規制改革推進3カ年計画改定の閣議決定について(談話)
2002年3月29日
日本国家公務員労働組合連合会書記長 小田川 義和

1.本日、政府は、規制改革推進3カ年計画改定を閣議決定した。この計画は、医療、福祉・保育、人材(労働)、教育、環境、都市再生の6分野を重点として、新自由主義経済理論による市場原理主義に立っており、国民の生活を支える行政を求めてきた国公労連として到底容認できない内容である。

2.医療分野では、最大の問題である薬価には、ほとんどメスを入れない一方で、医療の質悪化の懸念がされる診療報酬の包括・定額払い制度の拡大と保険外診療の拡大を打ち出しており、民間企業経営方式の検討など、経営「近代化・効率化とあいまって、医療サービスが金次第とさせられかねない。

3.福祉・保育分野では、待機者増を口実に、規制緩和を行おうとしている。地方自治体が認可保育園に対し、国以上の基準を設置し補助のかさ上げをやめるよう求めており、保育の質低下が懸念される。また、いわゆる公設民営の推進は、職員の低賃金にもとづく低価格で落札している事例から見て、不安定雇用の拡大と保育の質低下が懸念される。施設介護も株式会社を含めた競争促進をするとしており、営利企業がサービス提供の責任をまっとうしているとは言えない在宅介護の二の舞とならないか懸念される。

4.人材(労働)の分野では、製造業務への拡大など派遣労働者拡大を前倒しで見直すことや有期契約労働者の契約期間延長を検討するとしている。しかし、有期労働契約の期間延長などの緩和については、厚生労働省の調査でも、契約社員を雇っている事業所の30%が「必要ない」と考えていることが明らかになっている。一方、ILO181号条約違反を承知の上で求職者から手数料を徴収することや裁量性の強いホワイトカラーに労働基準法しないことを検討するという、戦後労働法制の根本を崩す方向までうたっている。また、解雇ルールの明示を検討するよう求めているが、労使双方の事前予測可能性を高めるためのもので、労働者の利益を守る観点からのものでない。これらは、不安定・低賃金の拡大や労働基準法形骸化による労働条件の根本的悪化、職業紹介も金次第という事態を招く。

5.教育の分野でも、経常的な予算措置に代わり、競争的資金拡充と国立大学での競争的な配分の徹底、国立大学の法人化など、トップ30大学構想と共通の選別・淘汰の方針を内容としている。狙いは、より少ない財政支出で産業技術力強化を行おうというものであり、大学には教育・研究の自由の侵害が、国民には教育費の負担増が懸念される。

6.環境保護の規制強化が求められているが、計画では温暖化対策でも「現下の厳しい経済情勢にかんがみ、経済界の創意工夫を活かし、我が国の経済活性化につながるものとするよう配慮する」とするなど、京都議定書の空洞化にもつながる経済優先の意図が見え隠れする。

7.計画は、上記以外にも多くの問題をもっている。その方向は、公共サービス提供から国・地方自治体を撤退させることで、金儲けの対象を拡大し、セーフティネット抜きの弱肉強食の社会への転換をめざすものである。しかし、計画に示された新自由主義的規制改革は、経済の現実や国民の要求と決定的に対立している。例えば、製品の安全性について、企業と消費者が情報の面でも平等であるという新自由主義経済理論の前提が間違っていることは、雪印食品などの事件に端的に示されている。また、国民・労働者に痛みを強いることへの批判は構造改革・規制改革の実態が明らかになるにつれ、高まってきている。我々国公労連は、貧富の差の拡大により不安定さが増大する社会ではなく、安心・安全・安定に政府が積極的役割を果たす社会を築くために、「国民の中へ、国民とともに」のスローガンのもと、これまで以上に奮闘するものである。

以上

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