(2001年5月11日第6号)
全労連が公務員制度民主化へ
各単産・地方組織に協力要請

 5月11日、全労連は、「『公務員制度改革』に対する取り組みの要請」を各単産・地方組織に発出しました。(以下、要請文を掲載します)

 ★「公務員制度改革」に対する取り組みの要請(全労連「公務員制度改革」対策本部 2001年5月11日発出)
 3月27日、政府は「公務員制度改革の大枠」を発表しました。5月26日発足した小泉内閣は「聖域なき構造改革」の断行を表明しています。「大枠」は、一部官僚と民間人による「国家戦略スタッフ群(仮称)の創設」、国家公務員の人事権と政策立案・執行の権限を大臣に移すことを大きな柱としています。これは「全体の奉仕者」としての公務員から政権党に奉仕する公務員づくりに狙いがあることは明らかです。
 「公務員制度改革」問題は、公務労働者だけの問題ではなく国民生活全般に関わる重大な問題です。この問題の帰趨は国民世論にあります、広く労働者・国民に本質を明らかにすることが決定的に重要です。
 全労連は、こうした事態にあたって「『公務員制度改革』対策本部」を設置しました。政府が6月に「基本設計」を出すというもとで、当面するとりくみについて下記のとおりとしますので単産・地方組織において積極的な対応を要請します。

1、単産・地方組織への協力要請
 「公務員制度改革」問題についての理解と運動への支持要請に対応してください。
 @単産要請には対策本部と公務関係単産役員が訪問し要請します。
 A地方組織には各県公務労組連ないしは公務単産代表が訪問します。

2、「署名」「宣伝ビラ」への協力
 既に公務労組連絡会として「国民のための公務員制度確立を求める請願署名」にとりくんでいます。併せて、「公務労組連絡会・国公労連」「公務労組連・自治労連」のビラが作成されています。これへの積極的な協力をして下さい。
 @単産については対策本部として要請します。
 A地方組織には事務局から郵送します(ビラ総数1万枚)。

3、全労連としての基本方針
 全労連としての基本方針は5月31日開催の単産・地方代表者会議に提起します。(以上)

 ★メーデーで女性組合員先頭に170筆署名あつめる〈兵庫県国公〉
 兵庫県国公では、5000人が参加した兵庫県中央メーデーで署名行動をおこないました。「天下りの自由化となる公務員制度改革には反対しましょう」と訴えながらの行動に参加したのは5単組15名。全労働の女性組合員が先頭にたって署名を訴えてくれるなど華やかさも加わり、短時間で170筆を集約することができました。
県中央メーデーに初めて参加したという、全労働兵庫支部の宮本純治さん(29歳)は、「開会前から会場入口に陣取り、ビラを配りながらの署名行動。街頭で行うのとはまったく違い、次々と署名に応じてくれることに快感を感じ、改めてさまざまな団体との共闘の必要性を感じました。メーデーという言葉は知られているでしょうが、その意義や目的などをもっと幅広く訴えていくことも重要だと思いました」と感想を寄せてくれました。(兵庫県国公・山本邦夫事務局長記)

 ★愛知メーデーで署名116筆/県労連各単産組織へ協力を要請〈愛知県国公〉
 公務員制度改悪反対署名の署名用紙・グッズが愛知国公書記局に届いたのが4月25日。そこから各単組に届けて、実際のとりくみは連休明けからという状況でした。しかし、急を要するとりくみであり、愛知国公幹事会として各単組に「やる気」を示す必要があると5月1日、名古屋市北区の名城公園で開催された第72回愛知県中央メーデー会場入口で、署名宣伝行動を実施しました。
 メーデー集会が始まる前の約1時間、各種の署名が入り交じる中、愛知国公幹事会と各単組の仲間が、メーデー参加者に協力を訴え、116筆を集めることができました。
愛知国公では、県労連から「お墨付き」をもらい、連休明けの5月7・8日に各単産・団体の県段階組織をまわって協力要請を済ませました。これから本格的に職場段階からとりくみがスタートします。(愛知県国公・宇野進二事務局次長記)

 ★人事院職組が公務員制度改革問題で声明を発表
 人事院職員組合執行委員会が、5月10日、「公務員制度改革についての『大枠』決定にあたって」と題する声明を発表しました。(以下、声明文を掲載します)
 公務員制度改革についての『大枠』決定にあたって

 政府の行革推進事務局は、3月27日、「公務員制度改革の大枠」を決定、公表した。「大枠」は、「中立・公正で国民から信頼される質の高い効率的な行政の実現」を目標に掲げるなど、一見すると国民のニーズに応えるかのような装いを凝らしている。
 しかしながら、そこで示された内容を詳細にみていくと、国家公務員法を基として成り立っている「民主的公務員制度」を大きく後退させるものであるとしかいえない。「信頼される公務員」、「機動的な組織」など、ちりばめられた受けのいい言葉とは裏腹に、結局は、公正・中立で安定的な行政サービスを損ない、民主的かつ能率的な公務を国民に保障するという真の行政改革には逆行するものでしかない、危険性に満ちたものである。

 問題点の第一は、「信賞必罰の人事制度の確立」の名のもとに、職員同士の競い合いや業務効率の追求を求めている点である。この観点には、『公務行政』への基本的認識が著しく欠如している。「大枠」でいう信賞必罰は、政府・与党の意向に沿った行政を行う公務員ほど評価され、国民全体の奉仕者という視点から行政を遂行する公務員は評価されないという現状の悪弊を公然化し、さらに加速させるものにしかならない。今以上に、政官癒着的なことが得意な公務員ほど評価され、国民全体の奉仕者として、国会が定めた法に基づき、いつでもどこでも同質の行政サービスを公正・中立に実施している公務員(例えば、離島で働く職員、24時間交替制で働く職員、窓口第一線で働く職員など)が十分に評価されるものとはなっていない。

 問題点の第二は、労働基本権の代償機能として、中立・公正な第三者機関としての人事院に委ねられている人事院勧告、定数設定、勤務諸条件に関わる規則制定権などを各省大臣の権限とすることである。しかも、それらの構想が成立する際には、当然、公務員労働者にも「労働基本権」が保障されるべきであるにもかかわらず、それについては曖昧なまま強行する姿勢がかいま見られる。
 争議権を含む労働三権が、法的に明確な形で公務員労働者に保障された上で、使用者たる各省大臣と、職員を代表する公務員労働組合が、交渉によって労働条件を決定するというのが当たり前であり、労働基本権が保障されないまま各省大臣が一方的に労働条件を決定するということでは、国公労働者は戦前の無権利状態に等しい立場におかれることになる。

 問題点の第三は、責任ある人事管理体制の確立のため、各省大巨を「人事管理権者」として位置づけ、人事院が行っている人事管理に係る事前承認、協議制度を廃止し、省内組織の改編や給与設定を各省大巨が自由に行えるようにすることである。
 人事院には、労働基本権の代償機能以外にも、本来的に、公正・中立・安定した行政を担保するための、中央人事行政機関としての役割がある。人事院の定める基準により、職務分類、試験、任免、身分保障、服務、研修などの業務が各省職員に統一的に行われてきている。「大枠」では、人事院の役割を廃止した後、どのように運用していくのか定かでなく、「政治主導」によって各省大巨が自由に実施できるならば、公正・中立・安定性は大きく損なわれ、ひいては、国民への行政サービスの低下も懸念される。

 問題点の第四は、営利企業への再就職について、人事院による事前承認制度を廃止する点である。かわりに、各省大臣が直接承認するとしているが、きわめて不十分な措置といわざるを得ない。「政官財」癒着が国民からも強く指摘される中、むしろ、再就職する者と企業との関係だけで規制している承認基準を、当該省庁と企業との関係でチェックするよう強化する必要がある。

 問題点の第五は、官民の人材交流についても、人事院の承認、協議の廃止を検討し、さらに「国家戦略スタッフ群」の創設や、人材の公募制の導入を提起するなど、採用や昇任に関しても人事院の規制をはずそうとしている点である。任免行為における人事院の規制は、情実人事や、政治家の介入による不公正な選考採用を排除することが目的であり、「行政の政治的中立性」を保障するものである。

 今次行革に関わる「公務員制度」の検討は、橋本内閣時に、専門機関たる「公務員制度調査会」において審議され、当時の橋本首相へ答申が行われ、首相自身が、現行の公務員制度を了としたものである。「大枠」で提起されている問題の多くは、公務員制度調査会の審議を無視したものといえ、政府の姿勢の大きな矛盾点である。
 さらにいえば、「大枠」で指摘している問題点からは公務員制度改革の必要性は浮かんでこない。T種採用職員の特権的な人事、年次中心的な昇進管理、政策立案能力の低下、セクショナリズムによる機動的・総合的対応の欠如など指摘されている問題は、いずれも公務員制度の問題ではなく、各省の人事運用の問題であって、改革の意識があれば、現行制度の下で十分に対応可能なものばかりである。

 以上、我々は、現行の公務員制度は、労働基本権問題や、各省管理のあり方を含め、国民への行政サービス改善の観点から、改革していく必要性があると考えている。しかし、政府による「大枠」を基にした制度の基本設計が強行されるならば、公務員労働者の労働環境は、非常に悪化することとなり、国民への中立・公正・安定のサービス提供に多大な影響を及ぼすものと危惧している。
 したがって、「大枠」を基にした公務員制度改革には全力を挙げて反対するとともに、よりよい公務員制度実現のために奮闘するものである。
   2001年5月10日 人事院職員組合執行委員会

以上


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