総合規制改革会議の「規制改革の推進に関する第1次答申」に
関する対処方針閣議決定について(談話)

1.本日、政府は閣議で、総合規制改革会議の「規制改革の推進に関する第1次答申」の内容を来年3月に決定予定の規制改革推進3カ年計画に盛り込むことを決めた。第1次答申は、医療、福祉・保育、人材(労働)、教育、環境、都市再生の6分野を重点に市場原理主義に立った規制改革を打ち出しており、国民の生活を支える行政を求めて取り組んできた国公労連として到底容認できない内容である。

2.医療分野では、最大の問題である薬価には、ほとんどメスが入れられていない。その一方で、医療の質悪化の懸念がされる診療報酬の包括・定額払い制度の拡大と保険外診療の拡大を提言しており、医療サービスが金次第とさせられかねない。医療への株式会社参入の検討など、経営「近代化・効率化」はこれをさらに促進するものである。

3.福祉・保育分野では、介護や保育への待機者増を口実に、規制緩和を行おうとしている。地方自治体が認可保育園に対し、国以上の基準を設置し補助のかさ上げを行うことをやめろと迫るのは地方自治への介入であり、保育の質低下をもたらすものである。また、いわゆる公設民営の推進は、職員の低賃金にもとづく低価格で落札している事例から見て、ここでも保育の質の低下をもたらすことが懸念される。施設介護も株式会社を含めた競争を提言しているが、在宅介護で営利企業が介護サービス提供の責任を全うしていない例を見るならば、同じ事態が起こりかねない。

4.人材(労働)の分野では、製造業務への拡大など派遣労働者拡大や有期契約労働者の契約期間延長などにとどまらず、ILO181号条約違反を承知の上で求職者から手数料を徴収するこや裁量性の強いホワイトカラーに労働基準法しないことを検討するという、戦後労働法制の根本を崩す提言までしている。さらに、解雇ルールの明示を検討するよう求めているが、労働者の利益を守る観点からのものでない。これらの提言は、不安定・低賃金の拡大や労働基準法制の形骸化による一層の労働条件悪化、職業紹介も金次第という事態を招くものである。

5.教育の分野でも、経常的な予算措置に代わり、競争的資金拡充と国立大学での競争的な配分の徹底、国立大学の法人化など、トップ30大学構想と共通の選別・淘汰の方針を提言している。その狙いは、産業技術力強化をより少ない財政支出で行おうというものであり、大学には教育・研究の自由の侵害が、国民には教育費の負担増がもたらされる。

6.環境保護の規制強化が求められているが、答申では温暖化対策でも経済の過度の負担回避を言い、環境アセスメントも、十分に行うことではなく、迅速・効率化を求めるなど、環境対策としてはあまりに腰が引けている。一方、都市再生分野では、行政代執行の積極活用や、地方自治体が住民の要求に基づいて行ってきた「要項」による行政を出来る限り縮小することを提言しており、住民の権利や住環境への配慮が後退させられかねない。

7.答申は、上記以外にも多くの問題をもっている。その方向は、国・地方自治体が公共サービス提供から撤退し、金儲けの対象を拡大し、弱肉強食の社会への急転換をめざすものである。医療も教育も雇用も金次第の社会、労働者の状態悪化など権利侵害をもたらし、国民・労働者に痛みを強いることに他ならない。我々国公労連は、答申がもたらす国民の不安を増大させる社会でなく、安心・安全・安定を保障する社会を築くために、広範な国民とともに奮闘するものである。

2001年12月18日

日本国家公務員労働組合連合会書記長 小田川義和

以上


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