2001年11月20日《No.56》
最高裁「国による団結権の侵害」を認め
画期的な勝利判決〈全税関横浜事案〉


 10月25日、最高裁判所第1小法廷は、全税関賃金差別損害賠償請求裁判の、横浜・大阪・神戸の3事案に対しいずれも上告を却下する判決を出しました。
 横浜事案では、「国による団結権侵害を認めて250万円の支払い」を国に命じた2審判決を支持し、組合勝訴、国の敗訴を確定させました。一方、大阪・神戸事案については「当局に組合差別の意志までは認定できない」として、組合敗訴の矛盾した判決を下しました。

 団結権の侵害は許さない

 全税関に対する当局の支配介入(団結権侵害)は、大蔵省・関税局の統一した指導の下で行われたことが数々の当局の内部文書から明らかになっており、大阪・神戸も例外ではありません。決着を急いだ政治的な判決と言わざるを得ず、とうてい容認する事はできません。
 しかし、横浜事案については「横浜税関当局の組合員に対する差別意思を認めることができる」(横浜事案は、組合に対する損害賠償は認めたが、個人に対する賠償は却下した)という少数意見がついたことも含め、「国による不当労働行為」を認めて国家賠償が認められた初めての画期的な判決と言えます。

 「当局は自主解決を行え」 霞が関で早朝宣伝

 本日(11月20日)全税関は、霞が関で早朝宣伝を行い、東京支部・横浜支部から30名がかけつけ、3000枚のビラを配布しました。そして、東京支部植松支部長、上山委員長、宮応副委員長が財務省前の宣伝カーの上でマイクをとりました。
 上山委員長は、「組合分裂から40年、やむにやまれぬ裁判提訴から27年、差別とたたかってきた。430人の原告は、187人が退職し28人が解決を見ずに他界した。当局の違法行為を断罪した横浜の勝利確定は画期的だ。今こそ、財務省・関税局当局は、自主解決を決断するべきだ」と、訴えました。
 応援にかけつけた国公労連・堀口委員長は「当局の違法行為は断じて許せない。今の公務員制度改革がめざす信賞必罰の人事制度では、当局の違法行為をだれも指摘できなくなる。民主的な行政を確立するためにも、労働基本権の確立をめざしてたたかう」と激励しました。

〈参考資料〉
声 明


 1、私たちが27年間戦いつづけてきた「税関賃金差別裁判」は、10月25日、最高裁第一小法廷において、横浜・大阪・神戸の3事案いずれも上告を棄却する判決を下しました。
 最高裁は、横浜事案について、国による団結権侵害を認めて250万円の支払いを命じた二審判決を支持し、国の敗訴を確定させました。
 もっとも注目すべきことは、最高裁が労働組合に対する国の違法行為を断罪した初めての画期的な判決である点です。

 2、一方で最高裁は、大阪・神戸の事案について、「当局に組合差別の意思までは認定できない」とする矛盾した判決を下しました。
 全税関に対する当局の支配介入(団結権侵害)は、大蔵省・関税局の統一した指導の下で行われたことは明らかであり、大阪・神戸も例外ではありません。関税局や東京税関のマル秘文書からも明白です。大阪・神戸の判決は最高裁が決着を急いだ政治的判決であり、とうてい容認することは出来ません。
 今回、深澤裁判官が大阪・神戸についても当局の「支配介入があった」として、審理を大阪高裁に差し戻すべきだとの反対意見を述べたことは常識的な判断であり、最高裁は責任を放棄したものといえるものです。

 3、この裁判は、74年6月、東京・横浜・大阪・神戸の4支部と430名の原告が4億5千万円の損害賠償を求め提訴したものです.以来27年、地裁、高裁で375回の公判を重ね、約40万の個人・1万の団体署名、3千名の日比谷大集会などを成功させ、展望を切り開いてきました。
 この間、28名の原告が志半ばで他界、187名の原告が解決を見ずに退職を余儀なくされました。
 横浜事案の勝訴確定は、全税関労組全体の汗と涙の結晶だと確信します。
 私たちの闘いを支えてくださった、全国の皆さんに心よりお礼を申し上げます。

 4、現在、東京事案が最高裁に系属中であり、私たちは東京の裁判勝利に全力を上げる決意です。
 同時に、全税関は昇任・昇格の差別など労使間の問題は、話し合いで解決すべきだとして、当局に対し自主解決を迫ってきました。
 私たちは、当局に対し、最高裁の判決を踏まえ、
 (1)組合・原告への謝罪、是正、補償を行うこと
 (2)労使正常化を実現すること
 を要求してその解決を迫る決意です。
 全国の皆さんの27年間あまりにわたる暖かいご支援に感謝すると共に引き続くご協力を訴えるものです。

 2001年11月1日

全税関労働組合中央執行委員会

以  上


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