2001年10月19日《No.46》
労働基本権問題で行革推進事務局と1回目の交渉・協議(10/5)
労働基本権問題の棚上げは許さない!

 国公労連は、政府・行革推進事務局が進めている「公務員制度改革」の検討作業に対し、公務員制度改悪反対闘争本部の各課題別プロジェクトが推進事務局との交渉・協議を精力的に進めています。こうした中で、「労働基本権プロジェクト」は、10月5日に第1回目の交渉・協議を行い、労働基本権問題をめぐって推進事務局の姿勢を追及しました。これには、国公労連から山瀬副委員長をはじめプロジェクトメンバーほか8名が参加し、推進事務局側から谷内企画官、西岡・渡辺両補佐らが対応しました。以下はその経過のあらましです(●は推進事務局の回答内容)。

 (1) 労働基本権問題をめぐって、「大枠」では「公務員制度全般にわたる抜本的な改革のための検討を進める中で、労働基本権の制約の在り方との関係も十分検討する」とし、また「基本設計」では「労働基本権の制約の在り方との関係」として「この基本設計に基づき、給与制度を始めとする勤務条件に関する制度改革の具体化に向けた更に詳細な検討を進めていく中で、引き続き労働基本権の制約の在り方との関係を十分検討する」としか書かれていない。能力等級制度を柱とする「新人事制度の基本構造」や「官民交流及び再就職についての基本的な考え方」についてはペーパーが出されているが、労働基本権問題の検討状況はどうなっているか。
 ● 現時点では検討中としか言えない。給与など個々の制度と連動する問題であり、いずれ本格的に検討して結論をださなければならないと考えている。しかし、大きな問題であり、事務局だけで判断するわけにもいかず、最終的には与党や国会で仕切っていただく問題だと認識している。労働基本権問題について考え方の具体案は出していない。新人事制度の検討案については今月中にさらに詳細なものを出すことになる。

 (2) 人事院は、2001年人勧の「公務員人事管理に関する報告」で、給与勧告など代償機能の発揮による労働基本権制約の合憲性の維持、労使関係の安定と志気の維持や納税者である国民の理解と納得などをあげて「現状維持」を主張している。しかし、私たちの基本要求は労働基本権の全面回復であり、ましてや人事院の権限を縮小して各府省大臣を「人事管理権者」とするのであれば、労働条件決定システムについてもセットで検討すべきである。朝日などマスコミも労働基本権問題は避けて通れないと言う主張であり、個々の制度検討が進んでいく中で、労働基本権の制約を見直していくのは当然だ。
 ● もちろん検討の俎上には載っているが、それ以下でもそれ以上でもない。この問題だけを取り出しての議論はしていない。人事院の権限については、各府省の人事管理権との関係で見直しの方向は出している。人事院の権限を一つでも移せば、労働基本権の議論が必要になるというものではない。新人事制度の基本構造がより詳細なものになって、人事管理権限を含めて検討に入っていく中で、労働基本権「も」絡むと考えている。

 (3) 組合としては認められない。政府の「改革」方向は、人事院による級別定数制度を廃止して各府省の判断と責任で給与決定できる仕組みを基本に、大臣を「人事管理権者」として権限を強化しようとするものであり、そうであれば労働基本権問題もセットで議論すべきであるのは当然のことだ。
 ● 最高裁判例では、少数意見を含めて、公務員は職務の性格により労働基本権が制約されると判示している。問題は、そういう制約がある中で、処遇をどう適切に確保していくかであり、そのために人事管理システムで悩んでいる。推進事務局としては、適正な処遇の確保に焦点を当てた作業をしており、労働基本権問題は国会での議論があって初めて成り立ちうる。仮に労使交渉で賃金などを決定していくとしても、予算制度上の制約があり、当然枠がはめられる。

 (4) 検討状況に応じていくつかの選択肢を示せるのではないか。与党の議論状況なども報道されているが、それらが反映しているのか。法案が出てからは国会の議論だが、出すまでは推進事務局の仕事だ。国際競争力云々を理由に政策面をグローバル化するというなら、権利もグローバル化すべきだ
 ● 議論がここまで来ているというのはなく、与党云々は新聞で報道されていることである。ある程度の案は12月の「大綱」までに出したいが、必ず出すとは言えない。今の人事制度をふまえてよりよいものにしていくのが基本であり、最高裁判例も、ILO関係の議論も、公制調でもやったが、こちらでもやっている。

 (5) 私たちの問題意識は、労働基本権の回復が先にありきだ。12月の「大綱」前に方向性を出して、その後は政治の世界に任せてしまうのか、それとも交渉・協議の俎上にきちっとのせていくのか。使用者の責任において早く考え方を示すべきであり、10月中に新人事制度の具体案を示すのであれば、最低でもこれとセットで何らかのものを示すべきだだ。
 ● 労働基本権の問題を決して軽視しているわけではないが、今の段階で出すとは言えない。室長も避けて通れないと答えているが、10月といわれると難しい。

 以上のやりとりを経て、山瀬副委員長は、「政府として労働基本権問題に対する考え方をきちんと示してもらいたい。でなければ『誠意を持って交渉・協議に応じる』としている推進事務局の信頼関係にも関わる」と発言し、1回目の交渉・協議を締めくくりました。

以上


トップページへ  前のページへ