06年人事院勧告にあたって(声明)

−−公務員賃金決定基準の引下げは受け入れられない−−

 

 本日、人事院は、諸手当を含む月例給、一時金ともに水準改定を行わないとする給与勧告等を行った。このような勧告は、人事院自身が表明するように、「比較対象企業規模を従来の100人以上から50人以上」に官民賃金比較方法を改めた結果である。
 人事院は、従来の比較方法であれば、1・12%(4252円)の水準改善、0・05月の一時金改善となることを明らかにしている。そのことからしても、「公務員賃金引き下げのための勧告」が行われたことは明らかである。
 国公労連は、このような意図的な賃下げ勧告を断じて受け入れることはできず、従来の「規模100人以上企業」との比較結果にもとづく賃金改定を求め、政府追及や国会段階のとりくみを進める決意である。

 官民賃金比較方法の「見直し」については、本年7月7日に政府が閣議決定した「骨太の方針2006」でも、「50人企業規模以上への引き下げ」を人事院に要請しているように、総人件費削減を強行している政府の圧力が直接的な契機になっている。
 政府が、そのような圧力を加えること自体、不当に制約している公務員労働者の労働基本権を侵害するものである。国公労連は、政府への抗議をくり返し行うとともに、人事院に対しても、政府の圧力に屈することのないよう追及を強めてきた。
 また、政府が最低賃金の目安について、わずか0・5%とはいえ引き上げたことや、ベア改善方向にある民間動向などをふまえれば、賃下げとなる官民比較方法の「見直し」を行うべきでないとする主張を勧告直前まで行ってきた。
 本日の給与勧告は、そのような国公労連の主張に応えず、政府の圧力に屈し、労働基本権制約の「代償措置」としての人事院勧告の役割を投げ捨てるに等しい結果であり、その点でも容認できるものではない。

 国公労連は、人事院が官民比較方法の「見直し」に着手した昨年秋以降、公共サービス商品化、総人件費削減に反対するたたかいとも一体で、「賃下げとなる官民比較方法『見直し』反対」のとりくみを強めてきた。
 春闘期の政府・人事院追及の上に、勧告に向けては、2回の署名行動(115、935筆集約)や、職場決議の集中、数次にわたる中央・地方での人事院包囲行動、団体要請行動などをとりくんできた。そのような中で、地域切り捨て、格差拡大の小泉「構造改革」への批判の高まりや、公務員志望者の減少などという事態もあって、公務員賃金切り下げの社会的な悪影響への国民的理解は一定広がっていると確信する。
 勧告直前には、ナショナルセンター・全労連が、人事院要請を直接行い、民間労働組合も「見直し」反対を申し入れるなど、運動面での広がりも生まれた。これらのことが一定程度、人事院を押し込んできたが、「見直し」を断念させるまでには至らなかった。
 このような運動の到達点を勧告後にも引き継ぎ、公務員労働者の労働基本権を不当に蹂躙し続ける政府の暴挙を糾し、要求前進の展望を切り開くため、引き続く秋闘段階のとりくみを強める。

 本年勧告では、給与構造「見直し」の2年目として、広域異動手当の新設や特別調整額の定額化、地域手当の「暫定支給割合」の設定などに言及するとともに、扶養手当(第3子以降の1、000円引き上げ)を07年4月から実施するとしている。
 勧告と同時に、就学前の子の育児のための短時間勤務制及び自己啓発等の休業制度の新設にかかわる意見申し出も行われている。
 また、この数年、恒例化している公務員人事管理についての報告も行い、分限指針の整備や経験者採用システムの導入、週所定内労働時間短縮に向けた検討姿勢などを示している。
 これらの内、いくつかの事項については、この間の国公労連の要求をふまえたものもあることは否定できない。しかし、公務員の労働条件全般についての比較基準となる企業規模引き下げという大改悪の前には、その評価も色あせたものにならざるを得ない。

 国公労連は、本年勧告は、労働基本権制約の「代償措置」への疑念を増幅させるものだと考える。したがって、既に開始されている公務員の労働基本権論議を加速させ、早期・全面回復することをあらためて主張する。
 この間、職場・地域で奮闘した組合員や、支援をいただいた民間労働者・国民の皆さんに、心から感謝するとともに、引き続きたたかいへの結集と連帯を呼びかける。

2006年8月8日

国公労連
第9回中央闘争委員会

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