『国公労調査時報』1998年7月号【資料】より

第142回国会衆議院

行政改革に関する特別委員会議録

−参考人意見陳述・質疑− 国公労連中央執行委員長 藤田忠弘

 本日の会議に付した案件
中央省庁等改革基本法案(内閣提出第41号)

○高島委員長
 次に、藤田参考人にお願いいたします。
○藤田参考人
 国公労連の藤田でございます。
 私どもの組織は、1府12省庁のほか、裁判所、人事院などの組織を含めまして、21の単位組合、約17万人で組織をしております。
 私どもは、これまで一貫いたしまして、組合員の労働条件はもちろんでございますが、これと同じぐらいの比重で、自分たちの従事している行政をいかにして国民の皆さん方の御期待に沿うものとして充実をさせるか、こういう立場からの運動に微力を尽くしてまいったところでございます。したがいまして、今回、私どもにこのような発言の場が与えられましたことに、率直に感謝を申し上げる次第でございます。特に、行政改革会議が、この間、私どもに何ら意見を求めてこられなかった、こういう経過にかんがみましても、大変貴重な機会をちょうだいいたしたというふうに思っております。
 そこで、まず私は、行政改革というものに対する私どもの基本的な立場を申し上げたいと存じます。
 端的に申しますと、私どもは、国民の皆さんが本当に求めていらっしゃる行政改革というものは当然行うべきだ、こう考えております。
 しからば、国民の皆さんが求める行政改革とは何か、こういうことになるわけでございますが、私は、主権者たる国民が、自分の納めた税金が自分たちのために有効に使われている、このように実感できるような行政と施策の実現、こういう点にあろうかと考えます。言いかえますと、憲法が定めております国民の基本的な人権、これを最大限に実現することだと思います。したがいまして、そのような観点で、行政の役割、機能というものを社会状況の変化、発展に応じて見直すことは当然である、こういうふうに考えているところでございます。
 そのような意味で、今最も大切なことは、政財官が癒着をして利権をあさるというこの行財政のあり方を抜本的に是正することでありますし、軍事費や公共事業に偏った行財政構造の抜本改革と財政赤字の解消でありますし、さらには情報公開法の制定によるガラス張りの行政の実現などであろうかと考えます。このような立場からいたしますと、今回の中央省庁等改革基本法案、これにつきましては反対の立場であることを明確に申し上げておきたいと思います。
 次に、この法案に対しまして私どもが抱いております疑問あるいは問題意識につきまして、五点に絞りまして申し上げておきたいと思います。
 その一つは、今回の行政改革の基本理念にかかわってでございます。
 法案や行革会議の最終報告の中で、総合性、戦略性、機動性、あるいは透明性、さらには効率性、簡素性、こういう観点が強調されているわけでございますが、その反面で、民主性とか公平性という、本来重視さるべき国民サイドに立った視点がかすんでいるのではないか、こう思われてなりません。この点では、国民の基本的人権の実現という立場がないがしろにされるのではないか、この危惧を禁じ得ないのでございます。
 例えば、労働福祉省の場合、その編成方針を見てみますと、厚生省や労働省がそれぞれの設置法で中心的な任務に位置づけてまいりました「社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進」であるとか「労働者の福祉と職業の確保」、こういうものがどう位置づけられていくのか、明らかではございません。これは国土交通省の場合も同様でございまして、運輸行政の任務が社会資本整備の方向に矮小化されていくのではないか、こういう危惧を禁じえないのでございます。
 第二は、行政組織のあり方について、はたして行政分野の多様性を踏まえて個別の論議が尽くされたのであろうか、こういう疑問を抱くのでございます。
 例えば、行革会議の最終報告では、国立試験研究機関につきまして、政策研究機関以外は独立行政法人の検討対象にする、こううたっております。しかし、一体どのような具体的検討を経て、これらを国がみずから主体となって直接に実施する必要はないものとして結論づけられたのか、一向に明らかではございません。
 また、10年間で1割の定員削減目標を掲げるとか、局の数を1省で10以下とか、全体で90程度にするとか、課の数を約900にするとか、いわゆる数値目標が法案に盛り込まれておりますが、これらにつきましても、数値目標先にありきでありまして、局や課について、その行政目的、役割、機能などの面から具体的に検討されたという形跡をうかがうことはできないのでございます。このような本末転倒はとうてい許されるものではないと思います。
 三つめは、行政改革を行政のスリム化や公務員削減に一面化をした議論に関してでございます。
 私どもは、現場の実態をリアルに認識していただきたい、このように切望するものでございます。先ほども出ましたが、わが国の公務員の数が、先進諸国と比べましても、人口当たりで2分の1から3分の1という状況にあることは今ではよく知られているところでございますが、そのことがどのような現場実態となってあらわれているか、その一端だけを申し上げておきたいと思います。
 本省庁の場合です。私どもの調査では、夜8時以前の退庁者は45%にすぎません。夜11時以降の退庁者は18%にも上っております。
 第一線を見ますと、気象庁では、測候所の廃止や夜間の無人化の進行で、あの阪神大震災の際、もしも淡路島の測候所に人が配置をされていたならばと、こういう無念の涙をのんでいるところでございます。また、労働基準監督署では、労働基準監督官が全事業場を一巡するのに20年を要する、こういう状況にございます。法務局や特許庁では、それこそけた外れの膨大な事務処理に全く追いつかない、これが常態化をしているわけでございます。
 これらは、多かれ少なかれ、ほぼ全体に共通する状況であることをぜひ理解いただきたいと思います。その上、さらに定員削減、それも第一線の公務員を削減する、こういうことになれば、もはや行政責任の遂行はおぼつかない状況に立ち至ると思います。
 四つめは、独立行政法人に関してでございます。
 その一つは、イギリスを参考にするというこの制度が将来の民営化につながっていることは明らかでありまして、ここでも、国民に負うべき国の行政責任の放棄という問題を強く指摘しておきたいと思います。
 もう一つは、対象と目される約7万3000人、この人たちの雇用と生活、労働条件が重大な不安にさらされることから、私どもは、とうてい容認できるものではない、こう考えているところでございます。
 最後の五番目は、公務員制度に関してでございます。
 法案の内容は全体として抽象的でございますから、具体的に目指すものが何であるかをつかみづらいのでありますが、その関連で申しますと、官僚の天下りが世論の批判の的になっているとき、天下りの廃止を含めた政財官の癒着構造をなくすことが重要課題に据わるべきであります。しかし、その点に踏み込んでいますのは、わずかに退職管理の適正化、この文言にとどまっておりまして、大変不十分だと思っております。
 私どもは、こういう機会にこそ特権的な人事慣行を変えるべきでありますし、行政内部で不正、腐敗をチェックする機能として労働組合の役割にもっと目を向けること、同時に、職員個々の諸権利の問題につきましても検討さるべきだ、と考えているところでございます。
 以上で意見の表明を終わりますが、最後に、私は、この法案の帰趨がそれこそ21世紀の「この国のかたち」を規定する、こういう関係にありますだけに、性急に結論づけられてはならないと思います。どうか、私どもの疑問の解明も含めまして、慎重な審議を尽くされることをお願い申し上げて、私の発言を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
○平野委員(民主党)
 私は、業績評価という制度を、例えば連合の立場、あるいはきょうお越しの藤田参考人にもお聞かせいただきたいのでありますが、今後の行政改革の中に業績評価を取り入れていこう、このときにはやはりどういう基準でやっていくのかというのは非常に難しいわけでありますが、この業績評価を導入する、こういうことに対してはどういう御見解をお持ちでございましょうか、御両人にお聞かせいただきたいと思います。
○藤田参考人
 私どもも、業績の評価ということ自体は必要なことだと思います。ただ問題は、その業績評価の制度を導入するという場合には相当慎重な検討が必要になろうかと思うのです。
 と申しますのは、それぞれの行政分野ごとに行政目的あるいは評価の基準というものが異なってまいります。件数で処理をする分野、あるいは業務のそれこそ質的な内容で評価をする分野、いろいろございますから、それぞれに応じた評価の基準、物差しをどうつくるのかということは大変難しい問題だと思っておりまして、これは私どもの意見も十分お聞きをいただきながら検討を進めるべき問題だ、こういうふうに思っております。
○平野委員
 今回の基本法では公務員制度の改革も盛り込まれているわけでございますが、縦型行政の弊害、行政機構の柔軟性の欠如、国益よりも省益、こういうことで、さまざまな問題点の指摘になっておるわけでございます。今回、一括管理の仕組みを導入しようとしておるわけでございますが、この点について、これは問題あるよ、あるいは従来のままでいいよ、あるいは従来では問題あるけれども一括管理ではぐあいが悪い等々、もし御意見があれば、御両人に一言ずつお聞かせいただきたいと思います。
○藤田参考人
 公務員制度の問題は、公平、中立な人事をどう確保するかということと、それから公務員の安定的な労働条件の確保、この二つの側面からの検討が大事だと思っています。
 おっしゃっている一括管理につきましては、その対象がどの程度になるかということにもよるのでございますが、懸念いたしますのは、そのことが恣意的な人事を招いたり、あるいは公務員に対する政治的なコントロール、こういう側面を強めるということになるようですと、私どもとしては、にわかに肯定するわけにはいかない、そういうふうに思っているところでございます。
○福島委員(平和・改革)
 先ほど両参考人がお触れにならなかった点について、確認的に御意見をお聞きしたいわけでございますが、まず一点目は、今回のこの基本法の一つの柱は内閣機能の強化ということでございます。この点につきまして、両参考人はどのようにお考えなのか。まず、その点についてお聞かせください。
○藤田参考人
 端的に申し上げますと、現在の機能でも大変強力だというふうに思っております。
 問題は、やはり内閣総理大臣御自身の指導性と、それから、重大な災害等に対応できうる行政の体制が十分に確立をされているかどうかということの方がむしろ重要ではないかというふうに思っているところです。
○福島委員
 今回の1府12省庁の再編ということで、大くくりにしよう、縦割り行政の弊害をなくすためには大くくりにするしかないという判断からこのような結論になったのかと思うわけでございます。この大くくりにすること自体、これは賛成なのか反対なのか、どのようにお考えなのかお聞かせをいただきたいと思います。
○藤田参考人
 私どもも、現行がベストであるかどうかということについては、断定的に肯定的に申し上げるつもりはないのですが、先ほども申し上げたように、それぞれの省庁の果たすべき役割の子細な吟味を抜きに大くくり、それこそ数合わせと言われるようなかたちでまとめられているこの法案の内容につきましては、賛成できない、こういう立場でございます。
○福島委員
 事前規制型から事後チェック型ということで、部署部署によって仕事のふえるところと減るところも恐らくあるのだろうというふうには思うのですけれども、全般として行政の事務量を減らすためにはどうしたらいいのか、その点について藤田参考人の御意見をお聞きしたいと思います。
○藤田参考人
 少し議論の角度が私どもと違う部分がございますが、私どもは、今の公務、これは基本的に国民の皆さん方にとって必要だ、そういう立場に立っております。したがって、例えば効率だけで論じ切れない仕事の分野、これはもう先生も御承知のとおり、例えば一人の看護婦が多数の患者をみるということは、効率ではあってもそれは本当の意味で公務の責任を全うしているかということがありますし、労働基準監督官が20年かからないと全事業場を回れない、これは公務を全うしているのかということがございますし、45人の学級よりも35人の学級の方がいいに決まっているわけですから、そういう意味で、私どもは、公務のあり方というものをきちっと検討して、その上でどれだけの行政体制が必要なのか、こういうふうにいくべきだというふうに思っているところです。
○石垣委員(自由党)
 今回のこの法案の大きな目玉は、独立行政法人ですね。これがどういうかたちで設置されていくのか、これがまた大きな焦点になると思うのですけれども、国公労連の方では、これはもう絶対認められない、こういう御意見なんですね。これについてもう少し御意見を聞きたいと思うのです。
○藤田参考人
 先ほどの繰り返しも少し含みますが、独立行政法人というものの特徴は、先生も御承知のとおり、一つは、行政組織の枠外に置く、二つめは、所管大臣の定める中期目標の達成にのみ責任を負う、三つめが、労働条件を決めるにあたっては実績が反映をする、そしてもう一つが、業績評価が行われる、こういう点にあろうかと思うのです。これは、言いかえますと、効率重視、また営利中心、こういう側面を前面に立てることになるのではないかと思っております。
 そういうことからいたしますと、公務が担っている業務というのは大変公共性の高い分野でありますから、例えば国立病院、御承知のとおり高度の医療の分野を担当いたしますし、それから難病の分野、あるいは離島、僻地という地域医療、こういう点で国が持つというところに大変重要な意味があるわけであります。それを効率重視というふうな立場に立ちますと、一体不採算の部門はどうなっていくのかという率直な疑問を、不安を私どもは持たざるをえないわけでございます。
 国立の試験研究機関の場合も同様でございます。特に基礎研究所の分野というのは、長期にわたる研究の積み上げというものが大事でございますから、そういうものが効率重視というふうに切りかわった場合に、そういう部門はどう担保されるのかという点で大変不安を持たざるをえない、こういうふうに思っているところでございます。
○石垣委員
 諸外国のいわゆる行政改革の成功した例を見ますと、例えばカナダでございますけれども、現業の行政内容を徹底的に分析をしておりますね。そこから何を残すべきか、何を廃止すべきか、何を民間に移行すべきか、いわゆる廃止基準、それから存続基準、民間移行基準、これらを政府がまず明確にして、官僚がいかに反対しても覆すことのできない、そういう一つの実施基準をつくったということが私は成功した例だったと思うのですけれど、残念ながらわが国の作業は官療依存型であるということが現時点では否めないということで、これは今後国会に与えられた大きな改革の視点だと私は思うのです。これについて御意見があれば、ひとつ参考人の方からお願いしたいと思うのです。
○藤田参考人
 多少繰り返しも含みますが、各省庁の役割、任務というのは、多かれ少なかれ、憲法の定めている基本的人権を実現するということを踏まえたそれぞれの設置法というものがつくられ、それを踏まえて行政を進めているというのが今日までの状況だと思います。
 しかし、社会状況の発展に伴ってそういうものを改革、改編をしていくということは当然のことであろうと思いますし、その際には、その行政内部で働いている一般の職員、それを代表している労働組合、この御意見もぜひとも聞いていただくということが、まともな改革方向を追求していく上で不可欠ではないかというぐあいに私ども思っておりますので、そのことだけ申し上げておきたいと思います。
○石垣委員
 大蔵省を頂点とする公務員の腐敗、汚職、まさにこれは国民の信頼を大きく失いつつある、こういうことなんですけれども、行政の基本はやはり国民の信頼だという先ほどからの御意見でございます。
 折しも、公務員倫理法の制定がいよいよ国会に上がってくるという時点でございますけれども、この公務員倫理法の制定について、両参考人、御意見があれば、この際ひとつお述べいただきたいと思うのです。
○藤田参考人
 腐敗の防止は公務員倫理法だけではないと思いますが、公務員倫理法自体は必要だというふうに考えております。個人の倫理観の問題ということももちろんございますが、より基本は構造的な問題だろうというふうに思っております。  その構造問題の一つは、やはり天下り問題だと思います。
 御承知のとおり、天下りというのは、省庁の側の権益擁護というものと、率直に申し上げて見返りを期待するという業界、これとの利害の一致というところから生じている問題だと思いますので、これはやはりきっぱりとなくしていくということが一つ大事だと思いますし、それからもう一つは、特権官僚を優遇するという事実上の制度が公務の中で行われておりまして、このことをやはり根本から改めていくということがございませんと、腐敗の防止にはつながっていかないのではないかというふうに思います。
 あわせて、特にこの機会にお聞きいただきたいのですが、大蔵省の場合、そこにある労働組合というものを敵視する、こういう政策が昭和38年当時からずっと続いておりまして、これは、内部における一切の批判勢力の存在を許さない、こういうことでありまして、そういうものがやはり腐敗を生み出していく体質に結びついていっているというふうに思いますので、その面も重視をしなければいけないと思っております。
○平賀委員(日本共産党)
 初めに、今回の中央省庁等改革法案の中には、47条の4号に、「定員について、10年間で少なくとも10分の1の削減を行う」、こういう条項があります。私は、一律に削減をするというのはたくさんの問題があると思います。実際には、サービスの需要が多い部署やそうでない部署があると思います。
 先ほどは、阪神・淡路の震災にあたって測候所の職員の人数の問題もお話がありましたし、労働基準監督署の人数の問題もお話がありました。これ以外いろいろな分野があると思いますが、実際、この辺の実態というのはどういう状況になっているのか、藤田参考人に伺いたいと思います。
○藤田参考人
 特に申し上げたいのは、一律の削減方式というものが職場にどういう弊害をもたらすか、このことをむしろ御理解をいただきたいというふうに思っているところでございます。
 政府は、この一律削減の方式というのは、必要なところに増員を行うための財源をそのことによってつくるのだ、こういうふうに説明をしているわけであります。しかし、現実には、新規需要が生じないところは、したがって増員が行われません。一方で、一律の削減だけが押しつけられる。こういうことになりますから、実際には純減、こういう職場実態が生じるわけでございます。それから、新規需要が生じている場合でも、一律削減によって生じた人員が財源でございますから、限りがあります。したがって、必要な増員措置ということには手が回らない場合が多々あるわけであります。そういった意味で、全体として必要な部署に必要な増員が配置をされない、こういうことの繰り返しが行われている、こういうことでございます。
○平賀委員
 今回の中央省庁の再編は、企画立案部分と実施部分を分離するという重要な問題が含まれております。そもそもこうした分離がいいのか悪いのか、国民サービスが低下するのかどうなのか、福祉、労働などの分野で国民にとってどういう弊害が生まれるのか、その辺について、藤田参考人に伺います。
○藤田参考人
 結論から申し上げまして、企画立案部門と実施部門を分離するということについては、私どもは基本的に反対でございます。
 理由の一つは、その場合の最大の価値基準が、効率化あるいは重点化というところに置かれている点でございます。そういう考えのもとにおきまして、実施部門につきましては、外局化を図るとか、あるいは独立行政法人化をするとか、そして公社化を図る、こういうことになっているわけでございますが、それぞれの分野で、先ほども申し上げましたが、公務が果たさなければならない責任というものは厳として存在をしているわけでありますから、それに対する個々の十分な検討抜きでその方向が目指されるということは、大変無責任のそしりを免れないのではないか、こういうふうに思うのが一つ。
 もう一つの理由は、行政責任といいますのは、企画立案部門と実施部門を一体的に運営する、このことによって初めて貫徹をされる、こういうふうに思っているところでございます。御承知のとおり、憲法の66条は、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ」こういうふうに定めております。この立場から見ましても、また、一つの施策が首尾よくいったか、あるいは不首尾に終わったのか、この検証は、やはり企画立案部門と実施部門が一体になって行いませんとリアルな検証が行われない、こういう関係だと思っておりますので、冒頭申し上げたように、この分離ということについては私どもは賛成するわけにはいかない、こういう立場でございます。
○平賀委員
 今回の中央省庁の再編は、企画立案部分と実施部分を分離するというのは今お話にあったとおりでありますが、実施部分については、民営化を前提とした独立行政法人制度をつくるということになっています。
 独立行政法人についての組合の考え、例えば身分の問題や法人にすることによる問題点などがありましたら、藤田参考人に伺いたいと思います。
○藤田参考人
 私どもは独立行政法人を前提にした議論というものを現時点で行う立場ではございませんので、この段階で、独立行政法人をつくることの是非について、ぜひとも慎重な議論をやっていただきたいというところが、現時点の私どもの立場でございます。
○平賀委員
 今、独立行政法人についての現時点での組合としての考えは、慎重に審議をしていただきたいというお話ではあったわけなんですが、実際に、もしこれが現実のものになった場合、この場合について組合としてはどのようにお考えになるのか、これはどうなんでしょうか。
○藤田参考人
 先ほど申し上げましたとおり、現に公務が担っている分野が大変公共性の高い分野でございますから、例えば国立病院の場合、これははたして国が直轄的に責任を負うべきなのか、あるいは独立行政法人になじむものなのか、このあたりについての吟味というものを十分に行っていただかないといけないのではないか、そういうふうに思っておりますので、そういう吟味、検討には私どもも大いに参画して議論をさせていただきたい、こういうふうに思っているところでございます。
○平賀委員
 今回の中央省庁の再編は、一つは内閣機能の強化、二つめには企画立案部分と実施部分を分離する、三点めには省庁の大くくりというのが基本的な枠組みや方法論になっていると思います。
 本来行政改革というのは一体どうあるべきなのか、この点について、藤田参考人の意見を伺いたいと思います。
○藤田参考人
 この点は、冒頭の意見のところでも申し上げましたように、今国民の皆さんの間で、行政改革が必要だ、こういう声が強まってきているわけですが、なぜそういう声が強まってきたのかということを思い起こしてみますと、大蔵や厚生省などをはじめとした特権的な官僚の汚職、腐敗問題が続出した、こういうことをなくしてほしいということが一つあったと思います。
 それから、財政の執行の仕方が、めどの立たないダムがいくつもいくつも計画をされていたり、あるいは使われもしない港などがぼこぼこつくられてみたり、自分たちが納めた税金が、はたして有効に、言いかえれば国民生活の充実のために使われているのかどうか、これを改めてほしいということであるとか、それから、薬害エイズの問題あるいはO157の問題が生じたときに、一体行政の中はどういうふうに行われているのかということが全くわからない、これをもっとガラス張りにしてほしい、こういった気持ちが渦巻いていたと思うのです。したがって、そういうことを実現してほしいというのが、国民の皆さんの行政改革というものに対する出発点だったと思うのです。
 その意味で、冒頭申し上げましたとおり、今出されている法案、これも一つの考え方ではあろうかと思いますが、私が申し上げたような、そもそもの行政改革に対する国民の皆さんの要請との関係でいきますと、これはこたえるものになっていないのではないか、そんな気持ちを大変強く持っているということでございます。
○深田委員(社民党)
 先ほど、参考人の藤田先生のお言葉の中でちょっと気になることがございましたから、先にそれを聞いておきたいのです。
 大蔵省では労働組合を敵視しているのですか。実態はどういうことなんでしょうか。正確に聞かせてください。
○藤田参考人
 御承知かと思いますが、大蔵省の中にはいくつもの労働組合がございます。私どもと直接関係のある労働組合は、全国税、これは税務署員でつくっている労働組合、それから全税関、これは税関の職員で構成している組合でございますが、昭和38年当時から、この労働組合に加入をしている者に対して、いわゆる昇任昇格における差別を中心に、いわゆる差別政策といいますか、こういうものが非常に強硬に行われてまいりまして、したがって、結果として、そういう労働組合に属するということがなかなかできにくくなるということで、今では大変少数の労働組合になってしまっている、こういう現状があるわけであります。
 しかし、この労働組合はいずれも、今日生じております一連の汚職、腐敗問題などに対しまして、率直にこれを批判して、どうすればこれを正すことができるかというような点での提言なども社会に対して行っている、こういう状況でございます。
○深田委員
 事前協議というのはなかなか難しい問題でしょうけれども、現実に、いわゆる皆さんの方の労働組合、職員団体との間は、一定程度労使間で話をされたり、そこで決まった約束事が実施されているという事実はあると思いますが、その点の評価はいかがでしょうか。
○藤田参考人
 おっしゃるとおり、そういう事実はございます。
 ただ、これは先ほどの連合に対する御質問にも関連するのですが、例えばILO151号条約というのがございます。これは、労働条件決定システムをつくっていく、こういう中身でございますが、日本政府はこれを批准しておりません。ですから、こういうものが仮に批准されて、それに沿った国内法の整備が行われていけば、労働条件の決定にかかわる公務における労使間の関係というのは今よりも前進をしていく、こういうことだと思っております。

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