2002年6月17日《No.98》
労働基本権問題についての交渉・協議は時間的余裕を持って行う

 国公労連は6月14日、「行政職に関する新人事制度の2次原案」の提示を受けて行った4月26日の交渉・協議に関する申し入れに対する回答交渉を行いました。
 交渉は、堀口委員長を責任者に山瀬副委員長、小田川書記長ほか4名が参加、事務局側は、春田室長、高原参事官等が対応しました。

 冒頭、堀口委員長は、次のように述べました。
○ 昨年、大綱が出されて以降、2度ほど申し入れを行ったが、今日は4月26日に2次原案をふまえて申し入れた3点に関して回答を求める。
 大綱では「労働基本権は現状維持」としながらも、労働条件決定にかかわって誰が基準を決めるのかなどは不明確だ。そのことからいわゆる「主語入れ」について明確にするように繰り返し主張してきた。また、評価制度の試行については、それを進める前提として人事制度に関わる交渉・協議の先行を求めた。そのことも踏まえ次の3点について推進事務局の考え方を明らかにしてほしい。
 1点目は、「主語入れ」は、新人事制度の内容などを協議していくためには必要不可欠なポイントだ。現段階で明確にできないならば、いつの時点で示すのか目途をはっきさり示すべきだ。
 また、労働基本権の取り扱いについては、大綱決定の1週間前にしか示されず、交渉・協議の時間的余裕もなかった。ことの重要性から、我々と十分交渉・協議すべきであり、「主語入れ」に関わっての交渉・協議の時間的保障の確約を求める。
 2点目は、そのことが明らかにされて2次原案の議論が進むだろうが、その中には当然「主語入れ」の問題も争点となる。2次原案の交渉・協議を通じて「主語入れ」の問題をどう交渉・協議のテーブルに乗せるのか。
 3点目は、評価制度の試行について、各省も苦慮しているようだ。我々は、人事制度の交渉・協議が整わないうちは試行を進めるべきではないと強調してきたが、行革推進事務局として、どのように進めようとしているのか。

 これに対して春田室長から以下のとおり回答がありました。
● 労働基本権制約の相応の措置の内容をどういう形で提示し交渉・協議するかについては、すなわち、「主語入れ」をどうするかについては、法制的な整理が必要であり、早急に示すのは困難だ。今日の段階で何月何日頃と申し上げられる状況にはないが、労働組合と十分協議できる時間的余裕をもって提示する努力はしたい。
 平成15年中の国公法改正法案の国会提出、平成14年中の評価制度の試行など、大綱や2次原案の内容をベースに検討している。法律の内容については秋以降にはなるが、しかるべき時期には示して交渉・協議できるようにしたい。相応の措置をどう提示できるかについては、時間的余裕をもって議論できるようできるだけ早く提示していく努力をしたいと考えている。
● 2次原案と相応の措置について議論していくが、これらをベースに各種の人事制度の設計を行う。当然、法令や規則、運用などいろいろな形態にわかれることから、2次原案がすべて国公法の改正に反映されるわけではないが、2次原案が大切なベースとなるので、労働組合との交渉・協議は十分に行っていきたいと考えている。
 相応の措置の内容は何度も議論しており、趣旨的に認識の違いはない。2次原案と平行で検討を急いで、議論が十分できるよう努力したいと考えている。
● 評価の試行については、大綱に示したように平成18年度に新制度に移行するわけで、その際、評価は大切なものとなる。そのために試行の検討を進めていきたいというのは当然で、2次原案に示した内容についてどうしたらよいか検討し、これから各方面と調整し、労働組合とも意見交換をしていきたい。

 この回答に対して、以下のやり取りを行いました。
○ いくつかの点について確認したい。
 2次原案なり大綱が国公法改正のすべてではないと言われたことに関連して、相応の措置の議論の深まり具合はいろいろあると承知している。国公法第108条の5は職員団体との交渉関係が規定されている。そのことが、他の法律、規則などをしばっている関係になる。労働基本権問題に関わる基本的な理念の整理が必要だ。国公法改正と相応の措置の関係をどう考えているのか。すぐ検討に入るのか。
● 制度の基本的なことは法律に書かなければならない。代償措置については法律で明確にしないといけない。後でとはならない。法律の中身は十分議論できる時間的余裕をもって示したい。その他の運用ルールに絡むものについては、いろいろなバリエーションがあり、基本的な議論をへた段階で、17年度にはある程度具体的な段階の議論になるが、どういう点の議論を先に送るのかなどは、今の段階で確定はできない。
○ 基本的な考え方については秋以降ということで、その時期には労働組合との交渉で俎上に乗せるということか。
● そうだ。
○ 労働基本権との関係で現行の制約を前提にしても「公務員制度審議会の残された3課題」がある。ILO87号条約、98号条約の完全な履行という点も公務員制度改革の課題だと回答した経過があると承知している。この課題についても秋までに示せるのか。
● 公制審では、消防職員の扱い、交渉不調時の調停、非現業の刑罰見直しの3課題が引き続き検討とされていると認識している。今回の改革と関連するのかどうか、直接の検討課題になるとは現時点では考えていない。しかし、関連性についての議論はあり得ると思っている。
○ 開会中のILO総会の議論経過は現段階では明らかではない点もあるが、岡山県教組や全医労が申し立てている事案で一定の見解が示されている。また、公務員制度改革についても全労連や連合が、結社の自由委員会にも申し立ていることも踏まえた議論になっている。マスコミ報道をみれば、例えば、団体交渉権の保障について触れているように思うが、これは大綱の見直し論議とかかわるのではないか。また、国家の運営に関与する公務員の範囲についても問題指摘されていると思うが、これと推進事務局の作業とどうかかわるのか。
● ILO総会の委員会で6月11日に日本案件が集中議論されたときいているが、そこでの議論を現在まとめているので、はっきりした考えを申し上げられる段階ではない。労働組合もILOに提訴したが、これに回答しないといけない。私どもは手順の中でできるだけ考えを明確にしていきたいと思っている。具体的な話が出たが、どういうやりとりになるか、またどういう議論の広がりになるのか、今の時点で、あらかじめ考えを持っているわけではない。できるだけ話せるものはILOに話していきたいし、残された3課題についてどういう関係になるか労働組合からも意見を十分聞きたいし、関係あるのかないのか国公法改正の段階でどういう関連があるのか考えていきたい。
○ 大綱が、国家公務員行政職をベースに公務員制度改革の方向をとりまとめたこともあって、消防職員や教員、医療職員、あるいは地方公務員など職種・職域毎の労働基本権問題の整理ができていないのではないか。そのことにも端的に表れているように、ILO条約と公務員制度改革との間にズレがあり、そのことが国際的な批判となっている。大綱の枠内だけで「主語入れ」も含めて労働基本権が整理できるとは思わない。
● 我々は内閣の一員であり、大綱としてまとめた枠組みの中で進めていくことが政府としての基本になる。ただ、確かに具体的なところまで検討が進んだ段階で1つも変更しないのかというと、大綱はある幅の中で書いているので、変更は全くあり得ないと断定はできないし、あらかじめ決め打ちすることもできない。少なくとも国家公務員は大綱でうたっているレベルであるし、地方公務員はそれに従って作業することになっている。
 労働基本権について現在の制約を維持する、つまり引き継ぐということで行けば大きく変わるとは思っていないが、改革するのだから全く議論しないというようなことは言えない。
○ 評価制度の試行について、新人事制度の固まり具合と試行の関係はどうなるのか。新たな評価制度は能力等級制度を前提の制度だが、試行は現在制度で運用することになるのか。
 また、能力等級制度を前提にする評価制度は、勤務条件性が極めて高いのではないか。
● 新たな人事制度が動き出す前に評価制度の試行をするということは試みでしかない。試行するということは、今の制度の枠内でやることになるので、評価結果をどう扱うのかだとかは、今の制度の中でしかやれないだろうが、何のために試行をするのかを考えれば、新しい人事制度のためにやるのだから、そこを十分考えて具体的に詰めていきたい。
 勤務条件性については、よくよく議論する必要がある。
○ 現行制度と新しい制度の2つがあって、現行制度の枠内で試行をやらざるを得ないとしても、各省がバラバラの運用を行うようでは困る。推進事務局として一定の議論をして旗振りをすべきだ。
● 評価の試行をするときには、どうやって行うのか、また結果の反映は重要なのでどうするのか、そういった扱いが各省バラバラでは混乱する。また、個別の省庁で決められないこともあるので、どういう考え方で、ある程度の範囲でやってほしいということで検討を進めているし、労働組合とも議論したい。
 推進事務局の意図の下で、各省とも組合とも議論したい。
○ 2次原案にも公安職や医療職員など例に上げて特例の要否の検討を求めているし、地方公務員や国会職員など国公法とは別に法律があるものは、その所管での検討が考えられている。それらと国公法改正のスケジュールや大綱との関係はどうなるのか。
● 公安職など国公法が対象にしている職員と国公法の外側に特別法がある職員と国家公務員でない地方公務員がある。大綱で、地方公務員については国公法改正とスケジュールを合わせると書いたが、特別法も国公法改正のタイミングで出せるグループと思っている。ただ、具体的にどうなるのかは検討していない。同時なのか、1年遅れなのか具体的なことはまだ固まっていない。

 最後に、堀口委員長から以下の点について再度指摘して交渉を終えました。
○ 不明確な点抽象的な点がまだまだあり、1月23日、4月26日の申し入内容からすると回答は満足できるものではない。
 しかし、離島で、僻地で、全国津々浦々で業務に励んでいる職員への責任が我々にも推進事務局側にもあり、2次原案の内容についても誠実な交渉・協議を進めていきたい。
 単に意見を聞く姿勢ではなく、中味と合意・納得を追求する立場で誠意ある対応を求める。
● 主旨については、十分踏まえて対処したい。

(以 上)


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