国の責任放棄につながる国立大学の「法人化」に反対する(談話)
2002年3月26日
日本国家公務員労働組合連合会書記長・小田川 義和
 本日、文部科学大臣に「新しい『国立大学法人』像について」が提出された。今後、国立大学の「法人化」、教職員の「非公務員化」へ向けた具体的作業が進められようとしている。国公労連は、国立大学教職員と労働組合などの意見を十分に聞くことなく、国民的な議論も不十分なままで行われようとする「法人化」に反対し、その撤回を強く求めるものである。
 「国立大学法人」は、3月6日の談話で指摘したように、法人の長の選考や中期目標の策定の仕組みなどが若干異なるものの、独立行政法人と基本的に共通した制度として設計されている。「法人化」の第1の狙いは、産業技術力強化政策のための大学づくりである。「新しい『国立大学法人』像について」は、「国公私立大学を通じて、第三者評価に基づく重点投資のシステムの導入など、適切な競争原理の導入や効率的運営を図る」としている。これは、結局、産業技術力強化のために「トップ30大学」の選択的な育成を宣言しているに他ならない。第2の狙いは、減量化である。「新しい『国立大学法人』像について」では、学長の経営責任を強調し、業績評価に基づく法人廃止を含む業務組織の見直し、企業資金のさらなる導入、企業会計原則に基づく会計基準などによって、大学に「自主的」な減量化を仕向ける仕組みを作ろうとしている。
 「非公務員化」は、「トップ30大学」を選択的に育成するための重要なツールである。身分保障を剥奪することは、リストラ・整理解雇に道を開くものである。同時に、身分保障が、学問研究の自由や長期の視野に立った教育研究の支えであることから、その剥奪は、教育研究に深刻な歪みをもたらすことになる。また、恣意的な業績評価による賃金制度を教員のみならず職員にまで導入することが予定されており、文部科学省の意図にいかに沿うかの競争が激しくあおられることになる。
 文部科学省は、これまでも高等教育・学術研究に対して十分な「公的支援」を行わず、貧困な教育研究環境と高い学費を押しつけて来た。高等教育への財政支出は先進国の中で最低であり、各国平均が政府支出の2.8%なのに対し、その3分の1程度の1%しかない。国民の税金を大企業やムダな大型公共事業に使うのではなく、未来を担う教育にこそ投資すべきである。しかし、文部科学省は、方針を転換するどころか、より「減量化」「効率化」を押しつけた上で、大学の役割を産業技術力強化にシフトさせようとしている。
 教育や基礎的研究を軽視することは、国家百年の大計を誤るものである。これを許さないためには、密室で進められてきた国立大学の「法人化」論を白日の下にさらし、国民的論議を巻き起こさなければならない。国公労連は、単組、ブロック・県国公と協力して、大学教職員組合の仲間のたたかいを支え、「法人化」の問題点を広く明らかにし、国立大学の公共的役割を守り発展させ、日本と世界の将来を切り開くためにたたかい抜くものである。

以上


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