逆立ちの公務員制度「改革」をこれ以上進めさせてはならない
- 「基本設計」にむけた「改革」提案の撤回をもとめる(談話) -

 公務員制度改革の検討を進めている行革推進事務局(事務局)は、本日、「あらたな人事制度について(検討案)」(検討案)を国公労連に「提案」してきた。
 その検討案は、公務員の「意識・行動原理の改革」と行政の「組織・活動原理の改革」という二つの目的での、公務員制度「改革」の「基本設計」を6月中にとりまとめるための、「たたき台」と位置づけられている。

 検討案は、人事管理における信賞必罰を徹底するため、(1)適任者の抜擢と不適格者の降任等を推進する任用制度(分限降任・免職の手続き・基準の明確化)、(2)8段階程度からなる「能力等級制度」の新設、(3)職務給原則を改め、能力、職責、業績に分割した給与制度、(4)能力評価、業績評価(目標管理制度)、業務遂行規範からなる評価制度、(5)総人件費の膨張を防ぐための予算管理などの仕組み、で構成されている。人事管理を能力・業績評価にもとづいておこなうために、賃金、評価、任用制度を抜本的に「改革」することを表明したものである。
 国公労連は、個人の能力や業績のみに着目した人事管理は、集団的な業務態勢で、行政サービスを安定かつ中立・公正に提供することを最大の目的とする公務にはそぐわないことを繰り返し主張してきた。検討案の中心となっている「能力等級制度」は、賃金水準の決定基準を恣意的な要素が入り込む「評価」や学歴などに求めるものであり、不平等な人事管理を助長する危険性が極めて大きく、T種キャリアの特権的人事に制度上の保障をあたえ、差別的人事を助長し、国民サービスより上司の目を気にする「公務員づくり」につながりかねない。

 「能力評価」などを通して、労働条件決定にあたっての当局の恣意性が今まで以上に強まることに加え、検討案では、賃金決定と直接かかわる「級別定数」について、総人件費の枠内で、各省当局が「基準」にもとづき運用することも盛りこまれている。しかし、労働条件の中核である賃金決定にあたっての当局の権限が拡大する検討を明言しながら、労働基本権やそれとかかわる人事院勧告制度との関係について、なんらの検討方向も示していない。労働基本権という憲法にもかかわる重大な問題をもてあそぶ、極めて偏向した検討姿勢であるばかりか、検討案の性格を「たたき台」というあいまいな位置づけにしたままで、1ヶ月間で公務員制度「改革」の基本的な内容を確定させようとしていることも、公務員労働者の基本的人権を侵すものである。政治主導を隠れ蓑に、現在あるルールすら無視してすすめようとする事務局の姿勢は、「この国のかたち」改革のもとで強まっている集権的権威主義の強まりを示しており、そのことは、政府がすすめる公務員制度「改革」とは、国公労働者はもとより国民にも背をむけたものであることを端的に示している。

 国公労連は、「大枠」のさらなる具体化に他ならない検討案は、その内容はもとより「提案」の性格、手順などからして到底受け容れることはできない。公務員労働者の労働条件変更にかかわるルールさえ無視して進められる違憲の公務員制度「改革」の即時中止を強く求める。

 2001年5月29日

日本国家公務員労働組合連合会
                          書記長  小田川 義 和

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