2001年6月13日《No.21》
公務員制度改革の「進め方」にかかわって
ILO総会で日本政府に非難が集中

  現在、ジュネーブで開催されている第89回ILO総会に設置された「基準適用委員会」では、日本における87号条約(結社の自由と団結権の保護に関する条約)の実施状況(個別ケース)が焦点となっています。
 現地からの報告(全労連・岩田事務局次長)によれば、6月12日午後3時からはじまった「個別ケース」の議論では、エチオピアに続き日本がとりあげられました。冒頭、日本政府は、(1)消防職員の団結問題にかかわっての「消防職員委員会」の運用状況、(2)公務員のストライキ禁止にかかわる日本政府の見解、(3)公務員制度改革にかかわる政府の検討状況(現時点では、ILOに情報提供できる状況にないとするコメント)、の3点について発言が行われ、使用者側(ドイツ)、労働側(ベルギー)のコメントの後、日本の労働代表(連合)から、(1)消防職員の団結権は否定され続けている、(2)公務員のストライキ権は「全面的・一律的」に禁止され87号条約に違反している、(3)進行中の公務員制度改革は、労働組合との協議が行われておらず、「ILO基準の実現、労使協議の保障、『大枠』が今後の交渉を制約しないことの希望」、について発言しました。
 これらに対して、フランス、パキスタン、アメリカ、スウェーデン、ドイツ、シンガポールの各労働代表が、日本の労働代表の指示を表明しました。

★日本政府代表が「(基本設計後も)職員団体と 誠実に交渉」と発言

 これに対して、日本政府は、(1)消防職員委員会の円滑な運用と定着、(2)公務員のストライキ権は各国の歴史的背景や公務員労使関係の状況等諸般の事情を考慮すべき、(3)12月の行革大綱や3月の「大枠」は、公務員制度についての政府部内の検討方向を示したもの。今後、職員団体をはじめとする関係者と誠実に交渉・協議しつつ検討。なお、閣議決定、「大枠」とも今後の交渉・協議を制約するものではなく、制度の具体的な内容は、職員団体をはじめとする関係者と交渉・協議していく中で順次決まっていくもの。また、6月末にとりまとめる「基本設計」も制度の具体的な内容を決定するものではなく、「基本設計」を示した後も職員団体をはじめとする関係者と誠実に交渉・協議する、と「反論」しました。
 これらをうけて、委員会議長が、「日本政府代表の表明に留意し、専門委員会『報告』に留意する。委員会は日本政府に対し、改善をもって労働組合と協議し、権利を保障することを期待する。労働組合との『社会対話』を希望し、次回政府が詳細に報告することを希望する。事態の進捗を期待する」との「結論」を述べて総会の報告が採択されました。

★労働基本権問題があらたな段階に

 公務員制度改革をめぐって、使用者である政府が、国公労連などとの交渉・協議を無視して進めていることが国際的にも糾弾され、日本政府が「今後、職員団体をはじめとする関係者と誠実に協議・交渉しつつ制度内容を検討」すると表明せざるを得ない状況に追い込まれたことを示しています。
 国際機関の会議の場とはいえ、公務員制度改革=公務員の労働条件変更にかかわって、使用者・政府が、「代償措置」(人事院勧告)に固執せず、職員団体(労働組合)と直接交渉で決定する姿勢を示したことは特筆すべきものです。実質的に、労働協約締結にふみこんだ「反論」とも言えます。署名集約や当局追及などを通じて、公務員制度改革の「進め方」を厳しく追及してきた運動の成果でもあります。ILO総会では、今後の日本政府の対応に注目することが述べられており、6月末の「基本設計」にむけた取り組みの重要性が鮮明になってきています。

以上


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