新たな人事制度について(検討案)

 

(注) この検討案は、5月29日に行革推進事務局が示したものです。

 

 目    次 

第1 新たな人事制度の狙い

1.信賞必罰の徹底
2.適材適所の人事配置の実現
3.人的資源の最大限の活用
4.適正な人事マネジメントの確立

第2 新たな人事制度の基本方向

T トータルシステムとしての新たな人事制度の構築

U 人材の活用・育成制度

1. 任用制度
 (1) 制度の狙い
 (2) 任用の原則(適材適所・信賞必罰)

2. 能力等級制度
 (1) 制度の狙い
 (2) 能力等級の体系
 (3) 能力等級への格付け

3. 人材育成コース制度
 (1) 制度の狙い
 (2) 制度の概要

V 給与制度

1. 給与制度の再構築の趣旨
 (1) 現行制度に関する問題意識
 (2) 新制度の基本方向
 (3) 新制度の体系

2. 能力給
 (1) 趣旨
 (2) 支給基準
 (3) 予算積算方法

3. 職責給
 (1) 趣旨
 (2) 職責ランクの設定及び格付け
 (3) 支給基準
 (4) 予算積算方法
 (5) 職務手当

4. 賞与
 (1) 趣旨
 (2) 基礎賞与
 (3) 業績賞与
 (4) 予算積算方法

5. 指定職の給与
 (1) 年俸制の導入
 (2) 年俸制の概要

6. その他の手当

W 評価制度

1. 評価制度の再構築の趣旨
 (1) 評価の重要性
 (2) 現行制度に関する問題意識
 (3) 新制度の基本方向

2. 能力評価制度
 (1) 能力評価の決定
 (2) 能力評価の用途
 (3) 評価区分の分布

3. 業績評価制度
 (1) 業績評価の決定
 (2) 業績評価の用途
 (3) 評価区分の分布

4. 目標管理制度
 (1) 制度の狙い
 (2) 制度の概要

5. 業務遂行規範
 (1) 狙い
 (2) 概要

6. 運用の適正化施策等
 (1) 評価結果のフィードバック
 (2) 評価者訓練と苦情処理

X 新制度の実施時期及び制度設計に当たっての留意事項

1. 新制度の実施時期

2. 制度設計に当たっての留意事項
 (1) 新制度への円滑な移行
 (2) 総人件費の適正な管理
 (3) 一般行政職以外の職員の取扱い


第1 新たな人事制度の狙い

1. 信賞必罰の徹底

 管理職と職員の双方に根強く残っている年功序列重視の意識を改め、公正で納得性の高い評価システムを整備した上で、職員一人一人の能力や業績を適切に反映した給与処遇を行い、能力の向上や業績の達成に対するインセンティブを高めることにより、健全な競争原理と緊張感に溢れた信賞必罰の組織風土を醸成する。

2. 適材適所の人事配置の実現

 若手優秀者の抜擢や官職不適格者の降任を含め、ポストごとに求められる能力に最も合致した適任者を機動的・弾力的に任用することにより、能力本位で適材適所の人事配置を推進し、その時々の行政課題に適切に対応し得る組織体制を実現する。

3. 人的資源の最大限の活用

 採用試験区分や採用年次に基づく硬直的な人事管理を改め、職員一人一人の主体的な能力開発を促し、その能力を十分に発揮させることにより、組織内の人的資源を最大限活用し、組織のパフォーマンスの向上を図る。

4. 適正な人事マネジメントの確立

 中央人事行政機関等による個別かつ詳細な事前規制を見直し、公務の中立公正の確保及び行政組織間の統一の保持等の観点から必要な基準を設けた上で、各府省が自らの判断と責任によって人事管理を行える体制を構築することにより、各府省において、明確な人材戦略と人事管理責任に基づく適正な人事マネジメントを推進する。


第2 新たな人事制度の基本方向

 

T トータルシステムとしての新たな人事制度の構築

 新たな人事制度は、「人材の活用・育成」「給与」「評価」等のサブシステムが相互に密接に関連し合うトータルシステムとして構築する。

(1) 人材の活用・育成制度を構築し、職員の適性や組織ニーズ等に応じて職員の能力を向上させるとともに、能力本位で適材適所の任用を行うことにより、組織目標の確実な達成を図る。

(2) 新たな給与制度を構築し、能力・職責・業績を給与に適切に反映させることにより、能力向上と業績達成に対するインセンティブを高める。

(3) 公正かつ納得性の高い新たな評価システムを構築し、職員の能力と業績を適切に評価することにより、人材の活用・育成や給与等、人事制度全体を有機的に機能させる。


U 人材の活用・育成制度

1. 任用制度

(1) 制度の狙い

 能力本位で適材適所の人事配置を行うことにより、組織効率の最大化を図る。

(2) 任用の原則(適材適所・信賞必罰)

 1) 能力等級制度(2を参照。)をベースとした適切な能力評価に基づき、若手優秀者の抜擢等、官職ごとに必要な能力に最も合致した適任者を適宜任用する。

 2) 管理職に初めて任用する場合は、人事管理能力等、管理職としての適性を厳正に審査する。

 3) 職責を十分に果たしていない職員に対する分限処分(降任、免職)を適切に実施するため、分限処分を行う基準や手続きの明確化等を図る。

 4) 現行の「職務の級」に代えて能力等級を導入することに伴い、昇任・降任の定義について所要の検討を行うとともに、採用試験について公務員としての一般的な適性、潜在能力を長期的視点に立って検証するものとして位置付けることとする。

2. 能力等級制度

(1) 制度の狙い

 職員(指定職を除く。)に対し、人材育成コース(3を参照。)に応じて求められる能力を段階的に示し、それに照らして各職員の能力を格付けることにより、能力向上の目標を明確化する。加えて、職員一人一人の能力に応じた給与処遇を行うことにより、職員の能力向上に対するインセンティブを高める。

(2)能力等級の体系

 1) 能力等級制度における「能力」とは、「職務上必要とされ、職務の遂行を通じて現に発揮されている職務遂行能力」とする。

 2) 現実の行政組織においては職員の能力が役職段階(課長、課長補佐、係長等)に応じて認識されていることから、具体的な能力の定義に当たっては一定の役職段階を想起させるものである必要がある。従って能力等級の体系は、組織区分(本省、地方支分部局等)ごとに標準的な役職段階との相関関係を持たせたものとする。

 3) 併せて、等級ごとの職務遂行能力の定義を納得性の高いものとする観点から、現行の「職務の級」(11級)より大括りすることを指向する。

※ 能力等級の体系(8等級とした場合のイメージ)

(注)上表は、現行の職務給からの移行、及び組織区分ごとの能力等級と役職段階との相関関係を示したもの

(3) 能力等級への格付け

 1) 「職務遂行能力基準」の策定
 等級ごとの能力段階を定義するため、組織区分ごと(必要に応じて職務分野ごと)に、等級と役職段階との相関を踏まえ、各等級に応じた役職段階の職務を遂行する上で通常期待されている能力を記述した「職務遂行能力基準」を定める。

 2) 能力等級への格付け(昇格・降格)
 「能力評価制度」(W2を参照。)に基づく評価の結果が優れており、かつ、職務遂行能力が上位の等級の職務遂行能力基準に合致すると認められる職員について、各府省の昇格枠の範囲内で昇格させる(現行の在級年数等のような昇格要件は設けない。)。
 一方、能力評価を行った結果、著しく能力が減退しており、格付けられている等級の職務遂行能力基準を満たしていないと認められる職員は、降格させる。

 3) 役職段階との関係

  a)「職務を通じて現に発揮されている職務遂行能力」の体系という制度の趣旨から、各職員の能力等級(格付)と役職段階(任用)は、通常、能力等級体系と役職段階との一般的な相関関係に合致したものとなる。

  b)従って、上位の等級に応じた役職段階に昇任させることなく職員を昇格させることは、原則として行わない。

  C)一方、上位の等級の能力基準に達していない職員が当該上位の等級に応じた役職段階のポストの最適任者である場合(専門的な職務知識等が不可欠であるポスト等)には、昇格を伴うことなく昇任させることを妨げるものではない。

※ 昇任と昇格の関係(本府省の例)

 4) 昇格枠の設定

  a)制度の適正な運用を図るため、府省別に等級ごとの人数の枠を設定し、これに基づいて各年度の昇格枠を管理する。

  b)能力等級ごとの人数の枠は、現行の「級別定数」のように個々のポストを級に格付ける結果として決定するのではなく、適正な昇格管理及び総人件費の不適正な膨張の防止を図る観点から、各府省の機構や人員の構成等に鑑み、能力等級への適正な格付けを行う上で必要な人数を設定する。

  注)例えば本府省の場合、能力等級の「7・8級」に応じた役職段階を「企画官・室長・参事官・課長」とし、この範囲内ではポストにかかわらず能力評価のみに基づき等級格付けを行う。

3.人材育成コース制度

(1) 制度の狙い

 職員(指定職を除く。)に対し、長期的に活用されることが予定される職務分野の方向性等を明示することにより、自らのキャリアパスを明確に意識させ、自己研鑽による主体的な能力向上を促すこと等を通じて、計画的な人材の育成を推進する。

(2) 制度の概要

 1) 各府省において、それぞれの所掌事務、職務分野等に応じた複数の「人材育成コース」を設ける。

 2) 各職員の人材育成コースは、職員の希望・適性や組織のニーズ等を踏まえて人事担当部局が決定する。なお、人事育成コースの決定に当たっては、必ず管理者と職員で話し合いを行う。

 3) 人事担当部局は、各職員の人材育成コ一スに基づき、職員の希望・適性を踏まえて中期的な育成・活用計画を策定する。当該計画の内容については、年1回、管理者と職員で話し合いを行う。

注1)人材育成コースの決定時期については、当該コースの性格等に応じて、各府省が適宜定める。

 2)人材育成コースは、職員の希望や組織ニーズの変化等に応じて適宜変更できる(その都度管理者と職員で話し合いを行う。)。

 3)育成・活用計画は、その実現を職員に約束するものではない。


V 給与制度

1. 給与制度の再構築の趣旨

(1) 現行制度に関する問題意識

 1) 現実の行政組織においては、政策企画立案部門を中心に、ポストごとの職務内容を固定的に捉えず状況に応じて弾力的に変化させながら業務が遂行されているため、現在の職務給原則に基づく給与制度の下では、職員の多様な貢献度に応じた給与処遇が行われにくい。

 2) 勤続に応じてほぼ自動的に昇給し続けるなど、過度に年功的な給与処遇が行われている。また、勤務成績の給与への反映についても、「評価の持ち回り」が行われているなど、適切に機能していない実態が見られる。

 3) ポストと給与が直接結びついているため、給与処遇への配慮が年功重視の任用を助長し、組織ニーズに応じた能力本位で適材適所の人事配置を妨げている面がある。

(2) 新制度の基本方向

 1) 職員一人一人を多様な側面から評価し、総合的な貢献度を適切に反映した給与を実現するとともに、組織ニーズに応じた機動的・弾力的な人事配置を推進するため、現行の職務給原則を改め、給与体系を「能力に対する給与」「職責に対する給与」「業績に対する給与」に分割し、それらを指定職(審議官以上)、管理職層(本府省においては企画官以上、地方支分部局においては課長以上)、一般職層(課長補佐以下)ごとに適切な比率で組み合わせたものとする。
 (特に「職責に対する給与」については、環境変化に応じて各府省が主体的に各ポストの職責の大きさを評価し、弾力的に給与を決定できることとする。)

 2) 過度に年功を重視した昇給の仕組みを改め、公正で納得性の高い評価システムの下で職員の能力と業績を適切に評価し、能力の発揮や業績が十分な者はそれに見合う処遇を行う一方、そうでない者は昇給させないなど、評価結果を給与に的確に反映させることにより、能力向上と業績達成に対するインセンティブを高める。

(3) 新制度の体系

 1) 指定職・管理職層・一般職層の給与の構成要素

 2) 月例賃金及び賞与の構成要素

注1)指定職の給与は年俸制とする。職責年俸と業績年俸の合計額で年収を管理し、月例賃金と賞与とに分割して支給する。

 2)指定職以外の職員の給与については、現行の俸給に代えて「能力に対する給与」を基本給とし、併せて「職責に対する給与」「業績に対する給与」を支給する。

 3)基礎賞与は、月例賃金に比例して算出する。

 4)一般職層職員の「職責に対する給与(職務手当)」は、特に職務の負荷が高い者(例えば、本省の課長補佐・係長)に限って支給する。

2. 能力給

(1) 趣旨

 1) 管理職層及び一般職層を対象に、能力等級及び能力評価に基づき、職員の能力に対応した給与として「能力給」を設ける。

 2) 現行の俸給に代わる基本給的な位置付けとする。

 3) 現行の俸給と比べて、能力向上及び業績達成に対するインセンティブを高めるとともに、勤続に応じた年功的な昇給を抑制する。

(2)支給基準

 1) 「定額部分」と「加算部分」の合計額とする。

 2) 「定額部分」は、能力等級別の定額とする。

 3) 「加算部分」は、毎年の評価に基づいて年1回加算(昇給)を行う(評価区分に応じた加算額テ一ブルを設定)。なお、評価が不良な場合は、加算を行わない。
 また、勤続に伴う給与の伸長を能力段階に応じた適正な水準の範囲内とする趣旨から、能力等級別に加算上限額を設定する。

 4) 定額部分及び加算部分(評価区分別加算額及び加算上限額)のテーブルは各府省共通とし、法律等で定める。

 5) 昇格の際の加算部分の取扱いについては、昇格後の額(定額+加算)が昇格前を下回らないようにするなど、別途検討する。

(能力給のイメージ)
・ 毎年の加算額は評価に基づいて行うため職員・年度により異なる。
・ 原則として加算上限額までの範囲内で加算を行う。

(3) 予算積算方法

 1) 定額部分
  能力等級別定額と各府省毎の能力等級別の人数の枠との積算による。

 2) 加算部分
  昇給額テーブル及び評価区分の基準分布率と、各府省毎の能力等級別の人数の枠との積算による。

3. 職責給

(1) 趣旨

 1) 管理職層については、ポストごとの「職責に対する給与」として「職責給」を設ける。

 2) 職責の大きさは、同じ役職段階であっても個々のポストによって幅があり、また、その時々の行政課題に応じて変動することを踏まえ、職責ランクをきめ細かく設定し、その業務遂行上の必要に応じて各府省が弾力的に格付けを行う。

 3) 職務負荷が特段に高い一般職層職員(例えば、本省の課長補佐、係長)を対象として、その職務負荷に対する給与として、「職務手当」を設ける。

(2) 職責ランクの設定及び格付け

 1) 現行の「俸給の特別調整額」の支給額区分等を踏まえつつ、各役職段階の職責の違いにきめ細かく対応できるよう、職責ランクの数及び役職段階別の格付基準を設定する。

※ 役職階級別の格付基準例(仮に8段階とした場合のイメージ)

注1)さらに弾力的な格付基準の必要性について、別途検討する。
 2)「地方出先機関A」は府県単位機関がない場合、「地方出先機関B」は府県単位機関がある場合の例。

 2) 各府省は、職責ランク格付基準に従い、職責給予算総額の範囲内で、ポストごとに実際の職責の大きさを困難度、責任度、重要度等の観点から評価し、格付けを決定する。

(3) 支給基準

 1) 職責ランク別の定額とする。

 2) 職責ランク別定額のテーブルは各府省共通とし、法律等で定める。

(4) 予算積算方法

 1) 制度移行時において、一定のルールに基づきすべてのポストを職責ランクに格付けることによって、各府省毎の職責給予算総額を算出する。

 2) 原則として、1)で算出された総額の範囲内で、職責ランク別定額と職責ランクごとのポストの数との積算による。

(5) 職務手当

 1) 役職段階別の定額とする。

 2) 職務手当の支給基準は各府省共通とし、法律等で定める。

4. 賞与

(1) 趣旨

 1) 賞与を基礎賞与(安定的支給部分)と業績賞与(業績反映部分)に分け、このうち「業績賞与」を「業績に対する給与」と位置付ける。

 2) 管理職層については、業績達成に対するインセンティブをより一層高めるため、一般職と比べて業績賞与の割合を高く設定する

(2) 基礎賞与

 1) 月例賃金(能力給+職責給又は職務手当)に係数を乗じて算定する。

 2) 係数は各府省共通とし、法律等で定める。

(3) 業績賞与

 1) 能力等級別・評価区分別の定額とする。

 2) 業績賞与基準テーブル及び評価区分の基準分布率は法律等で定める。

 3) 各府省は、業績賞与基準テーブル及び評価区分の基準分布率を踏まえつつ、業績賞与予算の範囲内で、実際に適用する業績賞与テーブル及び評価区分の分布率を定める。

(4) 予算積算方法(業績賞与部分)

 業績賞与基準テーブル及び評価区分の基準分布率と能力等級別の人数の枠との積算による。

5. 指定職の給与

(1) 年俸制の導入

 指定職については、能力の進捗の評価に馴染まず、組織目標の達成に対する結果責任を負う重大な職責を担うことを踏まえ、職責に対する給与を基本に業績反映を含めた年俸制を導入する。

(2) 年俸制の概要

 1) 「職責年俸」(年度始めに設定)と「業績年俸」(年度内で変動)の合計額とし、月例賃金と賞与に分割して支給する。

 2) 職責年俸は、当年度予定されている職責に応じて決定する。

 3) 業績年俸は、業績評価に応じて決定する。

6. その他の手当

 その他の手当の取扱いについては、今後検討する。


W 評価制度

1 .評価制度の再構築の趣旨

(1) 評価の重要性

 1) 人事評価は、現に発揮された能力や業績を合理的な基準の下で評価し、その結果を適材適所の人事配置や適正な処遇等に反映させ、また、各組織が職員に求める能力や役割期待など人事戦略を職員に最も効果的に伝達する人事管理の基本となる手段である。

 2) また、給与制度をはじめとする新人事制度の運用のためには、評価制度の適切な実施が不可欠の前提となる。

(2) 現行制度に関する問題意識

 現在、勤務評定制度はあるものの、特別昇給や勤勉手当への反映に当たって「評価の持ち回り」の実態が見られ、また、能力・実績に基づく人事管理の基礎として活用できる仕組みが他にないことから、従来の人事評価に代わる新たな評価制度の導入が必要である。

(3) 新制度の基本方向

 1) 人事制度をトータルシステムとして機能させるため、現行の勤務評定制度に代え、「能力評価」と「業績評価」からなる新たな評価制度を構築する。

 2) 職員の能力と実績を的確に把握できることを前提に、評価基準や用途の明確化、評価結果のフィードバック(職員への説明)の義務付け等により、評価の公正性・納得性を担保する。

 3) 新制度の円滑な導入を図るため、一定期間の試行を経て、本格的な実施に移行することを検討する。

2. 能力評価制度

(1) 能力評価の決定
 1) 直近1年間において現に発揮された職務遂行能力を観察し、能力等級ごとに設定する評価母集団の中で、職務遂行能力基準に照らして能力の程度を評価する。(なお、管理職の評価に当たっては、部下等の意見を聴取し、参考とする。)

 2) 母集団を可能な限り拡大し、複数の評価者が関与して評価を決定するというステップを踏むことにより、評価結果がより客観的なものとなるような制度を指向する。

(2) 能力評価の用途

 能力評価は、任用、能力等級の格付け(昇格・降格)、人材育成等のベースとする。

(3)評価区分の分布

 職員に反省を促すことよりも能力を向上させた職員の士気の高揚を図ることを重視する観点から、評価区分の分布については、標準者を平均値とした正規分布ではなく、加点主義的な分布を指向する。

3. 業績評価制度

(1) 業績評価の決定

 1) 目標管理制度における評価結果に基づき、能力等級ごとに設定する評価母集団の中で、一定期間における業績を評価する。

 2) 能力評価と同様、母集団を可能な限り拡大し、複数の評価者が関与して評価を決定するというステップを踏むことにより、評価結果がより客観的なものとなるような制度を指向する。

(2) 業績評価の用途

 業績評価は、給与処遇の決定要素とする。

(3) 評価区分の分布

 評価区分の分布については、能力評価と同様職員の士気の高揚を図る観点から加点主義的な分布を指向しつつ、業績の低い職員に反省を促すという視点も十分考慮して設定する。

4. 目標管理制度

(1) 制度の狙い

 その時々の組織目標を確実に達成することを主眼とし、併せて業績の合理的な評価に資するため、目標管理制度を導入する。

(2) 制度の概要

 一定の期間毎に、組織の業務目標に基づく各職員の業務目標を設定し、期間終了時に業務目標の困難度及び達成度等を評価する。また、目標の設定及び評価に当たっては、上司と職員で話し合いを行う。

(目標管理の実施イメージ)

注)総合評価は、業績を給与に反映させるために行うものである。

5. 業務遂行規範

(1) 狙い

 個々の職員が、所属組織の使命と業務目標、組織内での自らの役割、求められる行動を明確に意識しつつ業務に当たることにより、組織としての業務成果の最大化を図る。

(2) 概要

 各府省は、業務遂行の基本となる組織単位(原則として課を想定)ごとに、中長期的な組織目標(使命)及び各年度の業務目標並びに業務の性格を踏まえた職員に求められる行動基準を記述した業務遂行規範を定める。
 目標管理制度における職員個人の業務目標は、業務遂行規範に定められた組織の業務目標等を踏まえて設定する。

6. 運用の適正化施策等

(1) 評価結果のフードバック

 1) 評価制度について、任用や給与処遇に反映させることはもとより、職員の育成に役立てるものとするため、評価結果のフィードバックを義務付ける。

 2) 評価結果が低かった職員に対しては、挽回の機会を与え職員の意欲や志気の低下を招かないようにするため、適切な指導、研修の実施又は配置換などを行う。

(2) 評価者訓練と苦情処理

 1) 評価者に評価制度の趣旨を正しく理解させるとともに、評価能力を十分に習得させるため、評価者訓練を実施する。

 2) 評価の手続きや結果等に対する職員の苦情については、評価者による評価の決定及び評価結果の適切なフィードバックにより、苦情を生じさせない努力をし、なお職員の苦情が生じた場合には、各府省の人事担当部局が適切に苦情相談の措置を講じる。

 3) 各府省の人事担当部局において解決に至らなかった苦情については、第三者機関に対する苦情相談の手続きを整備する。


X 新制度の実施時期及び制度設計に当たっての留意事項

1. 新制度の実施時期

 新制度の実施時期については、準備期間等を踏まえた上で、制度ごとに別途定める。

2. 制度設計に当たっての留意事項

(1) 新制度への円滑な移行

 1) 新人事制度の在るべき姿を基本としつつ、現在の人事管理や組織管理の実態を考慮し、実効性のある制度を設計する。

 2) 制度移行に伴う給与の取扱い、評価制度に係る試行期間の設定など、適切な移行措置を講じることを検討する。

(2) 総人件費の適正な管理

 総人件費の不適正な膨張を防ぐため、予算管理や枠管理が適正に行われるような仕組みを設ける。

(3) 一般行政職以外の職員の取扱い

 本制度案は、行政職俸給表(一)適用職員を念頭に置いており、他の俸給表適用職員に係る制度の設計については、それぞれの職務の特性等を勘案し、別途検討を進める。


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