2001年10月22日《No.47》
労働基本権問題で推進事務局と2回目の交渉・協議(10/17)
国公職場の権利侵害の実態をふまえた検討を!

 国公労連は、10月17日(水)11時から、公務員制度改悪反対闘争本部の「労働基本権プロジェクト」が行革推進事務局と労働基本権問題をめぐって2回目の交渉・協議を実施しました。今回は、推進事務局に労働基本権問題の検討を棚上げさせないためにも、現行法制下での権利侵害の実態を認識させるためにセットしたものです。これには国公労連から山瀬副委員長、飯塚・近藤両中執、宮垣全運輸書記長、香月全医労中執、古木名全税関書記長の5名が参加し、推進事務局からは渡辺・西岡両参事官補佐らが対応しました。

 【国公労連の報告と主張】
 この日の交渉・協議では、まず最初に国公労連側から全医労の香月中執が「国立医療現場からの実態報告」(別紙1参照)にそって、国立医療機関の施設当局側による交渉拒否や交渉権形骸化とこれによる団結権そのものの侵害の重大な実態を告発しました。 続いて、全税関の古木名書記長が「関税局・税関当局が行った全税関組合員に対する賃金差別について」(別紙2参照)にもとづき、当局による組織的な組織破壊攻撃の実態とこうした不当労働行為に対する現行法制度上の問題点を明らかにしました。
 その上で、国公労連側は、先のIL○第89回総会・条約勧告適用委員会でのIL○第87号条約をめぐる日本案件の結論部分として「消防職員の結社の自由に対する権利、公務員組織の諸権利、および病院職員の状況に言及したことに留意する」などの議長報告などを紹介して、労働基本権問題の重要性を改めて強調しました。

 【推進事務局の回答要旨】
 これに対し、推進事務局側は要旨次のとおり回答しました。
 ● 細かい経緯とかがいろいろあり、推進事務局としてのコメントはちょっと差し控えたい。しかし、私も現場で色々やってきた経験から、組合差別はあってはならないし、あれば法律違反だ。また、私も「管理運営事項」をめぐってもめたことがあるが、要は労使関係の安定を図ることが重要だ。労働基本権の問題は、人事制度といろいろ関係してくるので、推進事務局側も一生懸命勉強している。「新人事制度の具体案」によって細かい中身が提案されると、労働基本権との関連性が絞られてくる。個別案件は別として、労働条件決定システムをどう担保していくかがポイントであり、その認識に変わりはなく、国公労連の考えは理解しているつもりである。

 以上のやりとりを経て、最後に山瀬副委員長は、「本日の労働基本権をめぐる実態報告を推進事務局全体に反映させ、国公労連の要求にそった検討の具体化を求めたい」と述べ、2回目の交渉・協議を終えました。
以上


〈別紙1〉
関税局・税関当局が行った組合員に対する賃金差別について
全税関労働組合


 1859年、長崎、神奈川及び函館の港に運上所が設けられ、1872年に税関と改められ、税の確保と麻薬や拳銃などの社会悪物品の取り締まり、貿易統計などの業務を行っています。
 1947年全税関労働組合は、税関の職場に単一体として結成されました。しかし、当局は,安保闘争等労働運動が高揚する中で、1961年三名の首切り、1963年組合分裂という攻撃を行ってきました。当時、税関は全国に8税関ありましたが、当局から「バスに乗り遅れるぞ」などと脅しをかけられたり、上司から何度も脱退を強要される攻撃がかけられる中で、三年間の間にそれぞれの税関で、第二組合が結成されていきました。
 第二組合が結成されると、昇任昇格や職場内での村八分などの全税関組合員への差別攻撃が強まってきました。そうした中で、1974年組合員の生活と安全を守るため、何よりも人間としての尊厳を守るため、裁判提訴に踏み切りました。
 提訴以来今日まで、「新職員の基礎科研修は良い。マル共組合を追い詰めて行くのに効果がある。」、「旧労対策には官は一生懸命やっているが、もっと大事なことは新労を強くすることであると官房長にいっておいた」等の当局による差別謀議文書が明らかになったり、当時の管理者が、「私自身が管理職をしていたある官庁で昭和四十年代に、職員組合壊滅大作戦が展開されて、本省の意向を受けた形で、『費用はいくらでも出すから職員の親御さんと接触し、息子さんが組合に近付く限りその将来は絶望と悟らしめよ』と指示されていたことを思い出す。」という内部告発を行った文章が、新聞等で発表されてきました。
 裁判は、現在4支部(東京、横浜、大阪、神戸の各支部で提訴)で行われており、最高裁で争われています.。各高裁での戦いは、東京、横浜勝訴、大阪、神戸は敗訴となっています。判決の内容を見てみると、横浜判決では、「当局は、全税関の勢力や活動に対する嫌悪、警戒意思と第二組合の勢力伸張への期待を持って、組合に対する違法な支配介入を行った。」と断定し、東京判決では、「関税局の会議資料、東京税関会議議事録の記載内容からすると、当局は、原告組合を嫌悪し、差別する意思を有していた」と言いきり、損害賠償の支払いを命じています。また、東京高裁の裁判長から判決の際、「裁判も長期になっており、労使双方で解決への努力を要請する。」という異例のコメントが出されました。私たちは、再三にわたり当局に対し、この問題での話し合いを求めていますが、「裁判を行っているから」という理由で話し合いのテーブルにつこうともしません。
 あらゆる職場でこのような差別が許されるわけではありませんが、特に、国家公務員の職場で、このようなことが今でも行われていることは、許されることではありません。憲法を守り、公平な行政を行うべき当局自らが、このような行為を行っていて、公平な行政を行うことはできません。また、この差別は、職場の中を暗くしぎすぎすしたものとしています。
 これから行われようとしている「公務員制度改革」は、まさにこれに拍車をかけるものです。断固反対します。

〈別紙2〉
国立医療現場からの実態報告
全日本国立医療労働組合


 国立医療機関における労使関係で、いま最も問題とされているのは、施設当局側による交渉拒否である。施設当局は職員団体からの交渉申入については、上部機関である地方厚生局と十分な協議を経たうえで回答することとなっており、組織ぐるみの不当労働行為といえる。職員の交渉権の行使が妨げられることにより、団結権が大きく侵害されている。

【交渉回数】
 こうした事実を数字で裏付けしてみる。1995年(平成7年)から1999年(平成11年)の4年間において、全国200を超える国立医療機関において、交渉が実施されたのは、29施設33回にすぎない(厚生省発表)。2000年度においてもわずか9回である。大多数の施設当局が交渉を拒否しているのである。

【交渉までの期間】
 また交渉申入を提出してから、異常なほどの長時間が費やされている。たとえば2001年6月29日に全医労石川支部は「年休」と「超勤」を議題に交渉を実施したが、その交渉申し入れは2000年5月17日になされたものである。交渉実施までに一年以上かかるようでは、交渉の実質的な効果は無いに等しい。

【交渉議題】
 施設当局は「交渉は拒否していない。適法な交渉議題がないからだ」としている。しかし、全医労支部が交渉を申し入れた課題について、国公法を恣意的に際限なく拡大解釈して、交渉に応じていないというのが実態である。例えば、看護婦の勤務を三交替制勤務から二交替制勤務に変更する問題について、病院当局は、交替制勤務問題については、「管理運営事項」を理由として、またその問題と密接な関連を有する職員の増員問題は「権限外事項」を理由として交渉対象事項から除外している。
 そのほか、軽微な設備改善要求すらも「予算の執行が伴うために管理運営事項」として議題から除外する当局も少なくない。

【対抗措置】
 こうした組織ぐるみによる交渉拒否は、職員団体の交渉機能を大きく低下させることによって、職場での影響力を弱めることを目的としており、明らかに不当である。しかし、現在の国公法は国による交渉拒否及び誠実交渉義務違反を想定しておらず、職員団体等が不服を申し立てる制度は担保されていない。なお1991年(平成3年)の人事院会議は交渉応諾義務を求める行政措置要求については審査の対象としないことを決定している。

【交渉が実施されないことによる問題点】
 職員団体との交渉が実施されないことによって、職場では施設当局側による一方的な勤務条件の変更が当然のように行われている。
 例えば、国立長崎医療センターは外科系病棟(北2階、北3階)の3人夜勤体制を2人夜勤体制に変更する案を職員に示した。そのため当該全医労支部は2001年5月21日、「3人夜勤体制の継続を要望する」要望書を院長宛に提出した。しかし5月25日、病院当局は「交渉の対象となりえない事項について、個人的または職員団体の代表者を通じて、希望・不満や意見を当局に表明することは法律上許されない」として要望書をつき返している。
 また、看護婦の二交替制勤務導入にあたって、当局側は職員団体との交渉をいっさい拒否したまま、該当職場との「話し合い」を続けた。長時間夜勤となる二交替制勤務導入に否定的であった職場に対して、当局側は「急性疾患の患者を対象としない」「夜間の入院は制限する」「休憩・休息は確保する」などの条件を示した。しかし、導入後、時間が経過すると、多くの施設で、こうした「口約束」はなし崩し的に反故にされた。看護婦が抗議すると「前任者から聞いてない」などとして責任を回避している。

 これまで報告してきたように、現行の国公法で保障されているとされる、団結権と交渉権についても、使用者側(国)の一方的な解釈によって、形骸化されているというのが実態である。「官は悪をなさず」という発想のもとで、国立医療機関の職員は、事実上の無権利状態で日々働かされているといえる。
 こうした事態の根本には、国家公務員の勤務条件の決定に関連して生じる紛争を斡旋調停、仲裁する手段が保障されていないという法制度上の大きな欠陥がある。そして、このことは労働基本権の問題と密接な関係にある。
 公務員制度を抜本改革するにあたって、労働基本権問題は避けて通れないという認識であるということは、何度も表明されている。現行の公務職場における労働基本権の行使状況など、その実態をリアルに把握しながら、基本的人権である労働三権を国家公務員に付与することをご検討願いたい。


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