2001年12月5日《No.66》
「官民交流・再就職」問題で行革推進事務局と交渉(11/30)
推進事務局「ハイレベルの問題はよくわからない」を連発

 国公労連は、11月30日の「第3次中央行動」にあわせて、11時から「官民交流・再就職」問題で行革推進事務局と交渉・協議を行い、国公労連から山瀬副委員長、小田川書記長、津田・本多両中執、鈴木全建労書記長、山下全港建書記長、上野全経済中執の7名が参加し、行革推進事務局からは田家参事官、古田企画官らが対応しました。
 これまで国公労連は、行革推進事務局が9月20日に提示した「官民交流及び再就職についての基本的な考え方」について、10月4日と17日の交渉・協議でさまざまな問題点を追及してきました。しかし、その内容は、「新人事制度の具体案の検討が優先」という部内事情を口実にして、いずれの検討状況も「基本設計」の域を出ないものでした。
 その後、11月6日に「行政職に関する新人事制度の原案」が提示されて以降も、労働基本権問題の棚上げはもとより、「超過勤務の縮減などによる勤務環境の改善」や「女性の採用・登用の拡大」を含めて、新人事制度以外の具体案が未だに提示されていません。
 とりわけ、「天下り」問題については、特殊法人「改革」の動向と関わって、自民党行革推進本部が「役員出向制度」の導入を検討している旨の新聞報道(毎日新聞11/28など)もあり、今回の交渉・協議では、これらを含めてその後の検討状況を追及しました。

 【国公労連の主張点】
 (1) 前回の交渉(11/21)で春田室長は、「新人事制度以外の課題については、12月の大綱前のなるべく早いうちに提起したい」と回答しているが、それらの課題とスケジュールを明らかにされたい。また、「大綱」の性格とも関わるが、先に出口ありきでは、それらの課題についての十分な「交渉・協議」をどう担保するつもりか明らかにされたい。
 (2) これと関係して、直近の国会(11/20参院総務委員会)で西村局長は、退職手当の見直しや超過勤務の縮減など「12月の大綱には、そういうものも各省にお示しし意見交換を行ってまとめていきたいと考えている」と答弁しているが、少なくとも退職手当制度の見直し問題について何ら具体的なものは出されていない。
 (3) 「官民交流」について、効率化のみを追求した無原則的な拡大では公務の中立・公正性は確保できないと批判してきたが、身分併有の法制的検討など官民交流の制約要因の解消方策を含め、制度・運用の全般的な見直し方向を明らかにされたい。また、「基本設計」で主な検討課題とされていた「弾力的な給与格付けの実現」「任期付職員等に対する退職手当の算定方式の見直し」などの検討状況はどうか。
 (4) 「退職管理」について、従来の公務部内での抱え込みから部外放出への重大な方針変更だと批判してきた。直近の国会(11/20参院総務委員会)では、片山総務大臣が「キャリア組の退職管理システムはなかなか難しい」としつつ、「基本的には、役人として人生を全うするため、定年制度、あるいは退職金や年金を含めて、総合的な退職管理の仕組みを検討すればいい」と答弁していることとの関連はどうか。
 (5) 「再就職規制」について、これでは「天下りの自由化」であり、「退職管理」のあり方」を含めて公務のライフスタイルを明らかにせよと求めてきた。国公労連は、官民癒着をなくすため、営利企業への「天下り」の全面禁止、特殊法人等への「天下り」の厳格な規制強化を主張している。特殊法人「改革」の動向と関わって、自民党行革推進本部が「役員出向制度」の具体案の検討を指示しているようだが、これを含めてその後の検討状況はどうなっているか。

 【推進事務局の回答】
 ● 年内に「公務員制度改革の大綱」を決定することは決まっているが、何時になるかは分からない。
 ● 天下り問題については、事務局内部でいろいろ検討を進めている。天下り問題で国民から批判を浴びないよう、厳格な承認基準や第三者機関の関与など、きちんとした仕組みにしたいと考えている。ただし、ハイレベル(注:政治レベル?)な動きもあって、方向性が見えない状況にある。国公労連は「天下りの禁止」という主張だが、職業選択の自由との関係もあって、公務は合わないと考えた人が民間に再就職することまで制限できないのではないか。
 ● 官民交流については、民間から公務に中途採用する場合、現に働いている企業の身分のまま常勤職員になれるよう、内閣法制局や厚生労働省とも協議を進めており、できれば大綱に盛りこみたいと考えている。
 ● 退職手当については、給与制度の固まり具合に影響されるが、基本的な考え方は大綱段階で示したいと考えている。ただし、見直しの方向までは行けそうもない。
 ● 退職管理については、9月20日の考え方から変わっていない。公務で全うしたい人はそうしてもらうが、皆が公務で全うしないとダメとは考えていない。いずれにしてもルールを明確にして対応していきたい。

 【主なやりとり】(○は国公労連、●は行革推進事務局)
 〈官民交流関係〉
 ○ 「身分併有」はかなり大きな問題だ。労働者からみて、一人が二つの身分を持つことに不安があるのではないか。指揮命令権や懲戒権など、使用従属関係をめぐって民間適用の労働法体系とバッティングするのではないか。
 ● 国家公務員の大原則を変えることではない。民間企業と雇用関係がつながっていても、バッティングしないよう考える。身分が一つの方が安心するのか、元の企業に帰れる方が安心するのではないか。公務と民間は別の法体系であり、形式的には両方がかかってくるが、国民から見ておかしくないよう、そこは一つ一つやっていくしかない。
 ○ 公務の中立・公正性からみて問題があり、何らかの規制がないと大本を崩しかねないのでないか。公務の内部育成でやるのか、足りないところは外部に頼るのか、基本の軸足をどこにおくかが問題だ。公務の雇用流動化につながる。
 ● 何でもありとは思っていない。省庁によって需要が違うので、一律に規制するのはどうか。ニーズがあるのに、全部シャットアウトすることはできない。研究室や大学、行政職でも需要が出ている。癒着は正すべきだが、要は「民からの隔離」政策を是正し、やり方を転換していかねばならない。
 ○ 「行革大綱」で実施部門はアウトソーシングとあるが、公務員労働者の大部分は実施部門であり、公務全体を見て検討しているのか。公務員制度改革を考える場合、実施部門に目をむけて検討をすべきだと繰り返し主張している。第三者機関との関係はどうなっているのか。
 ● 主張はわかった。第三者機関との関係では、メリットシステムの大原則があるのでチェックは必須だが、現在の個別承認でなく基準を明確にすれば、各省権限に任せてもいいのではないか。

 〈退職管理・再就職関係〉
 ○ 天下りの禁止や規制はキチンと行うべきであり、天下りによる官民癒着が一番の問題だ。職業選択の自由もあるが、組織的に退職管理を行うことが国民から批判を受けており、そのことで職場では仕事が大変やりづらい。基準を作ると言っているが、その考え方はどうか。
 ● 天下りについては、ハイレベルのところで検討されているのでコメントできない。今のところ権限や予算を背景とした「押し付け型の天下り」は厳格に規制するとしている。また、行為規制も導入し、再就職に関する情報公開も行う。国民の監視の目もあるので、今までのようなことはなくなるはずだ。
 ○ 出身省庁への働きかけなどを昼間にやる馬鹿はいない。国民の監視の目があるといっても効果が薄い。制度としてのレベルの話もあり、法律になるのか、政令になるのか。
 ● そのような批判を受けないように制度を作りたい。また、法律なのか、政令なのかは何とも言えない。
 ○ 承認基準についての第三者の関与のあり方はどうなるのか。
 ● 第三者機関に何らかの関与をしてもらうことは決まっているが、具体はまだだ。
 ○ 特殊法人等への「役員出向制度」については、「行革大綱」で書かれていたものの、「基本設計」では触れていないが、この問題をどう考えているのか。
 ● これもハイレベルの問題なので何とも言えない。

 以上のやりとりの後、国公労連として「合意ができていないものは大綱に書くべきでない」と強く主張し、この日の交渉を終えました。

以上


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