2001年10月30日《No.49》
労働基本権棚上げで作業進める推進事務局に緊急の申し入れ
「基本権は与党の判断」とゼロ回答

 10月29日午後、国公労連は政府・行革推進事務局に対して、新人事制度の検討にかかわる緊急の申し入れを行いました。国公労連は堀口委員長を代表に公務員制度改悪反対闘争本部事務局メンバー7名が参加し、推進事務局は春田室長ほか4名が対応しました。

 冒頭、堀口委員長から緊急申し入れの3項目(別紙資料参照)に関わって、次の点について追及しました。
○ 新たな人事制度について9月下旬にたたき台が出され、交渉・協議を進めてきた。この間の経過を見ると、内容においても手続きにおいても重大な問題意識を持っている。例えば、新たな人事管理については、人事院の権限を縮小し、各府省の人事管理権限を強化するという内容だが、一方で労働基本権の検討は一向に進んでいない。労働基本権については、人事管理制度と平行して検討していくと回答してきたではないか。今回、3点について緊急に申し入れるが、1つ目に、労働基本権の確立はさけて通れない問題だ。室長もこの間、同趣旨の回答をしてきたではないか。今日は、ハッキリとした回答を示すべきだ。
 2つ目に、人事評価制度の検討が進んでいるが、労働組合の関与や苦情処理の仕組みなど周辺システムの検討について協議するように申し入れていたがどのように考えているのか。
 3つ目に、天下りについては、現在出されている方向ではなく、基本的に禁止すべきとこの間申し上げてきた。長時間過密労働の縮減や男女共同参画についても重要な課題と言ってきたが、検討が進んでいないようだ。
 以上の点を含めて現段階での検討状況を明らかにしていただきたい。

 これに対して、春田室長は以下のように回答しました。
● この間、基本設計がまとまった後の9月に1度お会いしているし、基本構造についても担当が何度か説明もし意見交換も行っている。
 まず、労働基本権問題については、私どもも重要な課題だと十分認識しており、人事制度と併せて検討すべきと申し上げてきた。今回、組織管理も含めて各府省の人事管理の主体性が発揮できるように検討しており、それとの関連で中央人事行政機関のあり方など、労働基本権に関わる代償措置のあり方を検討している。一方、この問題は与党の関心が非常に高く、与党側からも基本的方針が出されているし、いろいろな指摘もなされてる。労働基本権問題も与党との調整が前提であり、与党の議論を進めていってもらえるようできるだけ材料を出すように努力している。今の段階では、まだ結論的なものは出していただいていないが、引き続き推進事務局として努力している。
 次ぎに、能力・業績を人事制度に反映させていく上で評価制度は、非常に重要な課題だと考えている。また、試行的なものも必要とたたき台の中で書いている。具体的にどうするかは、皆さま方との関係もあり、評価方法をどうするか、苦情の問題をどうするのかなど相当広範な検討が必要でありその調整ができるよう、皆さま方との十分な話し合いができるようにしたい。
 天下りについては、特殊法人改革との関連で別途検討しているが、再就職問題が大きく取りざたされていることは十分認識しており、国民の批判も承知している。大臣承認制、行為規制、講評制度導入のそれぞれの役割分担や機能を整理しながら、12月に向けてキチンと論点をまとめていきたい。
 長時間過密労働については、国会関係や予算関係の業務が年々増えてきているようだし、大事に扱う必要があると思っている。今国会での実態を把握した上で国会にも要請していきたい。予算関係業務についても、長時間労働に繋がることなので、関係部署に石原大臣も挨拶しているし、総務大臣と共同歩調で取り組んでもらっている。新しい人事制度でも、管理職の最大事項に位置づけてやっていきたい。
 男女共同参画については、この問題だけを切り離すのではなく、広く人事制度を検討する中で、弾力的な対応を図っていきたい。その場合、超過勤務などの周辺整備も影響するので、常にこなし方を念頭に置きながらとりまとめていきたい。

 以上の回答を受けて、小田川書記長を中心に以下のとおりのやり取りを行いました。
○ 新人事制度について、10月末までに具体的なものを示すと言っていたが、スケジュール的にはどう考えているのか。また、具体案の性格は、どのようなものなのか。

12月中旬の「大綱」に向け近々に「新人事制度の具体案」を提示

● たたき台として9月に示したものに対して、各府省や皆さま方との交渉・協議をふまえて、近々(今週か来週前半)に「新人事制度の具体案(仮称)」の提示を予定している。その性格は、12月には「公務員制度改革大綱」として法制化に向けた具体的なスケジュールや法制化すべき内容を示すようにしているので、それに向けた具体案としてまとめて、新しい議論を進めていきたい。基本構造(たたき台)への関係者からの意見をふまえて、「大綱」に向けてより具体的にするためにまとめたい。「大綱」の基本にもなることなので、職員団体とも誠実に交渉・協議を行ってまいりたい。
○ この段階に来ても、労働基本権は固まっていないという。例えば賃金水準の決定方法など労働基本権絡みの問題が多々ある。ここが明らかにならないと、議論するのが難しいと再三申し上げてきたが、「大綱」の基本となるという今回の具体案を出す段階に来ても、労働基本権に関する考え方を示すことができないのか。
● 労働基本権のところで申し上げたように、与党の方に説明をしていて、どういう方向でまとめるか相当努力している。与党の方でもまとめていこうという姿勢はお持ちなので、より具体的に整理しながら、与党の検討が進むように努力をしたい。
○ 「絵に描いた餅」とまでは言わないが、労働条件決定システムと労働基本権問題との関係を繰り返し指摘してきた。それを抜きにして、「具体案」が「大綱」の基本になる言われても、一方的な提案にしかならない。各府省の権限を大きくするなら、労働条件決定システムを検討すべきだ。そうした仕組みの検討は必然なのに議論の素材が何もないのはおかしい。誠実に交渉・協議すると言っているのに一方的すぎる。まだ日にちもあるのだから努力すべきだ。また、いつ頃出せるか。
 土曜日のいくつかの新聞に、労働基本権は付与しないと決めたという報道も出はじめているがどうなっているのか。
● 労働基本権については、できるだけ早くに方向性を出し、固めていく必要があるという気持ちは強く持っている。土曜日の読売新聞のことを指していると思うが、党の方ではまだ新聞で出ているような方向で決めたというようなことではない。私どもも問い合わせたが、決まったわけではないと聞いている。できるだけ早く決めていただけるように議論の材料作りを精一杯努力したいと考えている。結論がいつの時点ででるかについては、いついつと申し上げられる段階ではない。「大綱」をまとめるタイミングもあるので、できるだけ早く方向性を出したいと考えている。
○ 例えば、各府省の人事権がどの程度広がるか分からないが、権限が今の程度としても公務員制度調査会でも、紛争処理については課題として残されたままだ。ILO87号条約の検討が残されている。労働基本権の問題で、過去の経過を含めて検討すれば、課題はいくらでもあるはずだ。9月の交渉では、10月末までに労働基本権についての考え方を出すように申し上げた。いついつまでに出せるのか、一定の考え方を示すべきだ。
 高知新聞にも同じような記事が出ていた。全国的に出ているようだ。職場からはどうなっているのかと問い合わせが殺到している。こんなやり方をれれば職場は怒りで一杯だ。
● 新聞記事は、どういう取材をされたのか、どういうものをベースに書かれているのか分からない。新聞報道の取り上げ方はは大変問題だと認識している。
 労働基本権に関する考えの目途を出してほしいということについては、いついつと言えれば気持ちは楽だが、できるとことは、党の議論が進められるように努力することに尽きる。
○ 各府省の主体的の中身は何か。そのことは労働基本権と関わるものであり、各府省の責任とは何か。我々は労働組合だからいろいろなところで議論しているが、当局との議論が全然煮詰まっていない。どこで何を主体にするのか。これから先の議論を深めてほしいということであれば、そこのところをハッキリさせるべきだ。それがなければ乱暴かつ雑ぱくなものにしかならない。
 評価制度について、短期評価を賃金に反映させるべきでないと再三申し上げてきたが、評価の目的を何処に置くのかだ。それから、不利益処分に対する苦情処理の仕組みなどもどうするのかある。何が何でも賃金に反映させるのではなく、室長や大臣も発言しているように、働きがいのある職場にしていくために使うべきだ。国公の職場は、何も本省だけではない。例えば、この瞬間でも離島で働く職員を含めて地方も視野に入れて考えるべきだ。
 退職管理は長期勤続が可能な方向を考えるのか。また、「24時間働けますか」で、過労死するまで働かされるのでは、能力評価も業績評価もあつたものではない。公務の職場にも働くルールが必要だ。その働くルールを当局や各管理職がどう守るのかが大切だ。評価はキチンとやるというなら、一方で働くルールをキチンと守るのが権利と義務の関係だ。
 「具体案」が「大綱」の基本と言ったが、たたき台には今まで言った問題が入っていない。人事制度が単なる能力等級制度と評価制度に矮小化することは許さない。次ぎに出す具体案もたたき台をベースにするのならば、その他の課題はいつ出すのか。
● 残る問題も出さないといけない時期にきている。少し時間差があるが、近々に近いところでという思いだ。
○ 「大綱」に向けて具体案を中間的にとりまとめることを考えているのか。
● 中間とりまとめをする必然性はないと思っているが、実際に作業をしてみないと分からない。
○ 労働条件決定システムが残されている。どこかで中間的にとりまとめをやらないといけないのではないか。
● 当然そういうものも含めて整合性を取っていかないといけない思っている。
○ 誠実に交渉・協議をするということで、この間8回交渉をしてきたがその内容をどう担保していくかが問われている。労働基本権問題に関わっても、例えば、超勤規制での36協定をどうするのかとかいろいろな課題もある。この間我々が主張してきた点についても、今後の検討事項に上げるなど、その具体化にむけて議論していくのがフェアーなやり方ではないのか。

 以上のやり取りを経て堀口委員長から以下の点を再度指摘し、回答を求めてました。
○ やり取りを聞いていると、人事制度のあり方や労働基本権問題をめぐって、室長の姿勢は後退している。労働基本権については、人事制度と平行して議論していかないといけないと以前回答していたのに、今回は与党の検討への材料提供に留まっている。
 労働基本権は政権与党との関係も理解できないわけではないが、政府使用者として推進事務局の考えが一度も示されていない。政府使用者としての皆さんと、我々との合意が必要だと再三申し上げてきた。推進事務局の検討姿勢は公務員労働者の権利の有り様を棚上げして進めようとしている。現場の職員の元気が出るような制度としたいと大臣も室長も言ったが、そうなっていない。
● 姿勢が変わったとは考えていない。これから具体的なことを固めていかないといけない段階だが、与党の検討が大きなカギを握っているので申し上げた次第だ。
 人事制度をめぐって各府省の権限を強めていく以上は、与党の議論をクリアーすることが前提だが、働くルールづくりが重要だと認識している。

 最後に、堀口委員長から引き続き十分議論していくことを確認し交渉を終えました。

〈参考資料〉

2001年10月29日
 行政改革担当大臣
   石 原 伸 晃  殿

日本国家公務員労働組合連合会      
中央執行委員長  堀 口 士 郎  


新人事制度検討にかかわる緊急の申し入れ

 6月の「公務員制度の基本設計」決定をうけて、9月下旬から国公労連と政府・行革推進事務局との「交渉・協議」が開始されました。この間、国公労連は、9月21日に提示された「新人事制度の基本構造」などにかかわる疑問点を明らかにするよう求めてきました。
 この間の「交渉・協議」では、能力等級制度を基軸に、あらたな評価制度にもとづく能力・業績反映の人事制度への改革が強調され、各任命権者等の人事管理、業務管理の責任(義務)の明確化と中央人事行政機関である人事院の「関与」の後退などの方向があきらかになっています。その一方で、労働基本権ともかかわる給与等の決定システムについては、ほとんどまともな回答が行われていません。
 また、評価制度にかかわっても、職員への「フィードバック」のあり方はもとより、苦情処理システムや評価基準設定にかかわる労働組合のかかわりについての検討がなおざりにされています。また、短期評価の給与への反映や、いわゆる「情意評価」を否定しないなど、現行の勤務評定制度のもつ問題点を引き継ぐものになりかねない危惧があります。
 さらには、今次公務員制度改革の一つの「口実」でもあった本省庁をはじめとする長時間過密労働の「改善」など、勤務環境整備にかかわる制度検討が十分おこなわれていないと、受けとめています。
 このまま、公務員制度改革が強引に進められることでは、公務員労働者の労働条件悪化、行政サービス後退にもつながる人事管理強化に矮小化された結果を危惧せざるを得ません。
 そのことから、緊急に下記事項を申し入れ、回答を求めます。

 1.あらたな給与制度などの検討ともかかわって、各府省の権限拡大に対応する労働基本権保障の考え方を明確にすること。同様に、給与の基本的な水準や各費目の統一的な基準などの決定システムについての考え方を早急に明らかにすること。

 2.あらたな評価制度については、その目的、内容について十分な協議をおこなうこととし、一方的な「試行」などはおこなわないこと。また、短期評価の給与反映はおこなわなず、任用、育成を目的とする評価システムについて、職員、労働組合参加のあり方、苦情処理の仕組みなど周辺システムについての検討を同時におこなうこと。

 3.人事管理制度の検討にあたっては、退職管理とかかわる「天下り」問題について、その禁止を前提として行うこと。また、長時間過密労働の縮減、男女共同参画などの勤務環境にかかわる制度検討を併行しておこなうこと。

以  上


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