処分は処分として決めたので執行するというようなことはやらない。一方的でなく、チャンと当人の言い分を聞いてやりなさいということだ。また、第三者機関による歯止めもある。

<降格の基準・手続>
○ 本人の意による降格はどう扱うのか?
● 近年、実質的には増えてきている。職員の希望で役職は下がっても、出身の地方などに配置させてほしいとかある。現在でも、希望調書等で希望は聞いており、人事管理権者の判断で行っている。今回は、降格の規程を設けたので、意による降格の制度も設けた。
○ 基本職位の中で、ラインからスタッフで行きたいという希望など、意による配置換えも制度化すれば良いではないか。
● 意による降任の制度を設けるのは、降任要件の規程がないので降格で下支えするために、降格はこうした場合しかできないと規程した。当人がいいとした場合は下げられますとしたところに意義がある。
○ 性善説に立っているが、降格をみんな希望していると思っているのか。後進に道を譲ってほしいいと、辞職に追い込むような実態があるのではないか。本人が降格を希望するように追い込むことだって考えられる。意による降格の制度化は諸刃の剣だ。
● 国公法は、強制的に辞職に追い込むなどはダメとしている。妻が倒れたので、課長はきついので定時に帰れるポストに替えてほしいということもあり得る。勧奨退職のようなものがこれで起きるというのは、懸念のしすぎだ。
○ 介護ならば別の制度があるではないか。イギリスのブレアー首相も育休をとっているではないか。家族の介護のために課長ができない制度自体がおかしい。
● 今でも、田舎の親の面倒をみるために田舎に戻る人がいる。
○ それは、(下位の基本職位に分類される職務への)特例的な任用を使えばいいのではないか。
● 今でも8級や9級の補佐が(降格して)地方に帰るケースがあるが、高い給与で下の仕事をすることはできない。だから意による降任を入れてはどうか。
  本人が(降格を)希望するように強制してはならないと記述するのもおかしいし、本人の申し入れはキチンと尊重するように記述するのも変だ。キチンと手続きを決め、本人の申し入れを受けて、人事管理権者が発令をするし、証拠を残すことなどで乱用はさせない。
○ 本当に勧奨行為に使われないのか心配だ。
● その懸念は理解できるが、各府省は逆の(みんなが意による降格を希望する)ことを心配している。しかし、今のように解釈で運用できるならば心配しても同じことだ。
  公務員として一生懸命やったが、自分のキャリアを選択する一つの方向として、意による降格はあった方が良いのではないかということで「制度を設ける」と記述したが、各府省も労働組合からも反対と言われるとは思わなかった。
○ 全ての当局が心優しい人ばかりではない。職務遂行能力が落ちたから、そのポストから降りろ降りろと強要されたらどうするのか。
● これからの人事管理の方向性からみて職員の自主性を尊重しないとうまくいかない。
○ 定員削減で新規採用が抑制され職場がどんどん高齢化する中で、後進に道を譲れと言われないかだ。
● 本当に対策が必要なら、若年定年や任期付任用もある。高齢対策とのからみでは役職任期制とかの考えもあるが、これからはエイジレスの時代だ。年齢にかかわらず、能力のある人は早く昇進するし能力がない人は遅くなる。
○ 能力があれば課長を10年やっても良いのだな。
● 水産庁の捕鯨交渉の小松さんの例もある。それは正しいという世界だ。
  今はみんな暫定措置で(降格の規制が)尻抜けなので(降格の)基準を設けることで下支えされるのではないか。キチンとした基準が明示されるので、今まで任命権者の自由自在だったものが、透明化したルールの下で職員の意思も尊重される。今まで任用・分限は何も基準がなかったので、例えば本省だったら○○課長から史料編纂室長に飛ばすなどは単なる配置換えだったが、今度はそのポストの基本職位が分かるので勝手に降格はできなくなる。
○ 課長などの職制から下げることはできるのか?
● 管理職から外すのはダメとかいうこと何もはない。基本職位が同じだったら構わない。
  現在は、特に足長の官庁だったら上の級ほど(級別分布が)細いので、ぐるぐる異動していたら下のポストに就いていたりすることがある。人事院でも、他省庁に行ったら係長から係員になったり、その逆もあったりする。そこのところを何とかしたい。

(以 上)


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