官民交流及び再就職についての基本的考え方(案)

 

1 改革の視点

○ 国際競争の激化や技術革新の急速な進展等、社会経済の構造的な変化に伴い、複雑多様化する内外の政策、課題に適切に対処していくには、公務部門でもそれに対応しうる能力を有する最適な人材の確保を目指す必要。

○ 一方、従来、公務部門においては、公務の独自性や中立性を強調するあまり、人材の確保・活用において硬直的・閉鎖的になっている実態があり、官民の人的交流についても過度に厳格な規制・運用が行われてきたところ。

○ 今後、公務員制度の見直しを行っていくに当たっては、各人事管理権者が、人材の確保・育成・活用の戦略を機動的・効果的に立案・実施できるようにすることが重要であり、官民の人的交流についても、公正・透明な行政への信頼を確保しつつ積極的に推進することが必要。


2 官民交流についての基本的考え方

(1)官民交流のあり方

 ○ 現在、官民交流に関する制度としては、中途採用制度、官民人事交流制度、任期付職員採用制度等があるが、

 1)専門的分野での政策企画立案能力の向上
 2)民間の業務遂行の発想を取り入れた行政の効率化
 3)即戦力の確保 など

の観点から、新卒採用者の部内育成とともに、民間人材の積極的な確保・活用及び職員の民間企業への派遣を推進していく必要。

○ 従来からの行政部門について指摘されている硬直性や閉鎖性の改善を図り、行政全体の改革を促進し、国民の求めるオープンで質の高い行政を実現するためにも、官民交流を積極的に推進。

(2)官民交流についての検討の方向性及び検討課題

1)官民交流の主な制約要因として考えられるもの

【公務側】
○ 従来の人事慣行への安住、公務と民間の業務は本質的に異なるとの過剰な意識等により、民間人材を活用する必要性等についての意識が欠如。
○ 民間からの採用がプロパー職員の処遇や士気の低下につながるのではないかとの懸念。
○ 人事院の事前承認・協議手続きなど、手続きが煩雑。

【民間側】
○ 民間企業を退職しなければならないことから雇用保険や企業年金、退職金が通算されないこと、給与が下がる場合が多いことなどの処遇上の不利益が発生。
○ 応募時点で業務内容等が明確にされていないこと、組織主導の派遣により採用者の意志と仕事内容とのミスマッチが生じていること、民間企業にとって魅力が少ないことなどから応募に対するモティベーションが不足。

2)検討の方向性及び検討課題

○ 公務に必要な人材を適時適切に採用できるよう、現行の複数の制度の下で行われている人材交流のあり方について再整理するとともに制度・運用を全般的に見直し。

○ 現実に官民交流の制約要因となっている事項についての解消のための方策を検討。

 ・雇用保険、企業年金等の通算を可能とする措置など処遇面での不利益の解消方策(公務員と民間企業職員との身分の併有についての法制的検討を含む)
 ・公募制の活用等・円滑な採用の促進のための方策
 ・人事院の事前承認・協議手続きの見直し
 ・民間人材の活用の有効性・必要性、職員の民間企業への派遣の有効性についての各府省の意識改革のための方策
 ・公務での経験が民間企業での評価につながるような交流効果のPRなど、制度を支える周辺環境の整備


3 再就職についての基本的考え方

(1)退職管理のあり方

○ 退職管理は、各府省の任務達成のための最適の人材構成を確保するための人材戦略の一環。人材を機動的・効果的に確保・育成・活用しうる人事制度を構築していく中で、キャリアパスの多様化に対応した適切な退職管理を実現する必要。

 〔人事制度全般の改革の課題〕

 1)任用:年齢・採用年次にとらわれない昇進・配置を実現するための評価・任用制度など
 2)給与:働きに応じた(年功要素を縮小した)給与制度など
 3)育成・活用:人材育成コースの導入等によるキャリアパスの多様化など
 4)採用:中途採用、任期付採用の促進など(新卒採用を基本とする従来の採用慣行自体の見直しを含む)
 5)退職手当:長期勤続が過度に有利とならない退職手当制度

○ 公務員制度全体としては、高齢社会を踏まえ、年齢や採用年次にとらわれない人材活用と働きに応じた適正な処遇を実現するための改革を進めていくことが必要。組織における最適な人材構成を達成するため政策企画立案部門等において人材の流動性を一層高めていく必要がある場合などには、退職勧奨を含む人事管理施策を適切に実施できるようにする必要。

○ なお、現行の定年年齢(60歳)の延長については、高齢社会の中で、現下の厳しい雇用情勢や民間企業の定年制の動向等を踏まえつつ中長期的に検討すべき課題であるが、不必要な人員の抱え込み、仕事に見合わない高い給与の支給とならないことが必要。

(2)再就職規制等についての検討の方向性及び検討課題

○ 再就職規制等については、「基本設計」を踏まえ、@大臣承認制、A行為規制、B公表制度の導入により、事前・事後のチェックを通じた総合的な適正化を図る仕組みを実現。

○ 検討に当たっては、国民の「天下り」に対する批判を踏まえ、公正・透明な行政の実現、公務及び公務員に対する国民の信頼確保の観点から特に以下のような点に留意。

 ・承認に当たっての承認基準を権限・予算等を背景とした再就職を認めない厳格かつ明確なものとするとともに、第三者によるチェックの仕組みについて検討する。
 ・大臣承認制、行為規制、公表制度全体として厳格、合理的で透明性のあるパッケージとする観点から、それぞれの制度の適切な役割分担(対象範囲等)について検討する。
 ・公表制度については、再就職状況全般の透明性の格段の向上を図る。

○ 公務部内で個々人の能力を最大限に活かす方策を講じつつ、真に個人の能力を活用した再就職については、これを支援する方向に転換。再就職規制等の検討に当たっては、能力ある人材の社会的有効活用の観点に留意するとともに、再就職支援方策(能力開発支援、人材バンク等)の充実を図る。


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