(2001年4月12日第2号)
大枠で行政改革推進事務局と交渉
--道理のない公務員制度改革を追及

 国公労連は本日午前、前回3月27日に引き続き行政改革推進事務局に対して「公務員制度改革の大枠」にかかわる2回目の申し入れを行いました。
 申し入れには、小田川書記長、黒田書記次長、津田、高森両中執が出席し、行政改革推進事務局からは、公務員制度等改革室高原参事官、堀江企画官外が出席しました。

 冒頭、小田川書記長から「3月27日大枠が出された日にも申し入れを行ったが、今回は、大枠の中身について幾つか議論したい」と切り出しました。

 申し入れの概要は以下のとおりです。
□ なぜ公務員制度改革なのか
○ 前回3月27日に提出した申し入れの前文にも書いているが、率直に言ってなぜ公務員制度改革を行わないといけないのか疑問である。
 我々は、50万国公労働者は法律に基づいて行政を執行することが基本だと考えている改革を議論する場合でも、憲法15条に立ち帰った論議が必要だ。今回出された「大枠」は、その点が曖昧で、公務員の「全体の奉仕者」としての理念と相入れない。
● 「大枠」の1〜3Pにある公務員制度改革の意義に相当思い切ったことを書いている。公務員制度改革がなぜ必要なのかは、ここに書いている。1月6日に新たな省庁体制がスタートしたが、中身の公務員制度は50年前にできたままだ。今回の公務員制度改革と、中央省庁の再編とは、目的は同じだ。
 具体的には、2点で、1つは、国際競争力のある政策を立案できるか公務員の確保。もう1つは、例えば前例主義や予算消化主義がまん延していないか、国民の視点に立って自覚的に再点検する姿勢を持った公務員への意識改革、という問題意識から公務員制度改革が必要だと考えている。

□ 官と民との関係
○ 今この瞬間でも、離島で気象観測に頑張っている公務員がいる。海上勤務で頑張っている公務員がいる。24時間勤務体制の管制官がいる。職業安定所の窓口で休みも取れずに頑張っている公務員が地道に仕事を行っている。何れも法に基づいて行政サービスを行っている訳で、それがなぜ公務員制度改革に結びつくのか。
● 言われたことは、官と民との関係ではないか。今言われた管制官やハローワークなど、地道に仕事を行っている公務員を否定するものではない。本当に国民が、全ての公務労働を是認するのか、国民の視点に立った働き方、仕事の再点検をしないといけない。
○ 公務員労働者にとっては、公務員制度は働き方の問題としてとして問うたつもりだが、回答は、組織としての在り方、民営化も含めて大枠の内容が考えられるということか。
● そうだ。
○ 離島や過疎地も含め、全国で公正、同質なサービスを提供しなければならない公務という視点こそ重要ではないのか。同じ仕事をしているから、全国どこでも同じ勤務条件をという公務員制度の基本があるはずだ。
● 特殊条件を否定するものではない。国民との関係でどうするかだ。民間との関係で、前例主義とかお役所仕事とか言われないよう見直しを行う必要がある。
○ 前例主義というが、それは法律や通達、或いは先例を踏まえるからこそ、安定した行政サービスが提供できるのではないか。
● 今の公務員制度は、効率的で直すべきところはなく、公務員制度を改革する必要はないと国公労連は考えているのか。予算消化主義など改革すべきところが色々あるはずだ。
○ 予算消化主義と言われたが、予算制度の問題ではないか。それをなぜ公務員制度を改革する理由に置くのか、すり替えだ。
● 色々な制度が絡み合っているのはそのとおりだ。公務員制度を見直すのは、行政を正しい道に導く1つの大きな契機だと考えている。
○ 現場で日々頑張っている公務員のは、世の中の変化に対してはるかに敏感だ。例えば、ハローワークでは、窓口に待たされていら立っている失業者と喧嘩するのが仕事ではない。現場は、社会の変化にちゃんと対応した行政サービスを提供するため、毎日苦労している。公務員制度を変える必要はない。
● 具体的にどう公務員制度を変えるのか検討がまだ見えていないので職場に不安があると思うが、職務の違いも踏まえた改革とするため、ご意見をどう取り入れるのはこれから検討していく。

□ 企画立案部門と実施部門
○ 50万国公労働者の大多数は実施部門であり、政策の企画・立案は、大多数の公務員労働者の業務ではない。意義・目的の前に、どこに焦点を置いた改革をするのかも重要だ。今回の大枠は、政策立案のことが強調されている。政と官の関係にも係わるが、公務員の政治的中立についてどう考えているのか。
● 政との関係は、3Pに書いているが、ここまで思い切ったことを書くのかとの意見もあったが、『真の政治主導とは、内閣を通じたものでなければならず、「政」「官」は、内閣という場で共に協力し合い、国民の負託を受けた「政」が大胆な価値選択・政策決定を行い、「官」がこれを政策立案面や実施面でサポートすることが必要』であって、まさに、『こうした「政」と「官」の関係がしっかり根を張り、その上で国民のための政策の企画立案と実施が進められていかなければならない』としている。
 我々は、国の運営は政治主導で良いと思う。国会議員は、国民に選ばれたのだから。行政は内閣を通じたものでなければならず、内閣主導で良いと思う。
○ その考えは変わらない。とすれば、政治をサポートするものと職業公務員との区分から議論しても良いではないか。大枠は、政策部門の機動性を中心に置いて議論されているように思える。今の公務員制度は、上は次官から下は平職員までが同じ制度の土俵に乗っていることに限界があるというという問題設定もあるのではないか。
● 企画立案部門の者が書いた大枠と言っているように聞こえるが、実施部門のところも相当意識して書いた。橋本大臣も、企画立案部門だけでなく、窓口業務も含めた実施部門のことも書かないとダメだと指示されている。実施部門のことも考えて、業務遂行規範の作成についても書いている。
○ 業務遂行規範は制度問題か。業務遂行規範などは、今でも作れないことはないのではないか。改革改革と言う。しかも白地からの改革の中身とはなり得ない問題意識が大枠では書かれている。制度問題より、運用問題が大部分ではないか。公務員制度は改革すべきものとのロジックを置いて、あれこれ言ってたいるようにすぎない。しかも、大枠は一方的に示して、その中で議論しろでは余りにも乱暴だ。
● 大枠は、検討の方向性を示したもの。4Pにもそう書いてある。
○ そうすると、枠が崩れるということもあるのか。
● 大枠はあくまでも、検討の方向を示したものだ。4Pに書いてあるように、『次のような基本的方向で、今後更にその具体化に向け検討を進めていく』とある。職種の特殊性だとかバリエーションはこれからの検討だ。

□ 信賞必罰の人事管理
○ 5Pからはじまる公務員の意識・行動原理の改革で、信賞必罰の人事制度の確立とあるが、信賞必罰の中心は、賃金と評価だ。まず、賃金はどうあるべきは、労働条件の大幅な変更の問題であり、きちんと交渉のテーブルにつくべきだ。
● それは、具体的な案が固まった段階でと考えている。今回のは大枠でしかない。そこは、方向が固まってから、当然労働条件だから交渉になるだろう。
○ 節目、節目に対応するのか。
● 節目とはどんな時期と考えているのか。
○ 大きな変更について検討をはじめる場合は、節目だと考えている。例えば、職務給を廃止するとあるが、廃止しすると決定したところから議論することではダメだ。
● 1月から検討して今回大枠を出した。それからこの基本方向で検討し、それが固まった時点でと考えている。
○ 3要素の賃金制度のもとで、労働条件の改悪にならないするにするには大変困難なことだ。基本設計が終わってからではダメだ。
● 今は、企画段階だから各省からも意見は聞く。私どもの検討のやり方は、6月の基本設計でどこまで書けるか明確なものは持っていない。1月からの段階もそうだが、今後検討していくこれからの課題だ。各省には色々な職種がある。今週火曜日に、各省の官房長を集めて、竹島内閣官房副長官補から協力してほしい、要望も言ってほしいと要請した。その下の人事企画官クラスの連絡会もできた。
○ 各省が、この大枠に基づいてある程度主体的に検討するのか。
● 一義的な責任は、私どもにある。各省に検討をお願いすることはない。ただ、制度官庁があるので、協力をお願いすることはある。改革の案を作るのは、事務局である。
○ 各省は、この大枠の方向ではやっていけのかの判断もあし、その意見は聞かないのか。● そのような要望は、あれば聞く。
○ 職務給を廃止するとなると、職業安定所の窓口と税務署の窓口の職員の賃金の在り方はどう考えるのか。
● 職種が違うのか、制度が違うのか、運用が違うのか検討したい。
○ これまでは級別定数があって、同じ職務でもある程度の幅があったとしても、一定の基準となって省庁間の違いが大きく出なかった。そこのところがどう変わるのか。
● 今後は各省毎にバラバラになるのか。そこは、これからの検討課題になる。年齢だとかも入れるべきということか。
○ 職務遂行能力をどのようにして賃金に反映するのか。その物差しはどう考えているのか。
● 6月までの検討課題だ。今の賃金でも、色々な要素が入っている。
○ 国公法64条で生計費、民賃を物差しとしている。それは、ある程度社会的な物差しだ。職務遂行能力といったら、何を物差しにするのか。
● 議論をだんだんとステージ毎にしながら、これから6月に向けて検討することになる。
○ 次の考えもないままに、現行制度は廃止するということだけ決めているのか。評価だけで賃金を決定できるはずもなく、泥縄の検討だ。公務員制度改革で現行の労働条件が確保できるのか不安が広がっている。次のプランもないままに、制度設計の話をスタートするとことで、50万国公労働者に責任が果たせるのか。
● 不安に思われている人が一杯いるというが、そこは、私どもとしても、安定性の悪いものにならないように配慮していきたい。しかし、そこは上げて、検討はしていきたい。

□ 労働基本権
○ 職務給を廃止するというなら、賃金決定のシステムをどうするかがすぐ問題になり、それ自体が労働基本権の問題が絡んでくる。しかし、そこは十分検討するとしかなっていない。
● よく、人勧制度が変わるのだから制度として大きく変わるのではと言われるが、任期付き任用など、人勧制度から距離のあるところは、相当大きく見直そうと思っている。
 給与制度が変わることによって、労働基本権はどうあるべきか。給与制度の在り方を確定した後で、労働基本権をどうすべきか考える。そこは、順番の問題だ。
○ 考えているような給与制度は、幅のある裁量、恣意性が入る可能性がある。我々は、どうしても、最低の労働条件をどう確保するのかに頭が行く。
● 労働条件が労働基本権とどう係わるかは、労働条件が決まってからではないか。
○ それは、代償機能が働くかだ。少なくとも、勤務条件法定主義があって、標準職務表に従って自分が次ぎにどこに行って、どのくらいの給与をもらうか予想がついた。人事院勧告がなくなり、標準職務表と係わる級別定数査定がなくなれば、将来の生活設計にも係わる。
● それは、1年に1回1号俸上がることを指しているのか。
○ 1年1号俸ではなく。どのような仕事だとどれくらいの給与になるかという仕組みを変えることは、賃金決定システムを1から見直さなければならなくなると言っているのだ。
● 何れにしろ、給与制度の姿、中身を固めてから、労働基本権を検討する姿勢に変わりはない。
○ その考えは大いに不満である。各省大臣に人事管理権限を与えることや人事院の役割を見直すことなどは、労働基本権回復と表裏一体の関係だ。
 また、人勧に係わらない人事院の役割の見直しについても述べていたが、現場の窓口では、例えばKSD事件などがあると、お前も同じだと職員に不満がぶつけられるように、働きがいに係わる問題だ。現場の公務員は、政官財のゆ着をいかになくすかのかを要望してる。
● そこは、申入書でも読ましてもらった。

 最後に、小田川書記長から、「時間の関係で、入り口の議論になったが、回答は全く理解できない。大枠ありきの検討は止めるべきだ」と強く申し入れ、交渉を締めくくりました。

以上


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